今年のドラフト会議では支配下、育成合わせて123人が指名を受けたが、プロ入りする選手がいるということはそれだけユニフォームを脱ぐ選手もいるということである。11月2日からは来季の選手契約を結ばない選手も各球団から発表されているが、その中で大きな話題となったのが西武だ。

 一昨年、16勝をマークして最多勝に輝いた多和田真三郎を自由契約にすると発表したのだ。多和田は昨年から自律神経失調症が原因の不整脈に悩まされており、今シーズンは7月になってようやく選手登録されている。まずは治療を優先させるということで、育成選手での再契約を検討しているというが、二軍で復帰登板を果たしていただけに、この発表に驚いたファンも多かったことだろう。

 そして、もうひとつ西武で大きなニュースとなったのが松坂大輔との再契約だ。まだ正式決定はしていないものの、今シーズン、一度も実戦登板を果たしておらず、来年で41歳となる松坂に対しては経験を評価して支配下登録するというのだ。確かに、多和田と松坂では実績は大きく違い、同じように育成契約を打診するのは難しいという側面はある。とはいえ、単純に戦力として考えた時にはこの方針には大いに疑問が残る。若手に対して影響力のあるベテランという意味では内海哲也が在籍しており、そのために貴重な支配下登録の枠を二つも使うことに対しては批判の声も少なくない。

 今回の件に限らず感じられるのが西武の編成面の問題だ。一昨年からパ・リーグ連覇を達成してはいるものの、これまでも多くの主力選手が退団し続けている。過去5年間でFA、ポスティングシステムなどで球団を去った選手を並べてみると以下のような顔ぶれとなった。

2016年:岸孝之
2017年:牧田和久:野上亮磨
2018年:菊池雄星、炭谷銀仁朗、浅村栄斗
2019年:秋山翔吾

 このように、いずれも日本代表クラスの選手たちばかりである。年齢的にピークを過ぎて、年俸が高額になったため、見切りをつけたという意見もあるかもしれないが、ここで挙げた大半の選手が他球団でも主力として活躍しているのを見ると、その判断は正しかったとは言えないだろう。中村剛也と栗山巧の二人だけは何とか引き止めることに成功したが、球団が最大限努力した結果という印象は受けない。

 もうひとつ気になるのが、戦力補強に消極的な点だ。FAやポスティングシステムでこれだけ選手を放出しているということは、それだけ金銭が入ってきているはずだが、それを活用しているようには見えない。過去5年間にトレード、FAの人的補償で獲得した選手を並べてみると、以下のような選手となる。

2017年:小川龍也、榎田大樹、高木勇人
2018年:内海哲也

 小川と榎田は一軍の戦力にはなっているが、完全な主力というほどではない。高木は既に球団を去り、内海も二軍暮らしが続いている。また、2017年から3年間の大型契約を結んだ途端にメヒアが成績を落とし、昨年オフに2年契約を結んだニールも今年は思うような結果を残していない。このように外国人選手に対する大型投資も上手くいっているとは言い難い。

 それでもパ・リーグ連覇を達成できたのは山川穂高、森友哉、外崎修汰、源田壮亮といった生え抜きの野手が育ってきたからに他ならないが、その勢いも徐々に薄れてきているのが現状である。そんな状況でありながら、冒頭で触れたような多和田と松坂に対する契約のニュースが出たことで、チームがさらに悪い方向へ向かうことも十分に考えられる。

 過去を振り返ってみても、80年代から90年代にかけて、黄金時代を築いたメンバーも大半はチームを去っている。松井稼頭央と松坂は最晩年に復帰しているが、戦力としてというよりも“最後の花道”のためという意味合いが強い。今後も強いチームを維持するためには、もう少し生え抜きの主力選手に対して長く活躍するような環境と条件を整えて、他球団からの戦力補強も検討していく必要があるのではないだろうか。そうでなければ、ソフトバンクとの差がますます開いていくことは間違いないだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月8日 掲載