「ほぼマクドナルド」の新店舗が

 日本企業が出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を、ロシア政府が新設する企業に無償で移管するよう命じたプーチン大統領。事実上の接収・国有化であり、ロシア革命後のボルシェビキを彷彿させる暴挙である。

 国際的な契約を一方的に「白紙」に戻し、共産主義時代に先祖返りするかのような無謀な行動。

 そして現在のロシアでは、冷戦終結とロシアの資本主義化の象徴だったマクドナルドでさえ、“白紙化”の象徴となっている。

 マクドナルドは今年5月、ロシア国内の約850店舗を地元フランチャイズ業者に売却。この業者は6月12日の〈ロシアの日〉に、新名称「フクースナ・イ・トーチカ」(「おいしい、それだけ」の意)でリニューアルオープンさせたのだ。システムはマックの居抜きで、ロゴマークは心なしかモスバーガーに似ている。

「味も値段も、以前のマックと特に変わらないですね。お客さんの入り具合も、今まで通りのようです」

 とは、ロシア在住のジャーナリスト・徳山あすか氏。

「こんな無法がまかり通れば……」

 ただ、一点だけ明らかな違いが。ジュースやポテトの容器が“白紙”なのである。急ごしらえで事業を引き継いだため、新名称のパッケージが間に合わなかったか。もちろん、その程度の白紙であれば誰も困らないし、問題もない。

 しかし、問題なのは、この一連の売却にもまた不透明感があるという点だろう。一説には、マクドナルドの事業売却もタダ同然の「格安」価格で行われたといわれる。仮に政府による命令ひとつで外国企業を強奪できるなら、こんなに“おいしい”話はない。だが、もちろん“それだけ”で済むはずもなく、

「こんな無法がまかり通れば、今後ロシアに投資する外国資本はなくなる。かつてのソ連では、製品の質もサービスも最低だった。資本主義の豊かさを知ったロシア人が、再びそういう生活に満足できるでしょうか」(経済アナリスト)

 ウクライナ侵略とそれに伴う大量虐殺などの残虐行為、破壊行為、そして国家間の取り決め、企業間の契約も蔑ろにする振る舞いの数々……これらを白紙に戻すなんて虫のいい話はどこにもないはずなのだが。

撮影・徳山あすか

「週刊新潮」2022年7月14日号 掲載