日本を罵倒し続けてきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領。突然、菅義偉首相に向かって愛想笑いした。下心を韓国観察者の鈴置高史氏が探る。

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「お目にかかれてうれしい」

鈴置:韓国外交が異様です。11月14日、ASEAN(東南アジア諸国連合)と日中韓の首脳がテレビ会議を開きました。

 文在寅大統領が冒頭発言で「尊敬する議長閣下、各国首脳の皆さま、特に日本の菅総理閣下、お目にかかれてうれしいです」と語ったのです。

 朝鮮日報は「文大統領、『特に菅総理閣下、お目にかかれてうれしいです』」(11月14日、韓国語版)でこう、驚きました。

・多者首脳外交の舞台で初めて同席した菅義偉日本総理の名前に特別に言及したのだ。多者首脳外交の舞台で特定の国家首脳に向け挨拶するのは一般的ではない。
・一部で、安倍晋三前総理の時に悪化した韓日関係を改善するための「ポーズ」との解説がささやかれるのもそのためだ。

――突然にすり寄って来るとは、気持ちが悪いですね。

鈴置:それが多くの日本人の率直な反応だと思います。文在寅氏はもちろん、李明博(イ・ミョンバク)氏、朴槿恵(パク・クネ)氏と、この10年間というもの、韓国の大統領はことあるごとに日本を公開の席で貶めてきましたから。

「日中韓」に出て欲しい

――なぜ、突然に変身したのですか?

鈴置:韓国が今年中に開く予定の日中韓首脳会談に、菅首相に参加して欲しいからでしょう。「国際法違反の『いわゆる徴用工』判決を韓国政府が放置し、日本企業の資産を接収したままなら、菅首相は訪韓しない」と日本政府がメディアにリークしたのが効いたのです。

 今や、韓国は朝鮮半島を巡る国家間の駆け引きで完全に蚊帳の外。韓国が主催する日中韓首脳会談まで開けないとなると、外交的孤立があからさまになってしまいます。

 11月10日に菅首相を表敬訪問した国家情報院の朴智元(パク・チウォン)院長は翌11日、日中韓首脳会談に関し「良い方向に進むだろう」と語りました。

 自身の訪日の目的が菅訪韓の地ならしであることを認めたのです。発言は中央日報の「韓国国情院長『年内ソウル開催の韓日中首脳会談、良い方向に進むはず』」(11月12日、日本語版)で読めます。

 11月13日にも韓日議員連盟の議員が菅首相を表敬しました。同連盟幹事長の金碩基(キム・ソッキ)議員は翌14日に「今回の訪日で菅首相が韓中日首脳会談に参加する可能性が増したと評価するか」と聞かれ「少しは寄与しうると思う」と答えています。

 もっとも、この発言を報じた朝鮮日報は「『早急な韓日首脳会談』提案に菅『分かった』…肯定的な反応でなかった模様」(11月14日、韓国語版)の見出しで、韓国議員の「手柄」を疑問視して見せました。菅首相の「分かった」との発言は訪韓に慎重な姿勢を打ち出したもの、と日本メディアが解釈したからです。

日本に仕掛けた罠

――韓国側は簡単に日韓首脳会談に応じると考えていたのでしょうか。

鈴置:今はそうは考えていないでしょう。文在寅政権の狙いは、首脳会談を開いて「いわゆる元・徴用工」の問題を話し合うことです。

 日本が譲歩しなくとも、これを議題にした瞬間に「問題の存在」を日本が認めたことになります。つまり「日韓併合は合法だった」との日本の従来の立場を放棄させることができるからです。

 日韓対立の最後の一撃となった韓国最高裁の判決骨子は、「不法な植民地支配下で不愉快な労働を強制されたことに対する慰謝料を払え」ということです。多くの人が誤解していますが「未払い賃金を払え」ということではありません。

「未払い賃金」なら、国交正常化の際に日本政府が韓国政府にまとめて支払っており、さすがに韓国の裁判所も二重請求は無理と判断したのでしょう。

 いったん日本政府に「併合は不法」と認めさせれば、後はやりたい放題にできます。当時、朝鮮人だった人は皆、その子孫も含め日本に「不法な植民地支配」に対する慰謝料を請求できることになります。

 さらに「我々は植民地支配を受けたことはない」「韓国は第二次世界大戦では戦勝国側だった」という、喉から手が出るほどに欲しかった「輝かしい歴史」も手に入れられます。

 だから菅首相は官房長官時代から一貫して首脳会談に応じないわけです。韓国側は、初めは「日本を罠にはめるのは簡単」と踏んでいたと思われますが、この硬い姿勢を見て「容易には騙せないな」と判断し、あの手この手に出てきたのです。

二階と朝日が頼み

――なぜ今、外交攻勢をかけてきたのでしょうか?

鈴置:菅政権は二階俊博幹事長のバックアップもあって誕生した。その二階氏は韓国では対韓融和派として有名です。

 中央日報は2019年9月30日、「観光客の急減に…二階幹事長『韓国に譲れるところは譲る』」(日本語版)で読売新聞に報じられた二階氏の以下の発言を引用しています。

・円満な外交を展開できるよう韓国にも努力は必要だが、まず日本が手をさしのべて、譲れるところは譲るということだ。
・我々はもっと大人になって、韓国の言い分もよく聞いて、対応していく度量がないとダメだ。

 韓国とすれば、こんな政治家が「陰の実力者」になった以上、使わない手はない。そこで二階幹事長と親しい朴智元院長を日本に送り込んだのです。

「絶大な影響力を誇る」と韓国では信じられている朝日新聞も最近の社説「徴用工問題 協議加速し危機回避を」(11月4日)で次のように主張してくれました。

・韓国では年内に、日中韓の首脳会談を開く準備が進められている。だが日本政府内では、徴用工問題の進展がない限り、出席は難しいとの意見がある。
・北朝鮮問題をはじめ、北東アジアの懸案は山積している。日中韓の今後を考える大局的な首脳対話を滞らせることがあってはならない。

東京五輪をボイコットするぞ

――でも、菅首相は首脳会談には応じなかった……。

鈴置:ええ、「大人」にもならず「度量」も見せず、「大局的」でもなかったわけです。ただ、韓国人も馬鹿ではありません。新たな仕掛けを用意しています。「東京五輪を人質にとる作戦」です。

 韓国の与党「共に民主党」は東京五輪のボイコット運動を展開してきました、朝鮮日報の「<萬物相> 『竹槍部隊』が突然『土着倭寇』になったワケ」(11月14日、韓国語版)を抄訳します。

・「放射能五輪」を全面に持ち出したのは我が国の与党だ。歴史問題・輸出規制問題での葛藤局面で反日扇動を率先した「共に民主党」は、東京五輪の競技場が放射能影響圏にあるという地図を公開し、「五輪ボイコットを協議する」と言った。
・議員らは「放射能五輪反対」というポスターを相次いでSNSに掲載した。「日本が歴史問題で謝罪しなければ、全世界の良心が五輪ボイコットをするだろう」「経済戦犯国に平和の祭典を主催する資格はない」と五輪反対の声を上げた。

 ところが一転し、日韓・韓日議員連盟は11月12日、日本の国会内で合同幹事会を開き「東京五輪・パラリンピックに関する協力委員会の設置」で合意しました。韓国側の本意は「ボイコット運動をやめてやるから首脳会談に応ぜよ」ということでしょう。

 文在寅大統領も11月14日、東アジア首脳会議(EAS)のテレビ会議で「2021年東京、2022年北京と続く北東アジアのリレー五輪を『防疫・安全の五輪』として開催するため、緊密に協力しよう」と呼びかけました。

未だに「属国の論理」

――「脅迫とはあまりに穿った見方。五輪に協力してやろうとの、我々の好意を侮辱するのか」と韓国人に怒られそうです。

鈴置:「好意」と見るのは余りにお人好しです。11月13日、「共に民主党」の金太年(キム・テニョン)院内代表が以下のように語りました。

 中央日報の「韓国与党院内代表『韓日首脳会談の早期開催は望ましい…菅首相の大胆な決定を』」(11月13日、日本語版)から発言を要約しつつ拾います。

・東京五輪が新型コロナで疲れた世界の人々の心を慰める行事になることを期待する。このためにはまず従軍慰安婦や強制徴用など歴史問題を解決しなければならない。菅内閣の大胆で前向きな決定を期待する。

 徴用工と慰安婦で謝罪・賠償しなければ東京五輪を邪魔するぞ――と、相変わらずドスを利かせているのです。

――「来たくなければ来るな」と日本に言い返されたら、韓国はどうするのでしょう。

鈴置:確かに、韓国選手団が来ないとなれば、拍手喝采する日本人もけっこういるでしょう。ところが、韓国人の多くが「我が国が参加をとりやめると脅せば、メンツを失うことを恐れ日本は譲歩する」と考えるのです。

 ここが日本人には分かりづらいところですが、彼らは大国と向き合う際に、一種独特の発想をします。

 長い間、中国大陸の王朝に仕えてきた朝鮮人。圧倒的な力の差の結果ですが、属国であることはやはり、うれしくない。そこで「中華王朝も、冊封体制に参加する我々の存在によりメンツを保っている」と考えることで自尊心を守ってきた。

 そんな彼らは「離脱」をちらつかせれば、日本も耳を傾けるはずだ――と、ごく自然に考えるのです。日本が宗主国だったのはたったの35年間だったのですが……。

北朝鮮を使って脅し

――「宗主国向け屁理屈」をいまだに持ち出すとは!

鈴置:日本を良く知る人はさすがに「属国の論理」に効き目がないことは分かっているのでしょう。韓国紙の東京特派員を務めた、李洛淵(イ・ナギョン)「共に民主党」代表はその代わりに「北朝鮮カード」を切りました。

 11月13日の発言を中央日報「韓国与党代表『東京五輪の成功には文大統領の支援が必要…文・菅共同宣言を』」(11月14日、日本語版)から引用します。

・東京五輪が成功するには北朝鮮が協力しなければならず、特に文在寅大統領の協力が必要だ。韓日間の争点、韓日首脳会談、さらに年内に予定されている韓日中首脳会談もそのような視点で見るのがよい。

 見出しの「共同宣言」とは両首脳が関係改善を宣言して突破口を開くとの案です。11月10日の表敬訪問の際、朴智元院長が菅首相に持ちかけました。

 宣言を出せば関係が良くなるものでもありませんし、宣言を出すためには首脳会談を実施することになるわけで、これも新型の罠といってよいでしょう。

――なぜ、北朝鮮の協力が必要なのでしょうか?

鈴置:北朝鮮が五輪に参加しなければ、テロを起こすかもしれないからです。

南北米日で「東京五輪構想」

――だとすると、李洛淵氏はすごい脅し方をしていることになりますね。

鈴置:ええ。「ウチの若い衆が何をするか分からないぞ。それが嫌なら、みかじめ料を払え」と言っているのと同じですから。

 そもそも、文在寅大統領が説得すれば、若い衆――北朝鮮が五輪に参加するとの保証はない。今年6月の南北共同連絡事務所の爆破事件で分かるように、北朝鮮は文在寅政権に徹底的な不信感を抱いています。韓国経由で北朝鮮にアプローチすれば、逆効果かもしれません。

 韓国は日中韓首脳会談を開くためにはどんな脅しもする。もう、なりふり構わなくなっています。「拉致問題の解決」まで持ち出した模様です。

 朝鮮日報だけが報じているのですが、朴智元院長は菅首相に、五輪の際、東京に韓国と北朝鮮、米国の首脳が集まり、日本を含め4か国で協議する「東京五輪構想」を打診したといいます。

「朴智元、菅に『五輪で南北米日会談』を提案」(11月11日、韓国語版)によると、文在寅大統領の意向を伝えたもので、北朝鮮の核問題と並び、日本人拉致の問題も協議するという構想です。

金正恩の訪日は可能か

――金正恩(キム・ジョンウン)委員長が日本に来られるのでしょうか?

鈴置:その可能性は極めて低い。北朝鮮は制裁やコロナ、風水害で食糧不足に陥っており、金正恩委員長は下手に国を空けられないはずです。妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を名代に送る手はありますが、国を代表する首脳とは言えません。

 準備なしに4首脳が一堂に会しても、北朝鮮の核、日本人拉致、日韓対立という多様な問題を一気に処理するのは難しい。下準備しても問題が絡まって、むしろ解決が遠のきそうです。

――ではなぜ、「東京五輪構想」を言い出したのでしょうか。

鈴置:日本がこれに乗れば、菅首相も韓国主催の「日中韓」首脳会議に参加せざるをえなくなり、付随して開かれるであろう「日韓」にも応じざるを得なくなります。

 文在寅大統領は菅首相から東京での4か国協議に招かれた瞬間、「では、一足先に韓国にもお越しください」と言うことでしょう。要は孤立を打開する東京への招待状が欲しいのです。

四面楚歌の韓国

――「日中韓」のために「4か国首脳協議」なんて大風呂敷を広げたのですか?

鈴置:目的は「日中韓」だけではないと思われます。韓国人は「周辺大国を操る韓国外交」というショーを常に見たがっています。実現困難な大風呂敷を語るのが大好きな人たちですから、「ダメモト」で本気で東京五輪構想に取り組み始むかもしれません。

 もちろん、実現すれば実利も大きい。文在寅政権の相次ぐ外交的な失敗で韓国は四面楚歌に陥っています。「東京五輪構想」がうまくいけば、これを一気に挽回できるのです。

 日本に対しては度重なる背信行為で怒らせてしまい、首脳会談さえ開いてもらえない。北朝鮮からは「米国の犬」と見なされ、無視され続けています。

 米国とは外交・防衛関連の閣僚級の会談さえ開くのが不可能になっていた。「対中包囲網に加われ」と強要されるのを避けるためです。日米韓防衛相会談もドタキャンしました(「文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた…」参照)。

 11月9日に、ようやく康京和(カン・ギョンファ)外交部長官がM・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官と会談しました。が、それはD・トランプ(Donald Trump)大統領の落選の可能性が高まり、対中包囲網への参加要求は持ち出されないと予測できた後のことでした。

 韓国が日米と疎遠になったのを見透かした中国は露骨な属国扱いを始めました。中国は韓国という国を知り尽くしていますから「ここで脅せば昔の関係に戻せる」と、かさにかかっているのです。

 朝鮮日報は社説「中国がまた一方的に約束を破棄、政府はまた中国の代弁、韓国民を馬鹿にするな」(11月14日、韓国語版)で韓国が中国からまともな国として扱かわれなくなった実例を挙げ、「文在寅政権は中国の前ではネコの前のネズミだ」と嘆きました。

バイデンでますます不利に

――米国ではトランプ政権に代わり、J・バイデン(Joe Biden)政権が登場する見込みです。

鈴置:バイデン大統領になれば、韓国の困惑はさらに深まります。「同盟を強化するため、日韓の間を積極的に取り持つ」とバイデン氏の外交顧問は表明しています。

 聯合ニュースが「『バイデンの影』外交関係の核心、マッケオン、『韓国は最高の同盟』」(10月11日、韓国語版)で報じています。

 積極的に仲介するというなら「いわゆる徴用工」問題で韓国の肩を持ってもらえると期待する向きもあります。人権弾圧の象徴である「強制徴用」と強調すれば、リベラルなバイデン氏は日本に厳しく出る、との理屈です。

 が、韓国にとって都合の悪いことに、バイデン氏は副大統領として日韓慰安婦合意の保証人を務めた人だったのです(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 バイデン氏は当然、「文在寅の合意破り」を知っている。日本がそれを突いて「『いわゆる徴用工』問題で合意しても韓国はどうせ破りますよ」と言いだすのは目に見えている。何せ、日韓慰安婦合意の際、日本側で仕切ったのは官房長官だった菅首相なのですから。

他人の褌で大勝負

――韓国が四面楚歌ということに初めて気づきました。

鈴置:韓国人はしばしば「日本は孤立しているぞ」と根拠もなく言ってきます。すると「我々は蚊帳の外だ」と呼応する日本の専門家が出ますので、騙される日本人が多い。でも今、韓国こそが「蚊帳の外」なのです。

 困惑した文在寅政権は日本に4か国協議の場を作らせ、ここで外交の舞台に上がる作戦を立てたのです。誰からも相手にされなくなった韓国でも、多国間協議には加われますから。一言で言えば、他人の褌で相撲を取ろうとしているのです。

「バイデン大統領」だって、他の首脳の前で文在寅大統領に「俺が仲介した慰安婦合意はどうなった」とは問い詰めないでしょう。潜り込む隙間がどこかにないか、文在寅政権は「蚊帳の中」に必死で鼻を突っ込んでいるのです。

――アジアが激変する今、「蚊帳の外」とは大変な失態……。

鈴置:文在寅大統領の自業自得です。不誠実極まりない外交をやってきたからです。外交に手練手管はつきもの。でも、約束をいとも簡単に破る国は相手にされなくなります。

 朝日新聞は先に引用した社説で「韓国と首脳会談を開いて連携を強めよ」と訴えました。でも、「そうだ」と考えた読者がどれほどいたでしょうか。

 約束をいとも簡単に破る国のトップと、いくら首脳会談を開いても連携を深めようがありません。信用できない人と対話しても意味はない、と常識人なら考えます。

回顧録で見下したボルトン

 米国の怒りは文在寅大統領がワシントンに来ては「血盟の米韓同盟」と叫びながら、中国の言うなりになっていることです。

 在韓米軍のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)基地は「市民」に封鎖され、米軍人は陸路での補給を断たれて不便な生活を強いられていました。しかし、韓国の警察は一切、取り締まりませんでした。

 米軍は怒り心頭に発しました。米退役軍人が、韓国軍にクーデターをそそのかしたとも思える論文を発表してもいます(「文在寅排除を狙い、米国がお墨付き? 韓国軍はクーデターに動くか」参照)。

 文在寅大統領の基本的な失策は、国益のためではなく、自分の人気取りのために外交をやっていると、周辺国から見抜かれたことです。

 トランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)を2018年4月から2019年9月まで務めたJ・ボルトン(John Bolton)氏が退任後に『The Room Where It Happened』を上梓しました。

 米朝首脳会談を回顧した部分で同氏は「韓国の目標は米国のそれ(非核化)とは常に異なった」「文在寅はいかにすれば米朝首脳と並んで自分も写真に写るかに汲々としていた」と酷評しています(81ページ)。

腹を膨らますカエル

 韓国人は自分の頭越しで米朝が話し合うことに不満を持ちますから、文在寅大統領は「自分が仕切っている」演出に全力を挙げた。

 しかし、人気取りで動く首脳は「ブレる人」と見なされ、周辺国から信用されません。実際、米国は北朝鮮との交渉に韓国を関与させませんでした。その後に韓国がどれだけ対北制裁の緩和を訴えても、米国は相手にしなかったのです。

 韓国に米国を動かす力がないと見てとった北朝鮮は、文在寅政権を完全に無視するようになりました。日本だって、人気取りの反日で肩を怒らせるだけの政権は子供扱いしました。

 強引な対北融和策や派手な日本たたきにより、韓国が世界を動かしていると内外に印象付けようとした文在寅大統領。でも、カエルがお腹を膨らませて自らを大きく見せるような外交はすぐに破綻し、韓国はますます「蚊帳の外」に追いやられてしまった。

 そして今、韓国は「東京五輪構想」を掲げて、再びお腹を膨らませ始めたのです。どこまでも懲りない政権です。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月17日 掲載