2020年シーズンは高津臣吾新監督が就任し、シーズン序盤は巨人と首位争いを演じたものの、最終的には2年連続の最下位に沈んだヤクルト。5位広島とのゲーム差は12ゲームと、完全にセ・リーグで1チームだけ取り残されていた印象は否めない。しかし、そんなヤクルトだがこのオフは例年にない積極的な動きを見せている。そこで今回はここまで行ってきた補強を振り返りながら、2021年シーズンの浮上に向けてのポイントを探ってみたい。

 まず他球団を退団して、ヤクルトが獲得した選手は下記の4人になる。

支配下:宮台康平(前日本ハム)、内川聖一(前ソフトバンク)
育成:近藤弘樹(前楽天)、小沢怜史(前ソフトバンク)

 この中で目玉はやはり内川になる。他球団も興味を示していたと言われるが、交渉解禁と同時にオファーを出し、見事に入団にこぎつけた。2020年も二軍では3割を超える打率を残しており、その打撃技術はまだまだ健在。チームは他にもベテランの野手が多く、若手の抜擢が遅れるという懸念はあるものの、2021年シーズンだけを考えればファーストのバックアップや代打要因としてプラス面は多く期待できそうだ。

 もう一人支配下で獲得したのが左腕の宮台だ。12球団合同トライアウトでは三者三振と抜群の結果を残してみせた。日本ハムでの3年間で一軍登板はわずか1試合で、二軍での成績は年々下降していたが、そんな成績が不思議に思えるほどのピッチングだった。決め球がチェンジアップ、ストレート、スライダーと全て異なっていたのも評価できるポイントと言えそうだ。ソフトバンクから移籍してチーム3位タイの44試合に登板した長谷川宙輝とともに、貴重なサウスポーとして期待したい。

 育成の投手二人もドラフト時点では、近藤は1位、小沢は2位で指名されているように、素材の良さには定評がある大型右腕だ。近藤は今年一軍で6試合に登板して防御率は5.40だったが、5試合で150キロを超えるスピードをマークしている。無駄な動きの多いフォームは、大学時代から変わらない課題だが、25歳とまだ若いだけに改善の余地はありそうだ。小沢は宮台と同様に合同トライアウトで好投。好調時には150キロ前後のスピードがあり、フォークのブレーキも申し分なく、22歳という若さも魅力だ。

 動きが早かったのは他球団を退団した選手に対してだけではない。新外国人も投手のサイ・スニード(前アストロズ)、野手のホセ・オスーナ(前パイレーツ)、ドミンゴ・サンタナ(前インディアンス)と早々に契約を結んだのだ。

 中でも期待がかかるのがサンタナだ。14年にメジャーデビューを果たすと、17年には30本塁打を放って大ブレイク。19年はマリナーズに所属し、日本で行われた開幕戦でも満塁ホームランを放っている。三振の多さと不安定な外野の守備は課題となるが、打線に厚みが出ることは間違いないだろう。またスニード、オスーナ、サンタナの3選手とも20代後半でまだまだ若く、日本での成長が期待できる点もプラス要因である。

 ヤクルトの現有戦力を改めて見てみると、強みは中軸を任せられる打者が揃っているところだ。村上宗隆が名実ともに4番として相応しい存在となり、その前を打つ山田哲人も、20年シーズンはコンディション不良で少し成績を落としたとはいえ、1年を通じて出場すれば30本塁打、100打点近い数字を残す可能性が高い。大ベテランの青木宣親は、村上に次ぐリーグ2位のOPS(出塁率+長打率)をマークしており、その力はまだまだ健在だ。

 外国人選手に頼らずに、安定した中軸を構成できるという意味では、巨人にも決して引けを取らない。これに加えて、オスーナとサンタナというメジャーで実績のある選手が機能すれば、野手に関しては十分に戦える戦力が揃う可能性は高そうだ。

 過去のヤクルトを見ても、チームの成績が良い時は他球団からの移籍組の活躍が目立つことが多い。「再生工場」といえば野村克也監督時代のイメージが強いが、ここ数年でも坂口智隆が見事な復活を果たし、鵜久森淳志、大松尚逸、田代将太郎なども一軍の貴重な戦力となった。昔からファミリー体質で生え抜き以外の選手にも働きやすい環境と言われているのは大きな強みである。今年も冒頭で触れたように育成を含めて4選手を獲得しているが、彼ら自身にとってもプラスの面は多いだろう。ヤクルトが“令和の再生工場”として再稼働する日も近いかもしれない。

 12球団でワーストの防御率だった投手陣については、劇的に改善することは考えづらいが、ドラフト会議では、二度抽選を外しながらも木沢尚文、山野太一という大学球界でも屈指の力がある投手が獲得できたのはラッキーだった。いきなり、一軍で勝ち星を重ねられるかは微妙なところだが、長いイニングを投げられる頭数が増えたことは確かである。また、二年目を迎える奥川恭伸、吉田大喜の飛躍にも期待したいところだ。

 以上のような状況を考えると、投手陣の立て直しは継続して取り組む必要があるが、来年に関してもやはり野手頼みとなる可能性が高い。神宮球場はホームランが出やすいことでも知られており、山田が復活して新外国人野手二人が期待通りに活躍すれば、チーム本塁打114本(20年)からの上積みは確実に期待できる。少々の失点は目をつぶって打線がカバーしている間に投手陣の成長を待つ……そんな戦い方に思い切って振り切るくらいの覚悟が必要ではないだろうか。2年目を迎える高津監督がどのような方針を打ち出すかに注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月30日 掲載