9月1日、米国防総省(ペンタゴン)が中国の軍事力についてのレポートを発表した。それによると、中国海軍は、130隻以上の水上戦闘艦を含む約350隻の艦艇を保有。これは米海軍の約293隻を上回っている。さらに、現在200個程度の核弾頭保有数は、10年後には倍以上に増えるというのだ。

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 レポートは、2030年までに、核弾頭ミサイルを搭載する原子力潜水艦は、094型と現在開発中の096型で計8隻になる可能性があると指摘している。094型原子力潜水艦は、最大射程7500キロの弾道ミサイル(SLBM)を12発、096型原子力潜水艦型は24発搭載可能という。実現すれば、艦艇数で米国を上回り、世界最大の海軍を持つことになるという。

 さらに、射程500〜5500キロの地上発射弾道ミサイル(GLBM)と地上発射巡航ミサイル(GLCM)を1250発以上保有しているとも。造船、地上配備式の通常型弾道ミサイルや巡行ミサイル、世界最大規模の先端的な長射程の統合防空システムといった複数の分野では、中国はすでに米国と同等か、米国を凌駕しているとの記述もある。

 2019年の中国の国防予算は1740億ドル(約18兆5000億円)。もっとも、研究開発費や外国兵器の調達費用は含まれていないというから、実際は2000億ドルを大幅に上回っている可能性がある。建国100年となる2049年までに、アメリカ軍に匹敵もしくは超えるという目標を打ち出しており、それが現実味を帯びてきたという。

核による軍拡競争

「中国の核弾頭ミサイルが10年で倍以上になるという報告ですが、なんともタイミングの悪い話ですね」

 と語るのは、元陸上自衛官で拓殖大学名誉教授の茅原郁生氏。

「米ロ間でINF条約(中距離核戦力全廃条約)を結んでいました。しかしロシアが条約を無視して新型ミサイル発射実験を行ったので、米国が条約を破棄、昨年8月に失効しています。また、来年2月には、米ロ間の新戦略核兵器削減条約(新START)の期限が切れます。新たに条約が延長されればいいのですが、中国が核弾頭保有数を倍増させることで、核による新たな軍拡競争を招く恐れが出てきました」

 INF条約は、射程500〜5500キロの地上配備型ミサイルの開発や配備を禁じたもの。中国が同ミサイルを1250発以上保有するとなれば、米ロとも核戦力増強を進める可能性が出てくるというのである。

 日本にとって、中国の軍事力で最も脅威となるのはなにか。

「やはり、一番の脅威は中国の核弾頭ミサイルですね。中国は8月26日、中国本土から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射しました。そのため、3日後の29日、河野太郎防衛相がグアムでエスパー米国防長官と会見しています。河野防衛相は、日米安保が確実に機能するか確認に行ったのです」(同)

 中国の核ミサイルに対して、日本はどうすべきか。

「中国は、中距離弾道ミサイルを4発発射しました。飽和攻撃(相手の対処能力を上回る攻撃)ですね。1発、2発であれば、自衛隊もイージス艦で対処できますが、数十発も来ると、もはや防ぎようがありません」(同)

核保有の議論

 日本は米国を頼るしかない。

「日本は唯一の被爆国ということで、非核三原則を貫いています。しかし、それだけでは、核廃絶に向けて大きな貢献はできません。もう、非核三原則だけでは通用しない時代になってきたと思います。中国だけでなく、北朝鮮の核の脅威もあります。それらに対処するには、核保有の議論をすることが必要かもしれません。自民党の中川昭一代議士が、日本では核の議論もできないので非核四原則だと発言していました」(同)

 中川代議士は2009年4月、北朝鮮によるミサイル発射実験を受けて「純軍事的に、核に対抗できるのは核だというのは、世界の常識」と発言。一部で問題になった。

「日本で核を保有することは不可能でしょう。本当に核を保有するのではなく、核保有の議論をするのです。また核開発のための研究もする。日本もいざという時は、核を保有できるということを世界にアピールする。それだけでも抑止力になります。日本はプルトニウムの有数の保有国ですから、いつでも核を作れる環境にあります。だから核保有の議論をすることは説得力があります。いつまでも非核三原則に固辞していると世界から舐められるだけですよ」(同)

 さらに、中国海軍も脅威という。世界一の規模にまで海軍の規模を拡大したのは、尖閣諸島を奪うのが目的だという。実際、中国海警局の巡視船はこれまでに何度も尖閣諸島の領海に侵入しているが、その際、中国海軍のミサイル艇が連動して台湾付近に展開していることが判明している。

 ワシントンにあるシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」は今年の5月、「龍対日:日本のシーパワーに対する中国の見方」という論文を発表。そこで、過去10年間で中国海軍は艦隊の規模、総トン数、火力などで海上自衛隊を凌駕しているとの見通しのもと、尖閣諸島周辺での紛争によって中国が数日のうちに尖閣諸島を奪取するシナリオを描いていると指摘した。

「日本のシーレーン(有事に際して確保すべき海上交通路)も警戒しなければいけません。その防衛を強化する必要があります。中東から日本へ石油を運ぶには、マラッカ海峡を通って、南シナ海をまっすぐ直線で突っ切って日本に来るのが、一番船舶費用が安い。そこで中国海軍が妨害工作を行うとやっかいなことになります。中国は艦艇ではなく、漁船を使って妨害する可能性もありますからね」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年9月9日 掲載