「菅離れ」拡大の一途と神奈川2区の得票率の衝撃

 自民党総裁選は「9月17日告示、29日投開票」が決定した。立候補者はまだ確定的ではないが、事実上、菅義偉総裁(首相)と岸田文雄前政調会長がぶつかる恰好だ。主要派閥のボスは軒並み菅総裁を支持する意向だが、意外にも「岸田勝利」を予言する永田町関係者は少なくない。全国的な知名度も高いとは言えない岸田氏が勝つのはどういうシナリオなのか占ってもらった。

 産経新聞社とFNNによる直近の調査によると、菅首相に今後どれぐらいトップを続けてほしいかという質問については、「9月末までに行われる自民党総裁選まで」が最も多く48.2%で、「すぐに交代してほしい」の19.9%と合わせると70%近い人たちが「9月末までの交代」を願っている様子がうかがえる。そして、自民党を支持する人を見ても、半数以上(52.5%)の人が菅首相の交代を望んでいた。

「次の首相にふさわしい政治家」については、河野太郎行政改革担当相が17.9%、自民党の石破茂元幹事長が15.5%で、以下、小泉進次郎環境相(11.4%)、安倍晋三前首相(8.6%)と続いている。一方、岸田氏は、3.5%、菅首相は2.5%だった。

 読売新聞社の直近の調査でも、「9月の総裁任期までの交代」を求める人は合計66%に達している。「次の首相にふさわしい自民党の政治家」は、石破氏が19%で、河野氏が18%、小泉氏が17%の順で、菅首相は3%にとどまっている。

「菅離れ」がかなり拡大している印象を受けるが、政治部デスクAに聞くと、

「先の横浜市長選の結果は本当に当事者にとっては大ショックでした。現職首相のおひざ元、候補者は地元出身の2世議員で首相とは一心同体、野党は分裂している……と負ける要素はどこにあるのという選挙で完敗したのですから。菅さんの選挙区である神奈川2区を見ても、自民党推薦候補の得票は勝利した野党候補に負けており、これもまた衝撃的でしたね」

自民党の支持率はさほど下がっていない

 デスクAが続ける。

「自民党は独自の情勢調査を繰り返していますが、なかなか結果は芳しくないようです。このまま菅さんで選挙を戦った場合、自民党単独で過半数(233)割れという厳しい数字が出ており、その場合、引責辞任は必至でしょう」

 ここまで窮地に追い込まれたら誰がやっても同じではないかというツッコミも当然あるだろう。しかし、デスクBはこんな見方をする。

「内閣支持率はおおむね30%前後と低調な状態が続いていますが、自民党の支持率はさほど下がっていないことがひとつの注目点になると思います。それが仮にぐっと下がっていれば、河野さんとか石破さんのような人、つまり国民の間で人気があるけれど自民党にとっては劇薬的という、諸刃の剣のような存在が必要になるかもしれません。しかし、現状はそうではなく、“菅さんが嫌い”“菅さんの顔はもう見たくない”という声だけが強い。となると、“顔”が岸田さんに変わるだけで景色が変わり、内閣支持率は急上昇し、選挙でもそこまで議席を減らさずに済むのではないかという見方が出てきています」

 一方で、先に触れたように、岸田氏は「次の首相にふさわしい政治家」アンケートをしても常に下位で、それはこれまでとなんら変わっていない。

「まさに全国的には“岸田さんって誰?”って感じで、こんな知名度も人気もなくてどうやって選挙を勝ち抜けるのか? という疑問はもっともだと思いますが、差し当たっては菅さんよりマシというだけでポイントが高い。今求められているのは嫌われないリーダーかもしれません。実際、岸田さんのことを嫌いだという人は永田町で聞いたことがないんですよ」

疑似的な政権交代の歴史

 とはいえ、党内第4派閥・二階派はいち早く菅支持を打ち出し、第3派閥・竹下派、第2派閥・麻生派、そして最大派閥の細田派も現在は菅支持と見られており、数のうえでは岸田氏に勝ち目はなさそうに見える。

「そうですね。岸田さんがボスの岸田派は第5派閥(46人)ですから、実質的に細田派のオーナーである安倍さんと麻生さんをどう口説けるかという点は大事です。そもそも、去年の総裁選前までこの2人は岸田さんを推していたわけですから脈がないわけではない。それよりも、国会議員票と同数与えられる全国の党員票をどれくらい取り込めるのかということの方が重要かもしれません。“菅さんより岸田さんの方がマシ”だという勢力の支持を取り付けられれば、その声に敏感な派閥のボスたちも菅支持から方向性を変えざるを得ないでしょうから」

 改めてデスクAに聞くと、

「かつての自民党は派閥がしのぎを削り、40日抗争に代表されるように党内での主導権争いを繰り返してきました。いわば疑似的な政権交代が結果として活力の源となり、政権を維持することができていた。現在、国民の間には、『菅さんはどうしてもイヤだけど野党に政権は担当してもらいたくない』という声は結構根強いように見えます。となると、総裁選でトップを変えて解散総選挙に臨み、国民の審判を仰ぐというのが自然な流れのような気がしてもいます」

 目下、派閥のボスの支持だけなら菅総裁の圧勝という状況に変わりはない。しかし、そもそも政策や主義主張ではなく、それぞれの損得、好みで「推し」を決めているところもあるため、事態は流動的である。「菅さんも野党も嫌」という声を強い追い風に出来れば、岸田氏の逆転もありえるということか。総裁選まで約1ヵ月、コトはそう単純には進まなさそうな気配がある。

デイリー新潮取材班

2021年8月27日 掲載