ヤクルト、阪神との争いに敗れてセ・リーグ3位に沈んだ巨人。契約最終年の原辰徳監督と新たに3年契約を結び、覇権奪回に動き出した。この3年間を全うすれば、原監督の任期は合計18年となり、巨人の監督としては長嶋茂雄終身名誉監督の15年を上回り“歴代最長”となる。年数の長さと3年後には66歳という年齢を考えると、これが最後の契約更新になる可能性は高いという見方が多い。しかし、“有終の美”を飾るための道は決して平坦ではなさそうだ。【西尾典文/野球ライター】

35歳を超える先発の柱

 チームの大きな不安要素は主力の“高齢化”である。3年後となる2024年時点での主な選手の満年齢を並べてみると、以下のようになる。

<2024年の主な選手の満年齢>

【投手】山口俊(37歳)、菅野智之(35歳)、鍵谷陽平(34歳)、ビエイラ(32歳)、中川皓太(30歳)、高梨雄平(32歳)、メルセデス(30歳)、高橋優貴(27歳)、戸郷翔征(24歳)

【野手】ウィーラー(37歳)、坂本勇人(36歳)、梶谷隆幸(36歳)、丸佳浩(35歳)、中田翔(35歳)、小林誠司(35歳)、大城卓三(31歳)、松原聖弥(29歳)、吉川尚輝(29歳)、岡本和真(28歳)

 投手では、菅野と山口という先発の柱が35歳を超え、リリーフ陣も軒並みベテランとなる。今年、ブレイクした高橋と2年連続で先発として結果を残した戸郷の存在はプラスだが、それ以外の若手は今のところ停滞が目立つのが現状だ。

半数以上の5人が……

 一方の野手は、坂本や梶谷、丸、中田、小林などが、2024年には軒並み35歳を超える。主砲の岡本がまだまだ若いとはいえ、その下の年代となると、有力なレギュラー候補は今のところ見えてこない。

 3年経てば今は二軍の若手も主力に成長するはずだから問題ないという声も聞こえてきそうだ。だが、過去の3年間で主力になったのは、外国人選手とFAで加入した選手を除けば、高橋、戸郷、松原の3人くらいしか見当たらない。

 次のレギュラー候補としては、戸田懐生や秋広優人、中山礼都などに期待がかかるが、今年二軍で多くの登板数と打席数を与えられていた横川凱や堀岡隼人、ウレーニャ、平間隼人は揃って育成選手として再契約となる見込みだ。また、高校卒1年目にいきなり二軍で首位打者を獲得するなど、期待が大きかった山下航汰は、育成契約を断って退団するなど、ファームからの選手輩出の遅れは非常に気になるところだ。

 では、お家芸とも言えるフリーエージェント(以下FA)で補強すれば良いかというと、それも得策とは思えない。過去5年間で8人の選手をFAで獲得しているが、レギュラーとして十分な活躍を見せているのは丸だけであり、既に半数以上の5人がチームを去っている。

 もう一つの飛び道具的な補強である外国人選手についても、ここ数年での当たりはマギーとウィーラーという日本の他球団を経験した選手だけであり、今年も期待されたスモークとテームズが揃って、故障などで戦力とならなかったことを考えると、過剰な期待はかけづらいだろう。

薄れる“若手抜擢の機運”

 そうなってくると、やはり重要になるのは現有戦力の底上げと、積極的な若手の抜擢ではないか。原監督の第2次政権をみると、投手では内海哲也や西村健太朗、山口鉄也、越智大祐、沢村拓一、野手では坂本勇人や亀井善行、長野久義といった選手を抜擢して主力へと成長させている。

 他球団から獲得した杉内俊哉や小笠原道大、ラミレス、村田修一といった存在もあったが、それ以上に自前での戦力アップが大きかったからこそ、ここまでの成績を残せてきたことは確かである。

 ただ、第3次政権の過去3年間を見てみると、セ・リーグ連覇という結果は残したものの、第2次政権の時のような“若手抜擢の機運”が薄れているように感じている。

 原監督は退任後も何かしらの形で球団に残る可能性が高いと考えられるが、そういう意味でも、重要なのが中長期的な視点ではないだろうか。目先の結果にこだわってFAや外国人選手に頼る戦いを続けると、3年後にはチームの長期低迷が危惧される。スカウト体制を強化して、育成選手を多く獲得してファームの施設の充実を図るなど、積極的な投資も行っているだけに、それを最大限に生かして新たなチームを作り上げることが、残り3年間での原政権の最大テーマと言えるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

2021年12月5日 掲載