早速SNSでアピールする大統領

 米国でバイデン新大統領が先月20日に就任してから15日が経過した2月4日、新大統領と韓国の文在寅大統領の電話会談が実現した。会談直後からSNSで成果をアピールする文在寅には、見えていない「同床異夢」な部分とは?

 バイデン大統領は、日本時間の28日、菅義偉首相と首脳電話会談を終えており、韓国は一体いつになるのか、連日のようにメディアで報道されていた。

 ちなみに、トランプ前大統領は安倍前首相と電話会談を行った2日後に、黄教安大統領代行と電話会談を行っている。

 待てど暮らせど、米国から電話がかかってこなかった文在寅大統領は気が気ではなかっただろう。

 文大統領を気の毒に思ったのか、メディアは、“いつ行うのかではなく、内容が重要だ”と慰めるほどだった。

 米韓首脳の電話会談が終わると、文在寅大統領は自身のツイッターに「たった今、米国バイデン大統領と首脳電話を行って、コロナ、気候変化、経済二極化など、重複される全世界的危機の中、“米国の帰還”を歓迎しました」(2021.02.04 9:15)と書き込んだ。

 また、「私とバイデン大統領は、共同の価値を基盤とする韓米同盟をさらに強化することを約束し、(朝鮮)半島の平和はもちろん、世界的な懸案への対応も常に共に行おうと話しました。共に行きましょう!」(2021.02.04 9:15)などと、韓国語と英語でアピール、投稿は4件に及んだ。

 青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の公式発表によると、電話会談が終わったのは8時57分で、文在寅大統領は会談終了からわずか18分後にSNSに投稿したことになる。

 よほど嬉しかったのだろう。

ホワイトハウスの発表との齟齬

 青瓦台は、米韓首脳電話会談の詳しい内容をホームページに掲載した。

 康珉碩(ガン・ミンソク)青瓦台報道官は、両首脳の電話会談は32分間に亘って実施されたと発表。

 以下、その内容を紹介する。

・文在寅大統領がバイデン大統領の就任を祝福、バイデン大統領は“米国の希望の一つが韓国だ”と発言。

・朝鮮半島とインド太平洋地域での協力を超え、民主主義・人権および多国間主義促進に貢献する包括的戦略同盟として、韓米同盟を発展させることを確認。

・世界気候首脳会議とP4G(環境ビジネス分野の国際官民連携ネットワーク)首脳会議の開催と成功。

・コロナワクチン・治療剤の普及、世界経済回復のため相互的協力を加速化していくことを確認。

・朝鮮半島問題解決の主な当事国である韓国側の努力を米国が評価。(バイデン大統領は)韓国の立場が重要、韓国と共通目標に向け緊密に協力していくと発言。

・韓日関係改善と韓米日協力が域内の平和と繁栄に重要だと確認。

・ミャンマー、中国などその他の地域情勢についても意見を交換。

・コロナの状況が沈静化され次第、韓米首脳会談を行うことで合意。

 日本に関しては、「両大統領は、韓日関係改善と韓米日協力が域内の平和と繁栄に重要だということに共感」とだけある。

 韓国大統領府の関係者は、電話会談で日韓関係の重要性について、「朝鮮半島情勢について話し合う中で自然に出てきた」と説明し、日韓間の具体的な懸案には及ばなかったと明かしている。

 実は、ホワイトハウスの発表に、青瓦台が発表した「できるだけ早期に包括的な対北戦略を用意する必要があるという認識で一致」「朝鮮半島問題解決の主要当事国である韓国の努力を評価し、韓国と同じ立場であることが重要」などの内容は含まれていない。

韓国には本音を語っていない

 ちなみに、バイデン大統領が文在寅大統領に「対日改善を促した」という内容は日本でも報道されたが、ホワイトハウスの発表にはない。

 ホワイトハウスは現地時間の3日(韓国時間4日)、豪州のモリソン首相や文在寅大統領と行った電話首脳会談の内容をまとめた報道資料を発表。

 豪州との首脳会談については、「中国とどのように向き合うべきか、グローバルで地域的な中国によるさまざまな挑戦に対し、どのように対処すべきかを協議した」と発表。

 一方、日本の菅首相と行った会談に関しては、「中国と北朝鮮のような地域の安全保障問題について話し合った」と説明している。

 しかし、韓国とは「両国首脳が北朝鮮に対して緊密に調整することで合意した」とあるだけで、中国に関する言及はみられない。

 さらに米国は、日本や豪州との同盟においては、中国を牽制する共同戦略の「インド太平洋」という語を使うが、韓国に関しては中立的意味が強い「北東アジア」という表現に置き換えている。

 前出・韓国大統領府の関係者によると、

「米韓首脳会談で、世界の脅威となっている中国問題に関して何も言及しなかったバイデン大統領が、韓国には本音を語っていない証しでしょう。韓国は中国におもねる外交を続けてきた点も見透かされ、新しい首脳関係のしょっぱなからマイナスに働いている状況です」

 バイデン大統領から電話が来たと浮かれる韓国だが(それもだいぶ待ちくたびれてからのだが)、新大統領が各国首脳と行った会談の内容と自国のそれとを比較分析する必要がある。

 そして、文在寅大統領が向かおうとしている道が、平和を望む国々の意向と相反するということに気付かない限り、“韓国”の品位をさらに低下させることになるだろう。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年2月10日 掲載