かつて球界を席巻した、1980年から81年にかけて生まれた「松坂世代」も今年でその多くが40歳、不惑を迎えることもあって大半の選手がすでに現役を引退した。かつては100人近くいた同世代の選手たちも昨シーズン限りで實松一成(日本ハム)、館山昌平(ヤクルト)、永川勝浩(広島)が引退し、残るはそのネーミングのもととなった松坂大輔(西武)をはじめ和田毅(ソフトバンク)、久保裕也、渡辺直人(楽天)、藤川球児(阪神)の5人だけ。その中でファンの注目が集まるのは、何といっても14年ぶりに古巣西武に復帰した松坂だろう。

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8年間のメジャー生活に別れを告げ、3年12億円という破格の契約でソフトバンクに入団したのは2015年。しかし、度重なる故障に見舞われ3年間在籍したものの、登板は2016年の最終戦となった楽天戦の1試合のみ。16年が契約最終年だったこともあり、シーズン終了後ソフトバンクからコーチ就任を打診されたという話も伝わっているが、松坂は結局、入団テストを経て18年、中日と契約した。

自身初めてのセ・リーグの球団入りとなった松坂は11試合に登板して6勝(4敗)、防御率3.74をマーク。オールスターゲームにもファン投票で2位に約15万票もの大差をつけて1位に選出されて12年ぶりに出場。カムバック賞も獲得して「松坂復活」を思わせる1年となった。

 2019年、松坂はさらなる活躍が期待された。しかし、春のキャンプでファンに右腕を引っ張られたことによって炎症を起こしシーズンを棒に振り、0勝1敗、防御率16.88でシーズンを終えた。球団側から翌年の契約について打診はあったものの、松坂が断りを入れて中日を退団する。そんな松坂に「温情」ともいえる救いの手を差し伸べたのが西武だった。

キャンプ終盤を迎え徐々にピッチの上がってきた松坂の評価は上々だ。中日関係者が「うちにいた頃よりシェイプアップして体の動きにキレが出てきた。これなら案外やるかも」といえば、西武入りを発表して以来つねに松坂のことを気にかけ、何かと相談に乗ってきた潮崎哲也編成ディレクターも「ここ数年では体の状態が一番いいんじゃないかな。今の調子なら先発ローテーション争いにも十分加われると思うね」と復活を信じて疑わない。たしかに西武はパ・リーグで2年連続防御率最下位になっているほど投手陣が手薄なチーム。それだけに松坂が入り込む余地はあるかもしれない。

 とはいえ、松坂も今年9月で40歳。しかも日本球界に戻ってきてから4年間、ファンを満足させる活躍ができたのはわずかに1シーズンだけだ。果たして今年、復活はあるのだろうか、野球評論家の武田一浩氏に聞いてみた。武田氏は松坂がエースとして活躍した06年のWBCで日本チームのピッチングコーチを務めた。まさに松坂の絶頂期をよく知る人だ。

「故障さえしなければ、まだそれなりにやれるんじゃないかな。中6日とか7日とか間隔を空けてやれば、完投は無理でも5回くらいまでなら先発としても使えるかもしれない。ピッチャーはどこか一カ所故障すると投げ方がおかしくなって、今度は他を故障してどんどんダメになっていく。松坂がまさにそうだったよね。とにかくケガをしないことが大切。今年の松坂はそれに尽きると思うな。06年の松坂はブルペンでキャッチャーの後ろに立って見ていると怖いぐらいの迫力があった。まさにボールがうなりを上げていたよ。それと比べちゃ松坂が可哀想だけど(笑)、今とは雲泥の差だよね。もともと松坂は若い頃からコントロールがアバウトなピッチャーだった。歳を重ねてきて球威が衰えてきた分コントロールがよくなってきた。その辺りはクレバーな男だから松坂も意識しているのかもしれない。今170勝だったっけ? あと30勝、何とか頑張ってほしいね」

「平成の怪物」が再び甦るのか、それとも「令和の遺物」になり果てるのか。

清水一利(しみず・かずとし)
1955年生まれ。フリーライター。PR会社勤務を経て、編集プロダクションを主宰。著書に「『東北のハワイ』は、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡」(集英社新書)「SOS!500人を救え!〜3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年2月15日 掲載