「後にも先にもあんな集団、見たことない」
東京・狛江市の邸宅で老女が殺害された一件を含む連続強盗事件で主犯格と見られ、フィリピンの入管施設に収容されている渡邉優樹容疑者(38)。マニラで取材をすると、4年前に渡邉容疑者らが毎晩のように豪遊していたとの証言が。クラブのママが、当時の渡邉容疑者の様子や、お気に入りのホステスについて明かした。
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4年前、男らがフィリピンの娑婆で詐欺集団を率いて荒稼ぎしていた頃のこと、マニラの日本人街で渡邉容疑者はまさに有名人だった。毎晩のように仲間を引き連れ、高級レストランやカラオケ店をハシゴする。「一体、あの羽振りのいい日本人は何者なんだ?」と、誰もが訝(いぶか)しんでいたという。
「シッテル、シッテル、ワタナベサン! この顔忘れないよ」
フィリピン当局に捕まった際に撮られた渡邉容疑者のマグショット(雁首(がんくび)写真)を見せると、カラオケ店のママは興奮して叫んだ。首都マニラのビジネス街・マカティの一角にある「リトルトーキョー」で、渡邉容疑者の顔を記憶する人は多い。さる日本人飲食店経営者も言う。
「違和感のある集団でした。20〜30代の若者7、8人が毎日、高級しゃぶしゃぶ店やうなぎ料理屋にたむろしているんですから。カラオケでも5千ペソ(約1万2千円)くらいするボトルをガンガン入れると噂になっていた。一晩で15万円くらいは使っていたんじゃないですかね」
フィリピンの物価は日本の約3分の1。銀座でいえば一晩に40万〜50万円ほど使うレベルの豪遊ぶりだ。
「それを1年以上も毎日続けたんです。カジノ遊びもすごい。後にも先にもあんな集団、見たことない」(同)
「20歳くらいのホステスを追いかけてやってきた」
ちなみに、カラオケとは日本で言うフィリピンパブのこと。この街にはお触りOKの庶民的な店から美女ばかりそろえた高級店まで20店ほどが軒を連ねる。
前出のママによれば、渡邉容疑者が店に訪れ出したのは2019年ごろのこと。
「別の店から移籍してきたAというホステスを追いかけてやってきた。20歳くらいの、スレンダーで幼い顔立ちの娘です。来る時はたいてい一人で、彼女を指名してVIPルームへ。Aが1カ月くらいで辞めた後、ぱったり来なくなったよ」
豪遊の資金を彼らに供給してきた特殊詐欺の拠点がフィリピン当局に摘発され、36人が日本へ強制送還される事件が起きたのは、ちょうどその時分のことだった。
フィリピン人と結婚
この時、渡邉容疑者や今村磨人(きよと)容疑者(38)ら4人の幹部は逃亡した。渡邉容疑者は“シマダケンジ”の偽名を使い、フィリピンに潜伏。
だが、21年4月19日に国家捜査局に逮捕され、入管へと引き渡される。
通常ならば2週間から1カ月程度で日本へ強制送還されるはずだった。が、逮捕から1カ月後の5月18日、それに待ったをかける動きが。渡邉容疑者のフィリピン人妻が突然現れて「夫から何度も暴力を振るわれた」と渡邉容疑者を告訴したのだ。なお、二人は後に「別れた」ともいう。
「これにより、送還の件はストップ。渡邉容疑者は収容所の中でカネを使って自由を謳歌しながら、詐欺や強盗を差配する生活を続けてきたのです」(社会部記者)
フィリピンの司法当局はこの点、妻による告訴は強制送還を先延ばしするために渡邉容疑者が仕組んで彼女にやらせたでっち上げだとみている。
「2月半ばにも公判期日が予定されていますが、今回の騒動を受けて司法省は裁判を停止させるつもり。そのことが決まり次第、渡邉容疑者も強制送還される見通しです」(司法省関係者)
入手した裁判資料によると、渡邉容疑者が妻と出会ったのは19年9月ごろで〈すぐに結ばれた〉とある。36人が摘発される2か月前で、Aに入れあげていた時期と重なる。妻の住居はマニラでも最高級の新興住宅街にあるコンドミニアムだった。リトルトーキョーの住人はこう語る。
「妻がたとえAでないにしたって、カラオケで出会った子には違いないね」
フィリピンという国の特性を最大限に利用して、豪勢な逃亡生活を楽しんできた渡邉容疑者の旅も終わろうとしている。
2月2日発売の「週刊新潮」では、「もうひとりのルフィ」こと今村容疑者の非道そのものの半生などと併せ、連続強盗事件の深層を5ページにわたって特集する。
「週刊新潮」2022年2月9日号 掲載