三菱重工業の韓国企業に対する債権を差し押さえる――。

 驚きの決定文が韓国の水原地裁安養支部から関係各所に送達されたのは、8月18日のことだった。

 戦時中、三菱重工に“強制徴用”されたと主張する原告団が損害賠償請求訴訟を起こし、三菱重工の敗訴が確定したのは2018年。3年の時を経てついに、三菱側が韓国企業から受け取るはずだった約8億5千万ウォン(約8千万円)の債権が差し押さえられたのだ。

 韓国人記者によれば、

「韓国メディアの中には、ここぞとばかりに地裁がある水原市の市役所や区役所に突撃し“三菱製のエレベーターが使われている”などと糾弾してみせる社も。担当者は“設置当時は日韓関係が悪化していなかった”“一番安いエレベーターを導入しただけだ”と必死に言い訳していましたが、今後、新たな不買運動に火が付くおそれもあります」

 もっとも、差し押さえの報道後、肝心の債権が三菱重工ではなく、グループ会社の三菱重工エンジンシステムのものだった可能性が浮上。

「差し押さえの効力が認められるかも不確定ですし、現金化されるとしても数年を要する。したがって、すぐに日韓関係が修復不可能なほどに悪化しないとの楽観的な見方もありました」(同)

 文在寅(ムンジェイン)大統領(68)も具体的なコメントは出しておらず、いわば“様子見”。

 ところが、安心するのはまだ早い。

「差し押さえの件には沈黙する文大統領ですが、彼が目下ご執心なのは来年3月の大統領選でのスムーズな禅譲なんです」(同)

 与党候補として最有力に挙げられるのは李在明(イジェミョン)・京畿道知事(56)。もともと文氏とは距離のある“反文派”とみられていたが、両者は急接近しているという。

「実は現在、文政権下での脱原発政策に文書の捏造や隠蔽があったとして検察が捜査しているんです。捜査線上には文氏の名前も上がっており、仮に保守系野党の候補が勝てば、文大統領にも司直の手が伸びる可能性がある。文氏サイドは、それだけは避けたいと、世論調査でもトップを走る李陣営の支持に本腰を入れたとみられています」(同)

 日本にとっては、この李氏がまた厄介な存在。

「文大統領を凌ぐ反日政治家で、持論は“親日清算なき韓国は国家として不完全”。李政権が誕生すれば、関連会社であれ何であれ、“清算”として差し押さえが加速する可能性が高い」(同)

 沈黙の先に見える文路線の継承、強化。もう5年、“日韓友好”はお預けか。

「週刊新潮」2021年9月2日号 掲載