正義連の会計不正疑惑を捜査する検察が、元理事長の国会議員を起訴した

 検察は9月14日、正義連の会計不正疑惑を捜査してから4ヵ月ぶりに、元理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)「ともに民主党」議員を起訴した。正義連の金を個人的に使用し、補助金を不正に受け取った容疑について裁判で白黒ハッキリつけることになるわけだ。その一方で、日韓関係史が専門の評論家・李東原氏は、「自分の金銭的利益と政治的野望のため、従軍慰安婦被害者を利用し、歴史を捏造あるいは歪曲して日韓関係を破綻に導いた罪をも背負っている」と喝破する。

 世界史的に見ると、19世紀は西欧列強を中心に弱肉強食という、力の優劣によって強大国が弱小国を支配する帝国主義時代だった。

 帝国主義(Imperialism)とは、美しく言えば、一国の政治、経済及び文化的支配力を他国に拡大しようとする思想と、そのような思想に基づいて行われる政策であるといえる。

 そして、やや荒っぽく表現すると、資本主義経済を土台とする西欧列強がアジア、アフリカなどで武力で植民地を拡張し、資源供給先および販売市場の役割を分担させた体制を意味する。

 社会進化論、人種差別、優生学、近代万能主義などの思想が帝国主義とともに広まった。

 帝国主義が蔓延する国家では必然的に不平等が助長され、主に本国人を中心にこのような不平等を強く擁護する考え方が流行する。

 そして、こうした思考は帝国主義がもたらすあらゆる問題の始発点となる。

 資源を詐取するために植民地人の奴隷化がなされ、形式的な法治主義がはびこり、非人間的な待遇と収奪が容認される。

 また、商品市場と経済ブロックとして利用するために、本国は植民地経済を奇形的な構造にし、新しい領土と人口を服属させる過程で統治権力が肥大化し、独裁や軍国主義をも発生する。

 結果的に帝国主義の発達は、人間の基本権を抑圧する弊害をもたらす。

 イギリスは18世紀末からアメリカ、アフリカ、インド、中国及び東南アジア、オセアニアに植民地を建設し、日の沈まない帝国を建設した。

 19世紀末からはフランス、ドイツ、米国、日本が植民地建設に加わり、いわゆる新帝国主義時代が開かれた。

被害者が満足するまでやらなければならないとしたら

 フランスは1830年にアルジェリアを占領し、1863年にはカンボジアを保護国とした。その後1884〜1885年に「清との戦争」に勝利し、インドシナにフランス植民地を建てた。

 プロイセンは1870年からイギリスと覇権を争うビスマルク率いる強力な帝国となった。こうして両国は世界の覇権を争う二大勢力となり、ドイツは1884年アフリカのカメルーンを植民地化した。

 英国を先頭にした近代ヨーロッパの帝国主義国家は、東アジアに西欧中心の国際秩序を強要した。西欧列強が作った国際秩序は、「万国公法の秩序」と呼ばれた。

 この秩序は、19世紀半ば以降、西欧が非西欧地域を侵略したことで世界秩序となり、結局東アジアにまで影響を及ぼすようになった。

 近代ヨーロッパの帝国主義国家は、世界を文明国、反未開国、未開国の3つに区分した。

 文明国は西洋のキリスト教国家であり、主権国家である文明国家間の関係は自主・自立の対等関係とみなした。

 しかし、西洋はトルコ、ペルシャ、中国、日本などの反未開国家に対しては法律があるとしても文明国の法とみなさず、領事裁判権のような不平等関係を強要した。

 日本が幕末の1858年、米国をはじめとする西欧列強と締結した修好通商条約が不平等条約だった背景には、このような西欧帝国主義者のアジア蔑視観があった。

 帝国主義時代が幕を閉じた後、帝国主義国家の中で植民支配に謝罪したり賠償したケースは非常に稀である。

 英国の場合、彼らが支配したすべての国家に謝罪し賠償をするには、想像すらできない天文学的な費用がかかるだろう。

 それも韓国政府や慰安婦支援団体「正義連」が主張するように、被害者が満足するまでやらなければならないとしたら、恐らく英国はこれ以上地球上に存在できないかもしれない。

韓国人がしばしば比較の対象とするのがドイツ

 韓国人が日本の植民地支配に対する謝罪と賠償を語る際、しばしば比較の対象とするのがドイツだ。

 ドイツは1884年から1915年までナミビアを統治し、7万5000人余りを虐殺した。

 ドイツ政府は2006年になって謝罪の方針を明らかにしたが、まだ公式な謝罪はしていない。

 さらに、ドイツは「両国共同宣言に盛り込まれる謝罪はドイツの法的賠償根拠として使用されない」とし、賠償の可能性を排除した。

 我々が知っているドイツの謝罪と反省、そして賠償は植民支配そのものではなく、ユダヤ人虐殺などの反人道的行為に対してのみ行われた。

 世界的な影響力が大きいユダヤ人と戦争被害国の周辺国に限られた謝罪と反省、そして賠償にすぎなかったのだ。

 周知の通り、日本は1965年の韓日基本条約締結当時、少なからぬ金額を賠償した。

 日本が支払った8億ドルは、当時日本全体の外貨準備高の18億ドルの60%に達する大きな金額だった。

 また、過去の植民支配に対しても謝罪と反省を表明してきたことは、むしろ国際的にも珍しい例である。

 安倍晋三前首相まで歴代日本政府の公式立場そのものを否定したことがなく、むしろ歴代内閣の立場が継承するという点を何度も明らかにしている。

 にもかかわらず、韓国政府と一般市民たちは、日本は謝罪したことがないと言って、日本に対する敵愾心と憎悪心を抱いている。

 日本帝国主義の朝鮮に対する植民政策は、中国や東南アジア諸国などとは根本的に異なった。

 中国や東南アジア諸国は占領に焦点が当てられていたとすれば、朝鮮の場合は「日韓併合」という言葉からも分かるように、日本と朝鮮が一国となる国家間の統合であった。

 もちろん内地の日本人と外地の朝鮮人との差別はあったが。そのうえ、ドイツや英国など欧州の帝国主義国家がアフリカをはじめとする植民帝国で行った数十万人単位の虐殺は見当たらない。

少女像を全国津々浦々に設置し、強制連行を事実化

 ベルギーのレオポルド2世は約20年間、コンゴで300万人から最大1000万人のコンゴ人を虐殺した。

 1830年から132年間、アルジェリアを支配したフランスは植民地支配下で30万〜150万人のアルジェリア人の命を奪った。

 繰り返しになるが、ドイツは1884年から1915年までナミビアを統治し、7万5000人余りを虐殺した。彼らの大半は、いまだ被植民地に対する謝罪と補償をしていない。

 日本が英国やドイツのような西欧帝国主義国家に比べて良心的だと言いたいわけではない。

 朝鮮が望んだにせよ、日本が武力で強制したにせよ、植民主義自体が他国の人民の自主権を侵害したという点では非難されて当然だ。

 しかし、日本の朝鮮植民政策が西欧のそれとは全く方向が違ったということに韓国人の考えは及ばない。

 日帝は中国などでは大規模な虐殺を行ったが、朝鮮半島の人民に対しては「2等国民」として差別をしたとはいえ、大量虐殺を行ったことが極めてまれだったということは認めなければならないだろう。

 しかし、挺対協(正義連の前身)は従軍慰安婦20〜30万人説を流し、また軍隊の退却時にはこれらを無惨に殺害したという嘘や誇張された事実を流布してきた。

 そのうえ、少女像を全国津々浦々に設置し、幼い少女たちを強制的に連れて行ったことを事実化した。

 しかし断言するが、そのようなことはなかったか、あったとしても極めて例外的だった。しかも、これを証明できるのは、数人の慰安婦被害者の証言だけだ。

 ここに、日本のいわゆる良心的知識人と呼ばれた人々が、挺身隊問題などをイシュー化し、日本の反省を促した。

挺対協の活動に異議を唱えたりすれば

 正義連は、初期に彼らと連帯したが、ある時から彼らを排除し、さらに非難して追い出した。自分たちで挺身隊問題を独占したかったのだ。

 それだけではない。彼らはアジア女性基金の金を受け取った慰安婦のお婆さんたちに「自発的娼婦」と悪口を浴びせ、自分たちと立場を異にする彼女らに露骨的な差別と迫害をしてきた。

 しかし、韓国のどのマスコミも、しかも政権までもが正義連のそのような行動に対して異議を提起することはなかった。

 1990年以降、慰安婦問題が韓国社会で大きな関心を得るようになり、挺対協は権力化した。

 特に尹美香(ユン・ミヒャン)が代表になった2006年以降は、挺隊協を中心とする少数の関係者の考えが慰安婦問題の方向性を決定付け、日韓関係を牛耳った。

 挺対協の活動に異議を唱えたりすれば、学者は学問の場ではなく法廷で「民族に対する謝罪」をさせられるほど、彼らは権力化した。

 挺対協は長年、自分たちだけが正義だという正義の過剰や道徳的優越に陶酔し、自分たちだけの不可侵聖域を作ってきた。

 そして、巨額の国民基金と国家の支援金を従軍慰安婦支援活動以外の場所に私的に流用してきた。

 これに対して検察は9月14日、正義連の会計不正疑惑を捜査してから4ヵ月ぶりに、正義連元理事長の尹美香・ともに民主党議員を起訴し、裁判にかけた。

 正義連の金約1億ウォン(1ウォン=0・09円)を個人的に使用し、3億ウォン以上の補助金を不正に受け取った容疑をはじめ、検察は計6つの容疑で尹美香議員を起訴した。

 尹美香の容疑は、今後の裁判を通じて裁かれ、もし容疑が事実と認められれば、罪の代価を払わなければならない。

従軍慰安婦被害者を利用し、歴史を捏造あるいは歪曲し

 しかし、私が許せない尹美香の最大の罪は、公金横領でも背任行為でもない。

 尹美香は自分の金銭的利益と政治的野望のため、従軍慰安婦被害者を利用し、歴史を捏造あるいは歪曲して日韓関係を破綻に導いたのだ。

 そして従軍慰安婦問題を女性の人権の問題がなく民の受難として”過大包装”し、韓国人の日本に対する憎悪と敵愾心を助長して拡大させた罪も決して軽くはない。

 私は尹美香に法的責任を問うこと以上に道義的責任をも問うべきだと思う。

 尹美香個人の利益のために、あまりにも多くの日韓の善良な市民が、精神的・物質的被害を受けなければならなかった。私はそれを許すことはできない。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月23日 掲載