各チーム約50試合が消化し、中盤戦に入ったプロ野球のペナントレース。例年であればオールスターゲームのブレイクを挟むところだが、今年はシーズン期間短縮のため残念ながら中止となった。そこで今回はもし今年開催されていたら、どのようなメンバーがファン投票で選出されていたのか、“幻のオールスター”をここまでの成績から選出してみたい。

 まずセ・リーグは以下の顔ぶれを選んだ。

先発投手:菅野智之(巨人)
中継ぎ投手:石田健大(DeNA)
抑え投手:R.マルティネス(中日)
捕手:梅野隆太郎(阪神)
一塁:村上宗隆(ヤクルト)
二塁:菊池涼介(広島)
三塁:岡本和真(巨人)
遊撃:エスコバー(ヤクルト)
外野:鈴木誠也(広島)
外野:佐野恵太(DeNA)
外野:青木宣親(ヤクルト)

 先発投手は文句なしで菅野になるだろう。昨年は故障もあって不振だったが見事に復活。抜群の安定感で、8月18日に開幕から8連勝をマークした。首位を走るチームの大黒柱であることは間違いない。

 中継ぎ、抑えはどの球団も苦しんでいるが、そんな中で成績を上げている数少ない二人を選んだ。石田はリリーフ選任になったのは今シーズンからだが、早くも昨シーズンに並ぶホールド数をマーク。起用法がなかなか定まらない中でも結果を残しているのは立派の一言だ。

 R.マルティネスは岡田俊哉の不振もあってシーズン途中からクローザーに配置転換となったが、その役割をほぼ完璧にこなしている。8月15日の巨人戦では球団の投手として史上初となる160キロをマーク。現在セ・リーグの6球団で最も信頼感のある抑えであるといえる。

 捕手は文句なしで梅野になる。開幕当初は他の選手との併用が目立ったが、攻守に安定したプレーで格の違いを見せつけた格好だ。現在の総合力では12球団でもナンバーワンと言っても過言ではないだろう。

 内野手で悩んだのは二遊間だ。オールスターの常連である山田哲人(ヤクルト)と坂本勇人(巨人)が揃って調子を落としており、他球団を見ても完全にレギュラーが固定できているところは少ない。そんな中で守備での貢献度の高さから菊池とエスコバーを選んだ。

 菊池は8月18日終了時点でノーエラーが続いている。やや衰えた感はあるものの、その守備力はやはり見事だ。エスコバーもメジャーでゴールドグラブ賞を獲得した実力は健在で、度々チームのピンチを救うプレーを見せている。長打力はないものの、打撃のしぶとさも持ち味だ。

 一塁の村上は“2年目のジンクス”を感じさせない見事な活躍ぶりで、完全に4番に定着した。低めのボールの見極めが格段にレベルアップしており、将来的には日本の4番を任せられる可能性も高いだろう。岡本は少し打率を落としているが、ホームランの量産ぶりを評価した。勝負強さも兼ね備えており、完全に巨人の主砲となってと言える。

 外野は、侍ジャパンの4番である鈴木の安定感が際立っている。2年連続の首位打者、また複数の打撃タイトル獲得への期待も大きい。青木の衰えない打棒も見事だ。メジャーから復帰してここまで成績が落ちない選手も珍しいだろう。そして今年最も成長を見せた選手が佐野だ。“繋ぎの4番”と言われていたが、徐々に長打力を発揮してホームランも量産。完全に筒香嘉智(DeNA)の穴を埋めている。この勢いがどこまで続くかに注目したい。

 続いてパ・リーグは以下の10人を選出した。

先発投手:涌井秀章(楽天)
中継ぎ投手:モイネロ(ソフトバンク)
抑え投手:増田達至(西武)
捕手:森友哉(西武)
一塁:中田翔(日本ハム)
二塁:浅村栄斗(楽天)
三塁:鈴木大地(楽天)
遊撃:茂木栄五郎(楽天)
外野:柳田悠岐(ソフトバンク)
外野:吉田正尚(オリックス)
外野:近藤健介(日本ハム)
DH:ロメロ(楽天)

 先発はロッテから楽天に移籍した涌井。8月5日のソフトバンク戦では9回1死までノーヒットの快投を見せるなど、ここまでチームの先発陣の柱として活躍している。3球団目の最多勝獲得も射程圏内だ。中継ぎは現在12球団でも最強のセットアッパーと言えるモイネロ。コンスタントに150キロ台後半のスピードをマークし、驚異の奪三振率を誇る。登板過多だけが不安だが、その実力は圧倒的だ。

 抑えの増田も昨年に続いて見事な安定感を見せている。チームの先発陣が試合を作れず、また勝つときは大量得点というケースが多いため、若干“宝の持ち腐れ”となっているが、安定感はリーグでも随一だ。

 迷ったのは捕手。開幕当初は若月健矢(オリックス)、太田光(楽天)の活躍が光ったが徐々に失速。甲斐拓也(ソフトバンク)も攻守にやや精彩を欠いている。最終的に選んだ森も昨年と比べると相当物足りないが、少し打撃は上向いており、期待値込みでの選出となった。

 内野手は好調な楽天勢から3人を選出。浅村、鈴木、茂木の三人が、8月19日終了時点でいずれも打率3割を超えており、チームの打撃陣を牽引している。特に浅村は開幕から抜群の勝負強さを見せており、昨年までと比べてもワンランクレベルアップしたように見える。最近はDHでの出場も多いが、今後のことを考えると守備もしっかりこなしておきたいところだ。

 ファーストの中田は相変わらず打率は高くないものの、過去最高のペースでホームランを量産している点を評価して選出した。ここ一番での集中力はさすがで、本塁打と打点の二冠も十分に狙える。

 外野はリーグを代表する左バッター三人が並んだ。柳田はここ数年故障の多さが気になっていたが、今年は開幕当初から好調をキープ。30歳を過ぎてなお長打力はアップしているように見え、柳田にしか打てないようなインパクトの強いホームランを量産している。

 吉田は豪快なホームランの印象が強いが、確実性の高さも際立っている。コンディションさえ万全ならタイトル争いに加わってくるだろう。一方、近藤は開幕当初は不振だったが、しっかり状態を上げてきた。特に8月に入ってからはヒットを量産しており、柳田の首位打者獲得を阻む筆頭候補となりそうだ。

 指名打者は、オリックスから楽天に移籍したロメロ。オリックス時代は故障が多く、好調な時期が続かないイメージが強かったが、今年は調整が上手くはまり、ここまで安定した成績を残している。他のチームメイトも好調でマークが集中しないというのも大きなプラス材料と言えるだろう。

 毎年選ばれている常連もいれば、佐野のように急浮上してきた選手もおり、なかなか面白い顔ぶれとなった。2002年以降は試合数も基本的に2試合となり、また交流戦もあることからその意義が問われることもあるオールスターゲームだが、やはりこれだけの選手が揃う試合は壮観である。来年は通常通り開催されて、多くのプロ野球ファンを楽しませてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月21日 掲載