横山武史騎手といえば、弱冠23歳にして昨年GIで5勝をマークし、「ついに武豊を超える逸材の登場か」と世間を騒がせた天才ジョッキー。ところが、今年に入ってから急ブレーキがかかっている。

迷ったら武史から買っとけ

 父は横山典弘騎手、長兄は横山和生騎手、ちなみに祖父・横山富雄氏も騎手という、競馬一家に生まれ、早くからジョッキーになることを志してきた武史騎手。2017年にデビューするとたちまち注目を浴び、早くから頭角を現していたが、その才能が花開いたのは昨年だった。

 競馬記者の話。

「彼が主戦ジョッキーを務めるエフフォーリアで、皐月賞を2着に3馬身差をつけ鮮やかに制しました。次の日本ダービーでは福永祐一が乗ったシャフリヤールに僅かにかわされ2着となるも、秋の天皇賞では、あの無敗の3冠馬・コントレイルを負かして1着。このコンビの勢いは収まらず、暮れのグランプリレース、有馬記念まであっさりと制してしまったのですから、本当に衝撃的でした」

 まるで漫画のような快進撃である。その一方で、騎手の腕前もさることながら、単にエフフォーリアが強かっただけでは、という向きもあろうが、

「エフフォーリア以外でも、皐月賞2着のタイトルホルダーで菊花賞を鮮やかに逃げ切り勝ち、さらに、有馬記念の翌日に行われた2歳馬のGIホープフルステークスでも、巧みな手綱捌きでキラーアビリティを勝利に導き、計5勝としました。昨年末、競馬ファンの間では、“迷ったらとりあえず武史から買っとけば問題ない”というのが常識にさえなりつつありました」

高松宮記念、大阪杯、そして……

 ところが、その「常識」は、長くは続かなかった。

 武史ジョッキーに絶大な信頼を寄せていたファンたちが、盛大な溜息とともに馬券を引き裂くことになったのは、3月27日に中京競馬場で行われた高松宮記念(芝1200メートル)だった。

 先の記者が続ける。

「彼が騎乗したレシステンシアは、この距離ではこれまで2着を外したことがないという、現役最強のスプリンター。ここは問題なく勝つだろうというのが大筋の見方でした」

 ゲートが開くと一気に逃げの手を打ったものの、最後の直線で失速、まさかの6着。

「それでも、“次こそは間違いないだろう”と、ファンの多くは思っていました」

 そう、「次」とは、あのエフフォーリアが出走する、大阪杯(4月3日、阪神競馬場)のこと。

「名コンビの2022年の初陣ということで、誰もが期待に胸を膨らませていましたね。圧勝するか、負けても3着まではくるだろうと」

 ところが、これまでのレ―スで見せてきた最後のキレが全くなく、9着と大惨敗。さらにダメ押しでその翌週、3歳牝馬のクラシックレース初戦となる桜花賞でも、騎乗した1番人気・ナミュールが10着に沈んだ。ファンの間で広まっていた“迷ったら武史”の常識は、ここで脆くも崩れ去った。

社台ファーム代表が見る横山武史

 横山武史ジョッキーは果たして、本当に武豊を超える天才なのか、そして、不振の原因とは――。横山家とも親交があり、日本競馬界の中核を担うホースマンで、大手生産牧場・社台ファームの代表を務める吉田照哉氏(74)に訊ねた。ちなみに今年の桜花賞馬・スターズオンアースは、社台ファームの生産馬である。

「競馬なんてそんなもんだよ。そんなに毎回毎回うまくいくものじゃない。神様じゃないんだから、毎回勝てるわけないんだから」

 と一蹴した上で、

「スランプに陥っているように見えるけど、武史くんは、単に去年の出来がよすぎただけですよ。枠順もあるし、何より、馬のコンディションが大きい。(桜花賞で大敗した)ナミュールは実際、パドックでもそんなによく見えなかった。それでも、前走の着順なんかで馬券は売れるから、1番人気になるけど、そんなに毎回毎回、馬がベストの状態でレースに臨めるわけじゃないんですから」

 武史ジョッキーについては、

「小さい頃から知ってるけど、ジョッキーのセンスのかたまりみたいな子でね。お父さんもだけど、才能あるなと思います。あと、体格も小柄で、恵まれてるね。しかも、それだけじゃなく、明るくて爽やかで、屈託のない性格。伸び伸び真っ直ぐ育った、いかにも現代っ子だなという感じ。間違いなく、これ(馬界)を背負っていく一人でしょう」

デイリー新潮編集部