「軍の戦力は、北朝鮮の脅威と国家安全保障の観点から決めるべき」と嘆きも

 韓国防衛事業庁は、導入を計画していたF35Aを一部F35Bに変え、次期戦闘機KFXを配備する計画を青瓦台(韓国大統領府)に報告した。今年6月、「軽空母輸送艦に搭載する戦闘機を確保する」と青瓦台に伝えており、具体化した内容とみられる。

 日本が海上自衛隊に航空母艦を配備することを決めると、韓国軍は文在寅大統領が掲げた軽空母の導入を決めて計画を見直した。

 が、保守系野党は「軍の戦力は、北朝鮮の脅威と国家安全保障の観点から決めるべきであり、文大統領が韓国空軍の戦闘力低下を招いた」と批判している。

 2017年、北朝鮮がミサイルを十数回、発射したことが確認されるなど朝鮮半島の緊張が高まっていた。

 米国が自国民を対象に脱出訓練を実施したという噂が流れ、日本は在韓邦人の連絡システムを導入して、緊急連絡訓練を実施した。

 訓練対象は、4〜5万人とされる在韓日本人のわずか3%で、いざというときに果たして有効に機能するのか疑問しかないが、多くの在韓日系企業が安全マニュアルを見直す契機となった。

 日本や米国にとって朝鮮半島のトラブルは対岸の火事だが、韓国と北朝鮮は法律上、休戦状態である。

 韓国軍は航続距離や武装などを勘案してF35Aを60機配備する計画だった。

 しかし、日本が航空母艦の配備を決めると、文在寅大統領が掲げた軽空母を導入し、F35Aを40機に減らして20機をF35Bに変更することにした。

 F35Aは長い滑走路を必要とするが、F35Bは垂直離着陸機能があり、軽空母に搭載できる。

 反面、B型はエンジンが複雑で、戦闘行動半径はA型の75%水準にとどまり、また、爆弾倉が狭く、小型爆弾しか搭載できない。

中韓北は事あるごとに日本が侵攻を計画していると発言するが

 機種変更で生じる戦力の空白を韓国製KFXで補強する計画だが、KFXは来年上半期に試作機を完成させて5年間の試験運用を経たあと、2026年の戦力化を目論んでいる。

 軍用機先進国の米国ですら新型戦闘機の開発は長期化する。

 さらに、F35Aは第5世代ステルス戦闘機だが、KFXは4・5世代戦闘機で代替にはならないという声が軍内部から上がっている。

 日本は尖閣諸島で活発化する中国の軍事行動に対応するため、航空母艦の導入を決めた。

 旧ソ連や北朝鮮の軍事行動に備えて、北海道や東北、日本海沿岸などに航空自衛隊の基地を配備したため、南西諸島で自衛隊が利用できる滑走路は民間と共用する那覇空港しかない。

 有事の際に那覇空港が攻撃を受けると空自機が発着できなくなる懸念から、航空母艦の配備を決定した。

 北朝鮮の主要な軍事基地は、F35Aをきちんと運用できれば韓国の空軍基地から直接攻撃できる範囲にあり、航空母艦は必ずしも必要としない。

 韓国と北朝鮮、中国は、事あるごとに日本が侵攻を計画していると発言するなど日本を仮想敵国と称するが、自衛隊は専守防衛に特化している。

 自衛隊は、本土から北朝鮮を攻撃する能力を持たず、そもそも日本が韓国や北朝鮮に侵攻しても得られるものはなにもない。攻撃を想定すること自体、無意味なのだ。

 文在寅大統領は、原子力潜水艦の導入も掲げている。韓国軍が自衛隊より優位だと喧伝できるある意味唯一の装備である。

 原子力潜水艦は、理論上は燃料供給が不要で、ディーゼル潜水艦より長い時間潜行ができ、またディーゼル潜水艦の3倍以上の速度で移動できる。

 フランスやドイツの技術支援を受けられれば、6〜7年で実現できるとみられているが、燃料の確保が難しい。

韓国海軍自慢の最新鋭イージス艦は北のミサイルを見失う

 9月半ばに金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長が訪米して、原潜に必要な核燃料を購入したいと米国に打診した。

 しかし米国は、本音はともかく、核不拡散の原則を事由に断った。

 米国や旧ソ連など、長い距離を移動する海軍は原潜のメリットが大きいだろうが、韓国には必要ないという見方が有力だ。

 ディーゼル潜水艦は、エンジンを停止して隠密に移動できるが、原潜は原子炉を止めることができず、動力装置とタービンの減速装置から出る音を消すことができない。

 非核三原則を掲げる日本は、ディーゼル潜水艦で、世界で7番目に広い領海と排他的経済水域(EEZ)を防衛している。

 韓国の海域は日本の約10分1しかなく、北朝鮮の海域を含めても約8分の1だ。

 原潜を導入すれば、逃げ足が速くなる“メリット”はあるかもしれないが。

 日本を模倣して導入した韓国のイージス艦は、17年の5月から9月に北朝鮮が発射したミサイル11発のうち、6発しか探知できなかった。

 9月10日、韓国のイージス艦は、北朝鮮が発射した大口径ロケット砲2発を探知したが、北朝鮮が公開した写真には3発を発射した様子が映っていた。

 韓国軍は、イージス艦は「1000km内の弾道ミサイル探知が可能」「500km以内なら1000個の目標を同時に追跡できる」と自慢する。

 また、韓国最初のイージス駆逐艦「世宗大王」が、12年4月に北朝鮮が発射した長距離ミサイルを米国と日本より先に発見して、日米のイージス艦より優秀だとアピールした。

 しかし16年2月7日、韓国海軍の最新鋭イージス艦は北朝鮮が発射した弾道ミサイルを高度380kmで見失った。

システムは米国製でも、船体は韓国製で、乗組員も日米並みの訓練を受けてはいない

 韓国海軍内部で「弾道ミサイルが空中で爆発して粉々になったのでは」などという声が飛び交ったが、日米のイージス艦は発射された飛翔体を捉えていた。

 日本政府は、飛翔体が5つに分離したことと、4つがいつどこに落ちたか、また北朝鮮が人工衛星と称する物体がどうなったのかを捉えた結果を明らかにしている。

 韓国軍は「推進部分が切り離されて弾頭だけになったため、反射面積が小さくて追跡できなかった」と釈明したが、米軍や海自と同じ米国製の総合レーダーシステムを搭載しており、運用の問題ということが表面化した。

 システムは米国製でも、船体は韓国製で、乗組員も日米並みの訓練を受けてはいないのだ。

 米軍は旧ソ連の「飽和攻撃」に対処するため、イージスシステムを導入した。

 ソ連は爆撃機と潜水艦から一度に100発以上の対艦ミサイルを射撃する戦略を立てており、多数の武器に対応するシステムとして開発した。

 旧ソ連はまた大陸間弾道ミサイルの配備を進め、北朝鮮も開発に着手した。

 日本は弾道ミサイルを補足し、高高度で迎撃する目的でイージス艦を導入した。

 一方、韓国のイージス艦は1000kmまで補足できるというが、迎撃ミサイルの射程は160kmほどで、高高度ミサイルは迎撃できず「見てるだけ」だ。

 北朝鮮が本気で韓国を攻撃する場合、果たして弾道ミサイルを使うのか、疑問視する声もある。

 国境から首都ソウルは40-50kmの距離で、大型の大砲でも届くという。

 韓国が日米同盟に属し、米韓、日韓のGSOMIAが有効なら、韓国はより確かな情報を入手できる。

 自衛隊を模倣してイージス艦を導入し、軽空母を配備する韓国軍の行動は、かっぱえびせんやポッキーをコピーする行為と変わらない。

「文在寅」後に保守政権が誕生すれば、日米同盟に寄り添うかもしれないが、ナポレオンの言葉にある通り、「真に恐れるべきは有能な敵ではなく、無能な味方」なのである。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月5日 掲載