元慰安婦6名は金銭受領済み

 旧日本軍のいわゆる「慰安婦被害者」が日本政府を相手取って起こした訴訟で、原告1人当たり1億ウォン(約950万円)の賠償金支払いを命じる判決が下った。実は、提訴した元慰安婦12名のうち6名には、日本政府が資金を拠出した財団から既に1億ウォン(遺族には2000万ウォン)が支給されており、今回更にカネを上乗せする理由が判然としない。加えてこの財団にはまだ5億円のカネが残されているはずなのだが、それが行方知れずなのだ。

 この判決を受け、日本政府は控訴せず、ICJ(国際司法裁判所)への提訴を検討しているようだが、提訴することによって、韓国側の主張を国際的に広める機会になりかねないとして慎重で、当面は韓国政府の出方を見極める方針でいるようだ。

 しかし、そもそもICJで審理を始めるには双方の国の合意が必要で、提訴しても韓国側が応じないと一切先に進むことができない。

 現に、竹島(韓国名:独島)においては、日本政府は1954年、1962年、2012年に韓国に対しICJへの付託を提案したが、韓国側が拒否を続けている状態にある。

 慰安婦問題については、日韓両政府は2015年12月に「最終的かつ不可逆的に解決」することで合意しており、2016年7月には元慰安婦や遺族に現金を支給する「和解・癒し財団」が発足。

 この財団に日本政府は、100億ウォン(9億5000万円)もの巨額資金を拠出した。

 これを財源に、元慰安婦1人当たり1億ウォン、遺族にも同じく2000万ウォンの支援金を支払った。

 しかし、2018年11月、文在寅政権が財団の解散を一方的に発表。

 受給を希望者する元慰安婦2人と遺族13人には未払いで、拠出金はまだ5億円ほどが残っているはずなのだが、行方知れず。

 いったいこのカネはどこへ行ったのだろうか?

過去には「償い金」と「お詫び」が

 もっと遡ると、1995年7月に日本政府は、元慰安婦への「償い金」支給事業などを行う「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を設立。

 解散までに元慰安婦61名に1人当たり一律2000万ウォンを支給している。

 また、合意条件のうちの一つに、内閣総理大臣のお詫びの手紙を届けることも含まれていたため、2001年当時の小泉純一郎首相が元慰安婦各人に宛てた手紙を書いている。中身は日本の外務省のホームページでも確認できる。

 さて、今回の訴訟に話を戻すと、提訴した元慰安婦12名のうち6名には、先ほど触れた「和解・癒し財団」から既に1億ウォン(遺族には2000万ウォン)が支給されている。

「最終的かつ不可逆的に解決」のために支払われたカネに加えて、新たに上乗せする必要がどこにあるのだろうか。

 裁判所は丁寧に説明すべきではないのか。

 ここまでを見ても、今回の判決が指摘する損害賠償責任や謝罪云々において、日本政府は十分すぎるほどの補償を行ってきたように映る。

 日本政府は、国家の行為は他国の裁判所で裁かれないという「主権免除」の原則から、裁判に参加せず、「訴訟は却下されるべきだ」というスタンスをとってきたわけだが、日本の過去の対応は判決で考慮されてしかるべきではないのか。

 さらに言えば、当時の慰安婦は志願制であり、強制連行だったと主張しているハルモニ(おばあさん)たちは、親族や斡旋業者に売られた人たちだとされている。

 慰安婦になったからといって、虐待があったわけでもなかったし、給料が支給されていないわけでもなかった。

 むしろ当時にしては高い水準の待遇であり、そのため、戦後何十年もの間、彼女たちの間に被害者意識というものはなかった。

“お金が入ればこちらからあげるよ”

 それが、吉田清治氏の証言(後に虚偽と判明)を1982年に朝日新聞が確証もなく取り上げたことにより、状況が一変。

 韓国国内で次から次へと、被害者だと名乗るハルモニたちが続出したのである(韓国政府が認定した慰安婦数は240名にも及ぶ)。

 この流れを扇動し、日韓関係をこじらせてきた中心として、挺対協(現:日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)の存在がある。

 挺対協を長きに亘って率いてきた尹美香(ユン・ミヒャン)氏は現在国会議員となり、その一方で、「元慰安婦への寄付金横領」などの容疑で起訴され、裁判を待つ身だ。

 元慰安婦の1人は昨年、「韓国政府が日本円で10億円を受け取り、慰安婦被害者に950万円ずつ渡す時、尹美香から電話があり、“おばあさん、お金は受け取らないでください。 挺対協(正義連)にお金が入ればこちらからあげるよ”と言われ、絶対受け取れないようにした」と告白している。

 日本から拠出されたカネを受け取れば、慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」してしまいかねない。尹美香氏がそう考えたとしても不思議ではない。

 それでも裁かれるべきは日本政府なのだろうか。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月14日 掲載