「罪滅ぼしの対象をはっきり形作る必要があり…」

 江原道平昌・韓国自生植物園内に、「慰安婦少女像の前にひざまずいて贖罪する安倍晋三首相」を表現した造形物を設置。8月10日から公開されるというニュースが流れ、議論を呼んでいる。7月上旬には、慰安婦おばあさんこと李容洙(イ・ヨンス)さんが、「日本の中心に少女像を立てて行き来する人たちみんなが見られるようにしてほしい」と発言。つい最近まで、正義記憶連帯の各種疑惑を暴露してきた張本人の変節もまた訝しいものだが……。ともあれ図らずも、「慰安婦像新設」の空気が醸成されてきているのは偽らざる事実だ。

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 7月26日、韓国江原道平昌に位置する韓国自生植物園は、8月10日に五台山の麓で「永遠の贖罪」と題した造形物を一般公開すると発表した。

 彫像の名は反日小説『アリラン』で有名な作家・趙廷来(チョ・ジョンレ)が名付けた。このニュースを25日に韓国で初めて紹介した京郷新聞は「この造形物は、座っている1・5mの慰安婦少女像の前で、1・8mの安倍首相の銅像がひざまずいて謝罪をしている姿だ」と報じた。

 造形物を私費で造成した韓国自生植物園の金昌烈(キム・チャンリョル)園長は、「罪滅ぼしの対象をはっきり形作る必要があり、少女像が向き合うものは安倍に象徴させて造成した」と述べている。

 それ以降、韓国メディアは、

《「少女像にひざまずいた安倍氏」造形物に賛否論争》(ソウル経済)

《「永遠の贖罪」少女像にひざまずく安倍氏「私費で助成」》(ソウル新聞)

《少女像の前で罪を償う安倍像をどう思いますか》(朝鮮日報)

《ひざまずいた安倍像を見る不便さ》(韓国日報)

 などと相次いで報道している。

「除幕式はキャンセル。行事自体が開かれない」と回答したが…

 関連記事の見出しすべてに「安倍(首相)」が入っており、 韓国のネチズンの間では、この造形物について「韓日葛藤をもたらすので行き過ぎだ」という反対の立場と「贖罪と反省は当然だ」という賛成の立場があり、賛否両論を繰り広げている。

 造形物を私費で造成した張本人である金園長はデイリー新潮の取材に、日本のメディアであることを確認したうえで、「8月10日の除幕式はキャンセルされた。行事自体が開かれないようだ」と回答。

 そして、「純粋に慰安婦被害者たちに贖罪したい一心で建設した少女像が、特定勢力によって政治的に解釈され、歪曲されていて心が痛い」と心情を吐露。さらに「韓国メディアにもキャンセルの事実を知らせた」と付け加えている。除幕式が開かれない理由を聞くと、「それは言えない」と言うばかり。金園長が伝えた行事取り消しのニュースは現在、日本では毎日新聞が報じているものの、韓国メディアでは確認されていない。

 要するに、金園長の対応は、日韓マスコミで全く異なっているわけだ。京郷新聞には男性の造形物を置いて「安倍首相」と明示したが、共同通信には「安倍首相を特定したのではなく、謝罪の立場にあるすべての男性たちを象徴したもの。もしかしたら少女の父親かもしれない」などと別の解釈を口にしている。

 依頼を受けた作家も計画した園長も「今、この時期」に「この計画」を実現した場合の影響を重々踏まえているはずだ。だから、日本メディアと韓国メディアへの回答を使い分けているのだろう。

慰安婦被害者イ・ヨンスさんの変節の理由とは

 他方、5月7日に緊急記者会見を開いた慰安婦被害者・李さん。彼女は「正義連に騙された」とし、学生達に憎悪を教えている反日デモ「水曜集会」を今後は支持しない、国民からの義捐金を慰安婦のおばあさんたちに使わず、正義連自ら流用していると暴露。そして、正義連の活動をリードしてきた尹美香(ユン・ミヒャン元挺対協代表、現・共に民主党国会議員)について、「私欲のために国会議員をしてはならない」と主張したのだった。

 1990年代初めから約30年間に亘って、慰安婦被害者救済活動を繰り広げてきた李さんの発言は、国民の一代関心事となり、市民団体による正義連に対する告発を引き出した。

 正義連は現在、検察の捜査を受けている。 疑惑が浮上すると尹美香議員は「おばあさんの記憶が変わり、敏感な問題に触れた」と直ちに反論し、李さんがこれに反論して攻防を続けた。尹美香は「水曜集会」を指導し、海外に「慰安婦少女像」の建設を推進してきた代表的な人物だ。

 そんな李さんが変節したのは、7月5日のことだった。大邱(テグ)南区を訪れ、正義連の現理事長など、元慰安婦救済運動団体の活動家らと面会。「日本の中心に少女像を立てて行き来する人たちみんなが見られるようにしてほしい。少女像を必ず守ってほしい」と明かしている。

 李さんは「水曜集会」に対しても、「水曜デモを支持するが、方式に変化がなければならない。被害者の生存の有無にかかわらず、団体がある地域に行って水曜デモをしよう」と、主張を180度変えた。

 また、元従軍慰安婦の被害を含めた歴史教育についても言及。曰く、「地域別の慰安婦の歴史教育館の活性化と建設、連携、交流をしなければならない」――。

 イさんが直接疑惑を提起して攻撃してきた尹美香議員と同僚に会って、「水曜デモ」と「少女像建設」を支持する発言をした理由はまだ判然としていない。

一国の現職首相を揶揄する像が果たして芸術なのだろうか

「水曜集会」と「慰安婦少女像建設」を推進する側は、終始一貫して日本の戦争犯罪に対する心のこもった謝罪と反省そして賠償を要求してきた。安倍首相は朴槿恵前大統領と2015年に締結した「慰安婦問題日韓合意」で、駐韓日本大使館の少女像の移転、第3国の慰安婦記念碑、「性奴隷」という用語の使用中止などで合意。書面上で、慰安婦被害者に哀惜の念を表現した。

 このような合意を事実上破棄したのは、他ならぬ文在寅政権であり、したがって、謝罪を受けなければならないのは、韓国側ではなく日本側だ。韓国側は新たに慰安婦像を建設し続け、これを擁護する発言を続けている。

 新たな慰安婦像は安倍首相をモチーフに当初から計画をしていたはずである。一国の現職首相を揶揄する像が果たして芸術なのだろうか。こうした行動は韓国に対する日本人の心に「永遠の贖罪」ではなく「永遠の怒り」を刻むことになりかねない。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月28日 掲載