ここ数年、プロ野球界で存在感が増しているのが、育成ドラフト出身の選手たちだ。日本シリーズ4連覇を達成したソフトバンクでは、千賀滉大や甲斐拓也、周東佑京が日本代表クラスへと成長し、セ・リーグ連覇の巨人でも松原聖弥、増田大輝がチームに欠かせない存在となっている。昨年の育成ドラフトには全12球団が参加したが、これは2005年にこの制度ができてから初のことである。そこで今回は今シーズン、ブレイクが期待される育成ドラフト出身の選手をピックアップしていきたい。

 まず育成ドラフトから多くの一流選手を輩出しているソフトバンクで最も期待されるのがリチャードだ。沖縄尚学時代から長打力は評判だったが、確実性と打つ以外のプレーが課題でプロからの評価は決して高くなく、17年の育成ドラフト3位でプロ入り。最初の2年間は三軍暮らしが続いたが、昨年はキャンプ、オープン戦での活躍が認められて3月に支配下登録を勝ち取った。一軍デビューは見送られたものの、二軍では12本塁打、47打点で二冠王を獲得している。

 その持ち味は前述したように何と言ってもそのパワーだ。189cm、119kgという巨漢だが、入団当時よりも体重は増えながらも、体つきは引き締まったように見える。以前は遠くに飛ばしたいという意識から崩される空振りが多かったが、今年のキャンプでは上手く上半身の力を抜いて楽に振って飛距離が出るようになり、確実性もアップしたようだ。守備に関しては、まだまだ安定感を欠くところはあるが、長打が期待できる若手野手が少ないだけにその存在は極めて貴重だ。今年は一軍でレギュラー争いに加わりたい。

開幕から4割

 パ・リーグの野手でもう一人飛躍が期待されるのが2年目の樋口龍之介(日本ハム)だ。横浜高校では、レギュラーとしてプレーしていたものの、上背がないこともあってプロから注目されるような選手ではなく、立正大でも目立った成績を残していない。独立リーグの新潟アルビレックスBCで3年間プレーし、25歳のシーズンに育成ドラフトで指名された遅咲きの選手である。

 1年目の昨年は開幕から4割を超える高打率をマークするなど打ちまくり、9月に支配下登録されるとシーズン終盤には一軍でプロ初ホームランも記録した。168cmと小柄ながらたくましい体格で、パンチ力を生かしたバッティングが持ち味だ。特別高い守備力があるわけではないが、内野の複数ポジションをこなせるのも大きい。同じ内野手では高校卒3年目の野村佑季に期待が高まっているが、樋口も今年27歳と完全に中堅と言われる年齢なだけに、勝負のシーズンとなりそうだ。

 ここ数年、育成ドラフトに積極的なオリックスでは漆原大晟が面白い存在だ。高校時代は無名だったものの、新潟医療福祉大では早くから主戦として活躍。育成ドラフトでのプロ入りながら1年目から二軍で最多セーブをマークし、2年目の昨年キャンプ中に支配下登録された。

 昨年は一軍でも22試合に登板して2セーブ、5ホールドを記録している。150キロ前後のストレートとブレーキのあるフォークが武器で、奪三振率の高さは大きな魅力だ。今季はメジャーから平野佳寿が復帰したものの、チームの将来のことを考えると早い段階で、漆原を抑えに抜擢ということも十分考えられるだろう。

岩村明憲を彷彿

 セ・リーグの投手で昨年開花の兆しを見せたのが藤井黎來(広島)だ。大曲工では2年夏に甲子園に出場し、17年の育成ドラフト2位で広島に入団。3年目の昨年は二軍でリリーフとして18試合に登板して防御率1.09という見事な成績を残し、9月に支配下登録を勝ち取った。ストレートは140キロ台中盤と驚くような速さはないがボールの角度があり、決め球のフォークも落差は十分。キャンプは二軍スタートとなったが、チームのリリーフ陣は苦しい状況だけに、ブルペンの一角に入ってくる可能性はありそうだ。

 野手で面白いのが松本友(ヤクルト)だ。明治学院大では首都リーグの二部所属ということもあってそれほど注目されるような選手ではなかったが、BCリーグの福井でプレーした2年間で力をつけて、18年の育成ドラフト2位でプロ入り。2年目の昨年は二軍でチームトップとなる66安打を放ち、7月に支配下登録されると、シーズン終盤には一軍で初ヒットもマークしている。下半身の強さを感じるスイングは、かつてヤクルトで活躍した岩村明憲を彷彿とさせるものがあり、たくましい体格だが脚力も備えている。内野手登録だが外野にもチャレンジしており、複数ポジションを守れるのも持ち味だ。残念ながら、雨で中止となったが、2月11日と14日の練習試合では4番に起用することを首脳が明言するなど、首脳陣の期待も高い。新型コロナウイルスの影響で新外国人の来日が遅れている間にアピールを続けていけば、開幕一軍も見えてくるだろう。

 ソフトバンク、巨人が代表的だが、育成ドラフト出身の選手が一軍に定着するとチームに不思議と勢いが出てくることは間違いない。今回紹介した以外にも新たな“育成の星”が続々と登場し、球界全体を活性化させてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月17日 掲載