たった105球である。昨年覇者の打線を手玉にとり、完全試合を達成した千葉ロッテ・佐々木朗希投手(20)のピッチングは異次元だった。自然、「メジャー入り」へ期待も膨らむが、ならば海の向こうで二刀流を続ける先達に比べ、何が優れ、何が足りないのか。

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「球速もさることながら、コントロールが素晴らしかったですね」

 ロッテOBの野球評論家・里崎智也氏は佐々木の投球をそう絶賛する。

「完全試合で難しいのはヒットを打たれないこと、そしてフォアボールを出さないことです。シュート回転するボールはほとんど見られず、オリックス打線は佐々木のストレートにほぼタイミングが合っていませんでした」

5年目を終えた後にメジャー挑戦?

 今月10日、昨年のパ・リーグ王者のオリックス戦で先発した佐々木は三振の山を築く。まずは、13者連続奪三振でプロ野球記録を更新。さらに、一つの四死球も出さず、28年ぶりの完全試合を達成した。

 スポーツ紙デスクは、

「今シーズンはメジャーの極東スカウト陣が佐々木を追いかけており、この試合のインパクトは大谷以上に大きいでしょう。投手としては大谷より佐々木の方が上だと思います」

 佐々木自身もメジャー志向だとされているが、

「報道陣に対しそういうことは一切言いません。軽はずみな発言をすると見出しになることを分かっていて、ある意味で計算高い。順当にいけば大谷と同じように5年目を終えたくらいでポスティングによるメジャー挑戦となるのでは。千葉ロッテはメジャー行きに寛容な球団でもありますから」(同)

 遠い異国の地で将来ライバルとなるかもしれない佐々木と大谷の投球術の違いについて、

「佐々木投手はストレートでカウントを稼いでからフォークを決め球にする。大谷投手はいろんな変化球で打ち取るタイプです。両者ともすごい投手としか言いようがありません」

 と解説するのは、“昭和の怪物”野球評論家の江川卓氏である。

野茂タイプ

 江川氏は二人の球質の違いにも着目する。

「実は両者の球質を見ると、ボールの回転数は佐々木投手の方が多いのです。回転数の多いボールは打者の空振りが多くなる反面、バットに当たると飛距離が伸びる。かたや、大谷投手のように回転数の少ないボールだと、打った瞬間に打者が重たく感じ、飛距離が出にくい。例えるなら、佐々木投手はかつての野茂英雄投手。大谷投手は元巨人の槙原寛己投手に近いですね」

 フォークを多投する佐々木には怪我のリスクを指摘する声もある。

「確かにアメリカではフォークを投げると肘に衝撃を与えるという研究結果があります。そこで肘への衝撃を抑えるためにフォークほど指を広げて挟まないスプリット、あるいはよりストレートに近いツーシームがアメリカで用いられるようになりました」(同)

怪我のリスクは

 しかし、佐々木の場合は心配に及ばないと続ける。

「私や松坂(大輔)くんは高校時代から沢山投げた影響で肩を壊した。佐々木投手は高校時代に肩を酷使していないからこそ、いまフォークを多投しても即、肘に悪い影響を及ぼすとはいえません。ただし、年齢を重ねるごとにフォークを減らしながら、コントロールを重視するタイプに変わっていくかもしれません」

 ともあれ、メジャーを目指すにしろ、今季の課題はローテーションを守ることだ。先の里崎氏が言う。

「プロの先発投手はローテーションを守り、規定投球回数を投げることが最低条件になります。佐々木はその条件をまだ満たしていない。ホップ、ステップ、ジャンプのステップの段階で、二刀流で活躍する大谷とは比べようもありません」

「週刊新潮」2022年4月21日号 掲載