テニスの全米オープン女子シングルスで、昨年の覇者・大坂なおみ(23)が3回戦で逆転負けを喫した。勝負の世界であるから仕方がないにせよ、負けっぷりが悪かった。叫び、ラケットをコートに叩きつけ、放り投げ、挙げ句に観客席にボールを打ち込んで警告まで受けたのである。試合後、彼女は涙ながらに謝罪、休養を示唆していたが……。

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 ネット上ではかなり批判を浴びている。

《大坂なおみはある程度メンタルコントロールできるようになるまでテニスやめた方がいいんじゃね。テニス全く知らんけどメンタル不調で客席にボール打ち込むってやばくない?よくあることなんか?ほんとに無理です。》

《大坂なおみ、元々ラケット壊すし荒っぽすぎて嫌いだったけど客席にボールぶちこむのはさすがに今までの擁護派も擁護諦めてて草じゃん…観客いたのか知らんけど観客入っててもやる可能性が出てきた以上二度とコートに入らんで欲しいね》

《大坂なおみさんには一度、テニスから離れてみたらいいわ。》

 客席にボールを打ち込むのは論外という声が多いようだ。もし、同じ様にプロ野球選手が客席に向かって硬球を打ち込んだら、事件化するかもしれない。

 もっとも、テニスの世界で観客席に怒りをぶつけるのは、それほど珍しいことではないようだ。スポーツ紙記者は言う。

伊達もやっていた

「18年には錦織圭に敗れたロジャー・フェデラーが、客席に向かってボールを打ち込んで警告を受けたこともありました。先日の東京五輪でも、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチが3位決定戦で破れ、ラケットを観客席に投げ込んだり、ネットポストに叩き付けて破壊しています。古くは伊達公子さんも、観客からの落胆の声に憤慨して、客席に向かって『シャラップ!』『ため息ばっかり!』などと叫んだことが話題になりました。また彼女は若いころには、客席の子どもの泣き声がうるさいと、ボールを打ち込んだこともありました」

 テニスだからといって、こうした行為が許されるわけではあるまい。元プロテニス選手の神和住純・法政大学教授に聞いてみた。

「グランドスラムで優勝するような選手は、非常にクールで、文句も言わず、マナーの良い選手が多いと思われがちですが、僕らの時代でしたらジョン・マッケンローのようなホットテンパー、カッとしやすいタイプもいるんです。大坂もどちらかというと、アップアンドダウンが激しく、ああした態度を取ってしまうことがある。女性テニスプレイヤーではセリーナ・ウィリアムズもそう。何十回も優勝しているような選手でも、大坂と対戦した時には酷い態度を取ってしまいましたから」

観客席打ち込みサービス

 18年、大坂が全米オープンで初優勝した時のことだ。史上最強の女子テニスプレーヤーともいわれるウィリアムズは決勝で大坂と対戦。ところが、客席からサインを送るコーチング行為で警告を受け、ラケット破壊でポイント失陥、主審への暴言でゲームペナルティまで受け、大坂に敗れた。

 一方、この大会で大坂は、試合前の緊張をほぐすため、コーチの勧めで観客席にボールを打ち込むサービスで会場を沸かせたりもしていた。まさか、今回も落ち着くために観客席に打ち込んだわけではあるまい。

「今回、大坂は18年の全米オープンの時のウィリアムズと同じ立場でした。結局、同じタイプなんでしょう。途中までいい試合をしていながら、イライラしたり、カッとなってやっちゃったわけです。よくあることとはいえ、全米2回、全豪2回と、グランドスラム4回も取っている女王にしては情けない態度だったと思います。『もう試合はやりたくない』なんて言っているけれども、勝てそうな試合だったのに負けたら『もうやりたくない』と言い出すのは、精神的に弱いというか、心の乱れを制御できなくなってしまうということでしょう。今回、敗れた相手、レイラ・フェルナンデスは、試合の時点ではまだ18歳で大坂よりも若いけれども、負けて元々という気持ちだったはずです。観客も挑戦者を応援したがりますからね。大坂にはアウェー感があったのかもしれません。そう考えると、彼女の場合、無観客のほうが合っているのかもしれません」

 プロテニスプレイヤーとして、無観客が合っているというのも……。

「それだけ精神的に弱いわけです。ちゃんとトレーニングもしていたのか、お腹も少し出ていましたし、動きも良くなかった。それだけにバーンアウト、燃え尽き症候群なのではないかと心配です。ハイティーンで優勝し、しばらくするとテニスが嫌になってしまう女性選手は結構いるんです。大坂も10代でデビューして、21歳で全米を制覇しています。いまや4大大会のチャンピオンには4回も輝いているし、お金だって十分にある。黒人差別問題の時には毅然とした状態が評価もされた。彼女がいつまでテニスを離れるのかはわかりませんが、これ以上テニスを続ける意味があるのかを考え、モチベーションをどうやって保つかが今後の課題になるでしょう」

 お手本となるような選手はいるのだろうか。

「例えば、史上最長の世界ランク1位記録を持つ女王シュテフィ・グラフは、試合中に観客から『結婚してくれ!』と言われて、『どのくらいお金持ってるの?』と返して会場を沸かせました。大坂もこれくらいの返しができるようになれば、大したものです」

デイリー新潮取材班

2021年9月8日 掲載