リーグ3連覇からBクラス転落、そして今季は最下位争いと低迷する広島カープ。5年間、指揮を取った緒方孝市監督に代わり、“一体感”を掲げてスタートした佐々岡真司新監督だが、チーム再建へ苦戦の日々が続いている。

 今季の広島は、昨年まで5年連続で勝ち越していた巨人に9年ぶりとなるマツダスタジアムで3タテを喫するなど、8月21日時点で2勝6敗と大きく負け越しており、3連覇時には圧倒的な強さを誇ったマツダで6勝12敗3分と地の利も活かせていない。コロナ禍による異例のシーズン開幕から2週間、ビジターでの試合が続いた日程の影響や、無観客から5000人の入場制限で、スタンドを真っ赤に染めるマツダでの“ホームアドバンテージ”がないとはいえ、現在の成績は戦力的にも期待外れと言わざるを得ない。

 その最大の要因となっているのが、リリーフ陣の不振だ。3連覇時には不動の抑えだった中﨑翔太が右膝手術からの復活途上で、クローザー候補の一番手だったG・フランスアが不振。新外国人のT・スコット、菊池保則、一岡竜司とクローザーに指名された投手がことごとく期待を裏切り、終盤までのリードを守りきれず勝ちきれない試合が続いた。

クローザーだけでなく、中継ぎ陣でも新外国人のDJ・ジョンソンが戦力になれず、セットアッパー転向で期待された岡田明丈も期待を裏切った。勝ちパターンを任せられる投手が不在で、開幕からしばらくリリーフ陣は崩壊状態となった。

 もっとも、大瀬良大地やK・ジョンソン、ルーキーの森下暢仁など比較的、頭数は揃っている先発陣に対して、リリーフ陣のこの状況は戦前から予想されていたことだった。

広島担当記者は「これは3連覇の反動であり、ある意味、人災と言えそうです」としたうえでこう続けた。

「緒方監督の5年間では、中﨑の293試合を筆頭に一岡が216試合、今村猛も226試合に登板しており、さらにリーグ3連覇中は中﨑が4年連続、2人は2年連続で60試合前後の登板があるなど、リリーフの実績組は蓄積疲労が顕著になっています。さらに3連覇中には3年間で175試合に登板したJ・ジャクソンや、16年に50試合に登板したB・ヘーゲンズなど外国人投手が機能していましたが、ここ2年はドミニカアカデミー以外の投手は、先発のジョンソンが戦力になっているのみです。2年間で114試合に登板したフランスアも疲労が隠せず、新戦力の台頭も乏しかったため、ブルペンは“草木も生えない”荒れ果てた状態になってしまいました」

 打撃陣を見ると、今季もチーム打率、得点などは悪くない数字を残しているが、実際のところは2018年オフに巨人にFA移籍した丸佳浩の穴が顕著になりつつある。

「丸の移籍後は3番が固定されず、球界を代表する4番打者に成長した鈴木誠也の前を打つ選手が決まらない。今季は丸のFA補償選手として移籍した長野久義や11年目で再ブレイクした堂林翔太などが頑張っていますが、2年連続リーグMVP選手の流出は戦力ダウンと同時に、ライバルチームの戦力アップにもつながることになってしまった」(前出の広島担当記者)

 打線の中軸選手で言えば、昨年のシーズン途中にドーピング違反で戦線離脱し、そのまま退団となったX・バティスタの穴も大きい。好調時の爆発力はチームの浮沈を左右し、得点力不足に悩んだ時期にも一発で流れを変えられるポイントゲッターとして、何度もチームの危機を救っていた。

 野手陣の誤算は、FA残留組も含めた主力選手にもある。メジャー移籍断念の菊池涼介の残留は、チームにとって“最大の補強”とも言われたが、持ち味の守備での貢献こそ変わらないものの、打撃では打率2割台前半と不振が続き、3連覇時には不動の2番だった打順は、7番に下がることが多くなっている。

 昨年は右ひざの不調で打撃不振が続き、シーズン後半は正遊撃手の座をルーキーの小園海斗に譲る形になった田中広輔も、今季は8番が定位置になっている。オフに故障箇所の手術を行い、今季は選手会長として万全の状態で心機一転、臨むシーズンとなったが、低打率が続き、不動のトップバッターとして活躍した存在感は消えている。

 今季の広島は「ベンチに活気がない」と言われることが少なくない。広島担当記者はその要因として、この2人の影響も大きいと言う。

「菊池涼はメジャー移籍を断念した後、春季キャンプも“謎の二軍スタート”となった。シーズン前には自身の女性問題で謝罪する騒動もあり、モチベーションが低いように見えます。田中広も選手会長にはなりましたが、どちらかと言えば自分のプレーに集中したいタイプで、前任者の小窪哲也や会沢翼のようなリーダー的な要素は乏しいように感じます。とにかく、リーグ3連覇の象徴的存在だった“タナキクマル”が完全に解体した形になり、チームは変わったと思います」

 選手だけでなく、コーチ陣の問題も凋落の要因のひとつと言える。広島は伝統的にチームOBで首脳陣を固める傾向があるが、強くなっていく時期に石井琢朗、河田雄祐、植田幸弘と、現役時代に他球団でのプレーを経験している有能なコーチがいた。

 横浜で2000本安打を達成した石井コーチは、打撃コーチとして「1試合で27個あるアウトを無駄にしない打撃」で進塁打などの「勝つための」チーム打撃を浸透させ、先発オーダーの提言なども行った。

河田コーチと植田コーチは、西武の黄金時代に現役選手としてプレーし、ともに同チームでコーチも務め、歴代の監督からの信頼が厚く、評価も高かった。特に河田コーチは、広島では守備走塁コーチとして「スキがあれば常に次の塁を狙う」カープ伝統の機動力野球を復活させた。3人ともカープでのプレー経験はあるが、“外部招聘”とも言える人材で、チームに多くのものをもたらした。

 一方、佐々岡新体制では、首脳陣も内部昇格の生え抜き組がほとんどで、新任の横山竜士投手コーチや、一軍コーチは初となる朝山東洋打撃コーチなど、能力的な問題はともかく適性や経験値という点で、新監督を支える首脳陣としては不安材料の方が大きい。

 球団史上初のリーグ3連覇からわずか2年での凋落に、かつての長期低迷時代への逆戻りを心配する声もあるが、黄金時代到来とも呼ばれたこの時期は「偶然の産物だったのかもしれない」と前出の担当記者は言う。

「あるOBが『タナキクマルが同い年で、選手としてのピークも同時期だったというのは奇跡的なこと。他にも多彩な選手が揃っており、あのメンバーなら誰が監督でも優勝できる』と言っているのを聞いたことがあります。たしかに3連覇したことで、ドラフト戦略など、いろいろな面で高い評価を受けましたが、チームづくりの方針や、やり方などは、低迷時からほとんど変わっていません。変わったのは、逆指名ドラフトの廃止などといったリーグの制度と、球団の財政状況です。そのOBは『今のチーム作りの方法だと、また25年かかるかもしれない』とも言っていました。現在のように、FA戦線に参戦せず、大型トレードも行わず、首脳陣を含めての生え抜き至上主義では、今後は苦しいかもしれません」

 広島県民の特性として「熱しやすく冷めやすい」気質があると言われている。昨年までは満員御礼が続いていたマツダスタジアムも、以前のような低迷期が再来すれば、観客動員に影響が出る可能性もある。現にBクラスに終わった昨季終盤には、チケットこそ売れているものの、スタンドには空席の目立つ試合が少なくなかった。スタンドに閑古鳥が泣いた旧市民球場の悪夢を繰り返さないためにも、アフターコロナを迎える現在は、チームが根本的に変わる契機なのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月23日 掲載