新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、開幕は3カ月も遅れ、試合数は120試合制で行われる今季のプロ野球のペナントレース。チームの順位とともに注目を集めるのが個人タイトル争いだが、4回にわたり誰が獲得するのか予想してみたい。今回はセ・リーグの投手編だ。予想するタイトルと昨年の受賞者、その成績は以下のとおりである。

【2019年セ・リーグ投手タイトル一覧】
最多勝:山口俊(巨人) 15勝
最優秀防御率:大野雄大(中日) 防御率2.58
勝率1位:山口俊(巨人) 勝率.789
最多奪三振:山口俊(巨人) 188奪三振
最多セーブ:山崎康晃(DeNA) 30セーブ
最優秀中継ぎ投手:ロドリゲス(中日) 44ホールドポイント

 先発部門で三冠に輝いた山口と最優秀中継ぎ投手のロドリゲスがメジャーに移籍して、自ずと昨年とは顔ぶれが大きく変わる。まず、最多勝だが、現役のセ・リーグ在籍投手で獲得経験があるのが菅野智之(巨人)、大瀬良大地(広島)、野村祐輔(広島)、山井大介(中日)、小川泰弘(ヤクルト)、吉見一起(中日)の6人となるが、過去3年間の安定感を考えても菅野と大瀬良の争いになることが濃厚だ。

 菅野は昨年故障もあって大きく成績を落とし、キャンプではフォーム改造にも取り組んだが開幕直前の練習試合では、その不安を払拭するピッチングを見せている。開幕が遅れて調整できる期間が延びたこともプラスに働きそうだ。

 一方、大瀬良は5日のオリックス戦で4回を2安打無失点で6奪三振に抑え、12日のソフトバンク戦では3点を失いながらも、6回で7奪三振をマークするなど、順調な投球を見せている。昨年と比べてもストレートに勢いを感じるのは頼もしい限りだ。勝利数には、味方打線の援護やリリーフ陣の要素も絡んでくるが、そういう点ではわずかに菅野の方が有利になりそうだ。昨年のようなことがなければ、最多勝、最優秀防御率、勝率1位については菅野が独占というのが最も手堅い予想になりそうだ。

 先発関連で唯一菅野を上回る可能性を感じるのが奪三振部門の今永昇太(DeNA)である。昨年はわずかの差で山口に及ばなかったが、リーグ2位の186奪三振をマークしている。プロ入り4年間の通算成績で見ても、奪三振数がイニング数を上回っており、「三振を奪う」という点で、リーグでも1,2を争う存在であることは間違いない。セ・リーグの現役投手で最多奪三振のタイトル獲得経験者は菅野と藤浪晋太郎(阪神)だけであり、藤浪の状態を考えると、この部門では菅野と今永の一騎打ちになる可能性が高い。これまで故障で離脱することが多いのは気がかりだが、若さと勢いを買って今永を推したい。

 次にリリーフ部門。まず最多セーブに関しては2年連続でこのタイトルを受賞している山崎が大本命となる。通算5年間で163セーブをマークしており、30セーブを下回ったのはわずかに1回だけと、その安定感はリーグの抑え投手の中で頭一つ抜けている。

 ただ、そんな山崎にも不安要素がないわけではない。防御率は1点台と2点台以上を隔年で繰り返しており、順番で行くと、今年は悪化する年に当たる。もうひとつはこのオフにもポスティングシステムによるメジャー移籍が噂されている点だ。成績を上げて、好条件の契約を勝ち取りたいとプラスに働くことも可能性もあるが、その一方で「無理はしたくない」という気持ちが出てくることも考えられる。ただ他の5球団の抑え投手の顔ぶれを考えると有力な対抗馬は見当たらず、やはり山崎が獲得する可能性が高いと考えるのが妥当だろう。

 難しいのがもう一つのリリーフ部門の最優秀中継ぎ投手だ。過去の受賞経験者を見ると桑原謙太朗(阪神)と近藤一樹(ヤクルト)が現役でプレーしているが、ともに完全なベテランとなっており、大きく成績を上げることは考えづらい。実績ではパットン、エスコバー(いずれもDeNA)、フランスア(広島)などの外国人勢の名前が挙がるが、絶対的な安心感がないのが現状である。

 そんな中で推したいのが、中川皓太(巨人)とR.マルティネス(中日)の二人だ。中川は年々安定感が増しており、昨年は完全に勝ちパターンのリリーフに定着。スピードのあるサウスポーでありながら制球が安定しているというのは、チームの先輩でかつて大車輪の活躍を見せた山口鉄也(元巨人)に通じるところがある。マルティネスも昨年中継ぎとして大きく飛躍。今年で24歳とまだまだ若く、150キロをコンスタントに超えるストレートで三振を奪えるのが大きな持ち味だ。ともにポイントとなるのが抑えに回されないかというところ。巨人はデラロサ、中日は岡田俊哉が抑え候補だが、ともに安定感に欠けるだけに、配置転換も考えられ、そうなるとホールドポイントは稼げなくなる。そうなると選手層の厚さを考えると、中川の方が若干有利になりそうだ。

【2020年タイトル予想 セ・リーグ投手編】
最多勝:菅野智之(巨人)
最優秀防御率:菅野智之(巨人)
勝率1位:菅野智之(巨人)
最多奪三振:今永昇太(DeNA)
最多セーブ:山崎康晃(DeNA)
最優秀中継ぎ投手:中川皓太(巨人)

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月24日 掲載