地域ごとにかなりの差

 2年ぶりに選抜高校野球が開催され、プロ野球もペナントレースの熱戦が続いている。緊急事態宣言が発令されて、全国から球音が消えた1年前のことを思うと、日々野球が行われていることをありがたく感じているファンも多いはずだ。しかし、4月13日には大阪府の新規感染者が1000人を超え、全国各地で「まん延防止等重点措置」がとられるなど、予断を許さない状況は続いている。

 昨年から続くコロナ禍で改めて明らかになったのが、野球界全体の足並みが揃わないということだ。昨年は春夏の甲子園大会が中止となり、夏には何とか全国で代替大会が行われたものの、その開催方法については地域ごとにかなり差が出ていた。

 最も厳しいと言われていたのが神奈川県で、入場が許されるのは控え部員のみで、選手の保護者についても認められなかった。また、日程の問題はあったものの、優勝チームを決めることができず、途中で打ち切りとなった地区もあった。

 そして今年も緊急事態宣言が長期化した東京都では、春季都大会の出場校を決めるブロック予選が中止となり、昨年秋の都大会出場を逃したチームは夏まで公式戦が1試合も行えないという事態になっている。

限られた条件の中で

 さらに問題だと感じるのが、活動の制限である。神奈川県では緊急事態宣言下では県教育委員会からの通達により、公立高校は平日の練習時間が厳しく制限されて土日の活動も禁止となったが、私立高校についてはその適用範囲外とされていたというのだ。

 感染状況は地域によって大きな差があり、全国一律で何かを決めることは当然困難ではあるとはいえ、同一地域にある学校で活動条件に大きな差が生じているのには強い違和感を覚える。学生野球の憲法的な存在ともいえる日本学生野球憲章には「フェアプレーの精神を理念とする」という文言が明記されているが、この対応はその精神に則ったものとはとても言えないのではないだろうか。

 もちろん誰もが経験したことのないコロナ禍においてプロ野球の興行や学生野球の大会を開催することは容易なことではなく、運営側もかなりの努力をしていることは間違いないだろう。

 メジャーリーグでは労使間の交渉が難航してレギュラーシーズンがわずか60試合にまで減少したのに対して、NPBは120試合での開催にこぎつけている。また、大学野球では、東京六大学が変則日程となったものの、8月に春季リーグ戦を有観客で開催し、秋のリーグ戦では応援団も場所を外野席に移して行うなど、限られた条件の中でできることを模索している様子がよく感じられた。

 プロとアマチュアが協力してプロ志望の高校生に対して史上初めて「プロ志望高校生合同練習会」が開催されたことも、大きな前進と言えるだろう。11月末には社会人野球の都市対抗野球も無事に開催された。

隣の様子を伺いながら

 とはいえ、各団体の連携や協力についてはまだまだ不十分と言えるのではないだろうか。大会の運営などについて、各年代、各地区の連盟などが一堂に会して対策を協議しているような話は聞かれず、強力なリーダーシップを発揮するような人物も現れていない。

 プロ野球は興行、学生野球は教育の一環という目的の違いがあり、同じ論理で行動できないのは致し方ないことであるが、このような緊急事態だからこそ協力してより良い野球界にしていこうという動きがあってしかるべきではないだろうか。

 現在の各団体の動きを見ていると、隣の様子を伺いながら、波風を立てないようにやり過ごしているようにどうしても見えてしまう。選手や関係者の安全がもちろん大切ではあるが、限られた期間しかプレーすることのできない選手に対して、少しでも良い環境で試合や日々の活動を行うことができるようにするためにはどうしたら良いかという議論がもっとなされるべきであろう。

 戦時下ではあらゆる大会が中止になる中でも、最後まで野球を続けようと努力した人たちが少なからず存在し、戦後の復興の中でもプロ野球の再開は驚くほど早いものだった。そういった先人たちが作ってきた歴史があるからこそ、今後に向けて野球界全体がより良いものになっていくような取り組みが少しでも増えていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月17日 掲載