いよいよキャンプインした今年のプロ野球。オフは日本国内での移籍は少なかったが、ヤンキースをFAとなっていた田中将大が8年ぶりに楽天に復帰し、ポスティングによるメジャー移籍を目指していた菅野智之が巨人に残留するなど、大物選手に関するニュースは決して少なくなかった。大きな話題となったのが田中の9億円、菅野の8億円という高額年俸である。これまで日本球界最高年俸はペタジーニ(当時巨人)の7億2000万円と言われていたが、ともにそれを大きく上回った。

 ただ、その一方で大幅ダウンとなった選手も少なくない。ある意味、大幅ダウンは“最後通告”とも言え、今シーズンも成績を残せなければ自由契約、もしくは引退となる可能性が高い。そんな“屈辱の大減俸”からの復活を目指す大物選手をピックアップしてみたい。

 最もダウン額が大きかったのが糸井嘉男(阪神)だ。4年契約の最終年だったということもあり、4億円から1億8500万円と半額以下での契約更改となった。2017年にFAでオリックスから移籍し、18年から2年間は打率3割をマークするも、度重なる故障で出場試合数は減少。昨年はレギュラー獲得後、初めて規定打席未満に終わっている。

 気になるのが盗塁とホームランの減少である。阪神移籍後、最初の2年間は20盗塁をクリアしていたが、19年以降は9個、2個と激減。ホームランも昨年はわずか2本に終わってしまった。膝や足首を度々故障しており、全力でプレーできない状態が続いている。

 救いは、高い出塁率を誇っているところだ。昨年も打率は.268に終わったが、出塁率は約1割高い.363をマークしており、まだまだ相手投手に恐れられていることがよく分かる。今年で40歳という年齢を考えても、打撃に特化するスタイルで勝負した方がチームの戦力となる可能性は高そうだ。

 プロ野球歴代3位となる6度のホームラン王を誇る中村剛也(西武)も3億5000万円から1億3000万円ダウンという厳しい契約更改となった。元々故障が多く、フル出場を果たしたのは11年のみだが、昨年は死球を受けた影響もあってわずか79試合の出場に終わった。

 08年にレギュラーを獲得してから、故障で長期離脱した13年を除いて本塁打率(1本の本塁打を打つのに何打席を擁するかという指標。本塁打数÷打数)は常に20を下回っていたが、昨年は28.7まで悪化している。求められるのはホームラン、長打というのはシンプルで、それに特化してきたからこそ、今の中村があることは間違いないが、昨年はその最大の持ち味に陰りが見られた。

 一昨年は4度目の打点王に輝き、自己ベストの打率.286をマークしているように、依然として、力があるところを見せているが、2年続けて低調な数字に終わるようであれば、今年で38歳という年齢を考えても、厳しい立場となりそうだ。

 投手で厳しい契約となったのが野上亮磨(巨人)と増井浩俊(オリックス)の二人だ。18年から3年契約で巨人入りしたが、その期待に応えることができず、今年は1億2000万円ダウンの年俸3000万円となっている。一昨年、左アキレス腱断裂という大怪我を負い、昨年は二軍でも0勝3敗、防御率4.98と戦力になっていない。今年で34歳という年齢を考えると復活の可能性はありそうだが、菅野が残留したことでチャンスも限られるため、わずかな機会でしっかりアピールすることが求められる。

 一方、増井は移籍一年目の18年には35セーブと見事な結果を残したが、翌年以降は低迷。このオフには3億円から1億円ダウンという大幅減俸となった。かつては150キロを超えることが珍しくなかったストレートが、140キロ台中盤まで落ちてきているのが気がかりなところ。短いイニングでもストレートとフォークだけでは抑えられなくなっている。

 救いは昨年シーズン終盤に先発で結果を残しているところ。10勝をマークした16年も昨年もシーズン途中での先発転向だったが、今年はキャンプから先発として準備できるのはプラス材料だ。フォーク以外に決め球として使えるボールを作ることができれば、役割を変えての復活が期待できそうだ。

 一世を風靡した選手が大きく成績、年俸を落とすとそのまま引退してしまうケースが多いが、ベテランになってから一花咲かせた例はある。最近では坂口智隆(ヤクルト)が移籍をきっかけにして見事な復活を遂げ、18年には5年ぶりに年俸1億円の大台を突破した。今回紹介した4人も潮時ではないかという周りの声もあるかもしれないが、そんな前評判を覆すような復活劇を見せてくれることを期待したい。

※年俸はいずれも推定

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月9日 掲載