「消防士が感電する可能性が」
江戸の火消から脈々と受け継がれる新年の伝統行事、東京消防庁の出初式(でぞめしき)。そこにさっそうと登場した小池百合子都知事(70)。隊員たちは消火訓練を披露したが、小池都知事が推進する太陽光発電パネルが、実は消火活動に悪影響を及ぼすとも指摘されているのだ。
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関東大震災から100年となる今年は、首都直下型地震を想定した訓練を披露。隊員たちは燃える建物の屋上から逃げ遅れた人々を救出し、あっという間に火を消し止めた。
ただ、訓練用の建物には“あるもの”が備え付けられていなかった。昨年末、知事の肝いりで都内の新築住宅に設置を義務付ける条例が成立した、太陽光発電パネルである。
「屋根上のパネルは、光を浴びている限り自動的に発電を続けます。棒状に放水すると水を伝って消防士が感電する可能性がある」
そう話すのは、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏。
「一棟ならともかく、広域火災では消火活動に影響が出るでしょう。大洪水で屋根まで水に浸かった場合は、防災上さらに厄介です」
都庁職員からの恨み節
以前から杉山氏ら識者がそう指摘していたにもかかわらず、設置の義務化を強行したことになる。消防庁の文書にも同様のリスクについて注意を促したものもある。
都知事はどこまでこのリスクを真剣に受け止めているのか。この点、東京都側は過去、都内で太陽光パネルで消防士が感電したことはなく、消火時に対策を取れば安全だと主張しているが、膨大にパネルが増えたことを想定しているのか、また大災害時のことまで精緻にシミュレーションを行っているかは定かではない。
そして昨年都知事が上げたアドバルーンが太陽光発電パネルの義務化だとすれば、今年の第1弾は「現金給付」だろう。
新年早々、今度は「18歳までの子供に毎月5千円を給付する」と小池都知事はぶち上げた。
“前任者”の舛添要一氏から「目立つことをやらないといけないのでやっただけ」と皮肉られたが、子育て世代には歓迎する声も多い。
ただし、都庁職員からはこんな恨み節が聞こえてくる。
「知事は4日の新年のあいさつで突然、5千円給付案を発表しました。その直後、都庁の全部署に対しても“少子化対策の新規事業案を出せ”とのお達しが出たのです」
通達が御用始めの4日で、締め切りはなんと3連休を挟んだ10日。庁内は上を下への大騒ぎになったという。部下の寝耳に消防ホースで水をぶっかけた形だといえるだろう。
撮影・本田武士
「週刊新潮」2023年1月19日号 掲載