北の謝罪メッセージに「すべてを理解できる」と表明

 北朝鮮軍が、韓国海洋水産部公務員の李氏(47)を殺害した事件に関連し、文在寅大統領は、北朝鮮に責任を問い、非難をすることはなく、むしろ、金正恩国務委員長の謝罪に「非常に特別な意味があると受け止めた」と感謝を述べた。日本からの謝罪には、無視を決め込んできたのとは真逆の態度が際立っている。

 韓国国防部が「蛮行」といい、野党や主要メディアがことごとく事実上の「犯罪」であり、「テロ」だと定義づけた非人道的事件。

 韓国の最高指導者であり、また軍の統帥権者でもある大統領が、事件の真相究明と責任者の処罰には沈黙し、謝罪メッセージにのみ固執した。

 文大統領は就任以降、慰安婦合意の破棄を主張し、日本に謝罪を要求するなど、反日基調を維持してきた。

 過去数回にわたった日本の謝罪や談話も、謝罪の真正性を取り沙汰して、日本を敵視してきた。

 一方、自国民が北朝鮮軍に銃殺され、遺体が毀損された事件では北朝鮮の責任を問うどころか、謝罪メッセージに「すべてを理解できる」と表明する。

 韓国では、終始一貫して北朝鮮に屈従的な態度を見せる文大統領を批判する世論が日々高まっており、また「韓国はこれ以上日本に謝罪を主張するべきではない」という声も上がっている。

《韓国のネット市民「北朝鮮の謝罪に感謝し、日本の数回の謝罪に悪態をつく現政権」と一喝》

 29日、韓国のネット市民はオンラインコミュニティで、1965年の日韓国交正常化以降、▲椎名悦三郎外相(1965)、▲裕仁天皇(1984)、▲明仁天皇(1990)、▲河野洋平官房長官談話(1993)、▲村山富市首相談話(1995)、▲日韓共同宣言(1995)、▲小泉純一郎首相の慰安婦謝罪(2001)、▲安倍晋三首相の慰安婦謝罪(2015)など、日本政府がこれまで何度か植民地統治に関して韓国に謝罪したメッセージを共有した。

心からの謝罪を受けなければならないから

 さらに文大統領が事件発生から6日目の28日になって公務員銃撃事件に言及し、金正恩の謝罪を「格別な意味」と感謝したことを指摘して、「日本に対する謝罪要求は恥ずかしい」、「心からの謝罪は北朝鮮だけができるのか」、「数十年にわたって謝罪メッセージを出した日本をバカにするのか」と憤る姿勢が見られた。

 姜天錫(カン・チョンソク)朝鮮日報論説顧問は26日付のコラムで、小泉首相が2004年、北朝鮮拉致被害者問題解決のために北朝鮮を訪問したことを取り上げ、自国民を守る指導者のリーダーシップを称えた。

 その一方で、積極的な自国民保護に取り組むことをせず、北朝鮮との関係改善に没頭する文大統領に苦言を呈した。

 文在寅大統領は日本に対しては「過去に対する謝罪の真正性」に言及し、日本の謝罪を無視してきた。

 それだけでなく、就任以来、日本に対して執拗な攻撃を続け、反日を超える克日を主張して、日韓関係を悪循環の輪に追い込んだ。

 2017年6月の当選直後に米国の主要日刊紙である“ワシントンポスト”のインタビューで、2015年12月に締結された慰安婦合意に関連し、「韓国人は情緒的に受け入れられない。

 慰安婦問題の解決の核心は、日本が法的責任を認めて公式に謝罪すること」だと話し、日本にさらなる謝罪を要求した。

 そして、文大統領は慰安婦合意に基づく“和解・癒し財団”を解体。

 その理由について、心からの謝罪を受けなければならないから、としたのだ。

 韓国大法院の徴用工賠償判決に端を発する日韓関係の悪化も文大統領は日本にその責任を転嫁し、「謝罪問題」と関連付けた。

反日を超える克日と抗日を主張する文大統領

 2019年8月15日の光復節の祝辞では、日本の対韓輸出規制措置に関連して「日本政府がどのように弁明しようが、過去の歴史を経済問題と結びつけたのは明らかで、これを否定したのは正直ではない」「ドイツの過去の歴史反省でヨーロッパ諸国と和解したことを日本は深く刻まなければならない」と、日本に心からの謝罪を要求した。

 1965年の日韓国交正常化で、日本は当時の外貨準備高の約30%にのぼる5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)を供与し、植民地支配に対する損害賠償が「最終的かつ不可逆的に解決した」と当時の韓国政府と合意した。

 それにもかかわらず、韓国の進歩陣営は、竹島領有権、教科書歪曲問題、慰安婦問題などを喧伝し、合意に批判的な国際世論を煽った。

 その度に、日本の指導者は数回にわたって謝罪を述べたが、これらの謝罪を韓国側は「抽象的」で「心からの反省の意がない」と言って受け入れず、日韓両国は平行線を辿った。

 特に反日を超える克日と抗日を主張する文大統領はこのような世論を戦略的に使い、韓国内で自身の支持率を高めるために利用してきた。

 金正恩委員長は去る24日、労働党中央委員会統一戦線部名義で青瓦台(大統領府)に通知文を送り、「文在寅大統領と南の同胞たちに大きな失望感を与えたことを大変申し訳なく思う」と異例の謝罪を行なったが、文大統領が「格別な謝罪」と受け止めたこのメッセージは、全体の半分にも満たない。

「日本に対する謝罪要請」は政治的な扇動のスローガン

 北朝鮮の金正恩は韓国側が要請した共同調査を「領海を侵犯した」と断った。

 無残にも殺害した後、公務員の遺体を遺族に渡す最低限の道徳的な義務すら果たさず、「無断侵犯行為」を理由に、火をつけるという強硬な対応をとった。

 それにもかかわらず、韓国政府当局は事件の真相調査のため、国連あるいは国際人権機関などに協力を要請する動きを見せていない。

 それどころか、政権与党の共に民主党と与党関係者は、金正恩の謝罪を「卓越している」「十分だ」「啓蒙君主のメッセージ」などと擁護する始末である。

 韓国人の多くは、大統領と政権与党の従北的な姿に怒りを覚えている。

 1965年の“国交正常化の合意”と2015年の“慰安婦合意”などを妥結した過去は「謝罪の真正性」を云々し「親日派を炙り出す」として、真相調査究明委員会を組成した文大統領が、北朝鮮の自国民テロには沈黙している。

 文在寅の二面性に、韓国国民は「日本に対する謝罪要請」は結局のところ、政治的な扇動のスローガンに過ぎなかったと悟る様子を見せている。

チャン・ヘウォン記者

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月1日 掲載