ルーキーや新外国人などに注目の集まるプロ野球だが、新戦力は彼らだけではない。昨年オフに一度戦力外となりながらも、他球団での“再就職”を勝ち取った選手たちもキャンプではアピールを続けている。そんな一度は地獄を見た選手の中で、戦力になる可能性が高いのは誰なのか。

 投手で貴重な戦力となりそうなのが、ソフトバンクを自由契約となり、阪神に入団した加治屋蓮だ。2018年にはチームトップの72試合登板、31ホールドという見事な成績を残してオールスターにも出場したが、翌年以降は肩の故障の影響で低迷。将来有望な若手の投手が多いチーム事情もあって大活躍のシーズンからわずか2年で退団となっている。ただ、昨年は二軍で防御率1点台と成績を残しており、まだまだ力が衰えたという印象はない。2月7日に行われた紅白戦でも140キロ台後半のストレートを連発し、1回を打者3人で抑え込んで見せた。コンディションさえ維持することができれば、岩崎優、スアレスに繋ぐ中継ぎの一角としてブルペン陣を支える存在となりそうだ。

 阪神でもう一人面白いのが鈴木翔太だ。高校時代から素材の良さは高く評価されており、13年のドラフトでは松井裕樹(楽天)の外れながら1位指名で中日へ入団。4年目の17年には5勝をマークしている。課題はとにかく故障が多いところ。これまで幾度となく戦線離脱を繰り返しており、1年を通じて投げられたシーズンはほとんどない。ただ、故障を繰り返してもフォーム自体の良さは失われておらず、今年で26歳とまだまだ年齢的にも若さがあるのは魅力だ。2月4日の紅白戦でも1回を三者凡退とアピールに成功した。育成選手からの再スタートとなったが、状態が上がってくればシーズン途中の支配下登録も十分期待できるだろう。

 オフに積極的な補強を見せたヤクルトで期待が高いのが宮台康平だ。東京大学出身ということがとにかく話題となるが、大学時代はそのような背景がなくても十分プロ入りするだけの力を備えており、東京六大学の強豪を相手にも見事な投球を見せていた。日本ハムでは3年間の在籍で一軍登板わずか1試合に終わり、二軍でも目立った成績を残すことはできなかったが、昨年12月の合同トライアウトで三者連続三振をマークして、見事に“再就職先”を勝ち取った。チームはとにかく投手陣が苦しい状況で、左のリリーフ陣も手薄なだけに、キャンプ、オープン戦からアピールを続けていけば開幕一軍も見えてくるだろう。

 鈴木と同じく育成ではあるが、野手で楽しみなのが、田城飛翔だ。八戸学院光星では三拍子揃った外野手として評判となり、3年夏の甲子園ではホームランを放つなど活躍。育成ドラフトでのプロ入りながら、ソフトバンクの三軍で着実に力をつけて、3年目の19年にはウェスタンリーグで最多安打を放ち、打率3割をクリアするなど見事な成長ぶりを見せている。

 昨年は成績を落として支配下登録を勝ち取ることができなかったが、球団の育成再契約の打診を断り、12球団合同トライアウトに参加。左腕の野田昇吾(前西武)からヒットを放ち、オリックスとの契約を勝ち取った。まだ、少し細身ではあるがバットコントロールの良さと脚力があり、外野手としての総合力は高い。チームの外野陣をみると、吉田正尚以外は流動的でレギュラーは固まっていないだけに、二軍で一昨年のような結果を残すことができれば十分に支配下登録のチャンスはありそうだ。

 そして、忘れてはならないのが抜群の実績を誇る福留孝介(中日)、内川聖一(ヤクルト)、能見篤史(オリックス)の三人だ。年齢的な衰えがあるとはいえ、高い技術はまだまだ健在。能見はコーチ兼任の肩書が既についているが、福留と内川の二人についてもプレー以外でもチームを引っ張る役割として重要な存在となりそうだ。

 かつては宮地克彦(元西武など)や山崎武司(元中日など)が戦力外から這い上がって大活躍するなどの事例もあり、環境が変わることで復活する例も確かに存在している。今シーズンも彼らのように“リストラの星”として輝く選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月12日 掲載