中国・四川省の成都市は人口2100万人の大都市だ。その成都がコロナを封じ込めるためロックダウンに踏み切ったのは今月1日のこと。3月末から行われた上海のロックダウンは約2カ月間。地獄のような都市封鎖が始まるのかと市民は身構えたに違いない。

 成都の大手民営広告会社に勤務する女性スタッフは言う。

「全員自宅勤務の通知があったのは8月30日の午後になってからです。市政府から一斉通知がありました。すると、午後6時には市内の通りから人の気配が消えていたのです」

 その間、人々はまっすぐ家に帰ったわけではない。スーパーへ駆け込み、一頭丸ごとの豚肉など、食料品や日用品を自動車に積めるだけ買い込んでいたのだ。以後、1世帯あたり24時間以内の陰性証明を持っている者1人が、1日1回だけ、2時間という制限付きで食品や医薬品の買い出しができるという厳格な外出制限が敷かれる。

中国がロックダウンにこだわる理由

 一方で上海ロックダウンの悪評に学んだのか、

「31日は在宅勤務、そして1日から自宅滞在と2段階で要請を強めています。またスーパーなど31の大規模商店に普段の2〜3倍の食材を備蓄し販売するように命じ、アリババなどのEC企業に宅配業者に対しても便乗値上げを禁じています。それもあって、今回は”飢え死にする”という声は聞こえてきません」(同)

 それにしても中国はなぜ、ゼロコロナに固執するのだろうか。mRNAワクチンがないからだとも、習近平総書記の面子を保つためだともいわれているが、中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表の田代秀敏氏によると、

「中国にはすでにmRNAワクチンがあります。ビオンテック社に出資している上海の復星医薬がライセンス生産していますが大陸で認可が下りないので香港・台湾へ供給しています。しかし、中国がロックダウン政策にこだわるのは別の理由がある。中国にはクリニックのような町医者がほとんどいません。いったんクラスターが発生すると大病院に患者が殺到し、簡単に医療崩壊を起こしてしまうので、ロックダウンによって封じ込めるしかないのです」

 かつて毛沢東は「敵を人民の海で囲む」として人海戦術と名付けたという。当局は人民の海を、いつまで統制して凪にとどめていられるだろう。

「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載