リオ五輪と東京五輪で柔道男子監督を務めた井上康生氏(43)が9月30日、オンラインで退任会見を行った。

“退任”といっても無能なわけではない。井上監督率いる柔道男子は、リオ五輪では全階級でメダルを獲得、東京五輪は史上最多の金5個、と立派な成績を残した。

「監督は2度の五輪を指揮することになっているので、退任は既定路線です」

 と説明する全国紙柔道担当記者によると、そもそも退任会見は行う必要がなかったのだが、今回は井上監督自身が“やりたい”と希望して実現したという。

 話はそれるが、柔道の競技人口は下降の一途を辿っており、それを憂う全柔連は、競技振興を目的とした「ブランディング戦略推進特別委員会」なるものを新設した。そして、男子強化副委員長への昇格が決定済みの井上氏は、同委員会の長も兼任することとなった。

「つまり、井上さんはトップ選手の強化のみならず、底辺の拡大をも任された」

 ゆえに会見は“ブランディング”の一環ともいえそうだが、どうもそういう打算だけではなかったらしい。

 井上氏の指導者としての武器――それは“情け”である。東京五輪で敗退した選手を思い彼が落涙した一件は本誌(「週刊新潮」)も報じている。

 そして、今回の会見では彼の記者団への“情け”が垣間見られた。

「“監督在任中の印象的な場面は?”と聞かれ、最初は就任直後の世界選手権を挙げていましたが、その後、“皆さんとの懇親会も”と。会見最後は音声のみで参加していた記者たちに“顔を見せて”と呼びかけてくれ、我々もジーンときました」

 パリ五輪での手腕も期待。

「週刊新潮」2021年10月14日号 掲載