「陸上・世界選手権」(12日、ロンドン競技場)

 男子400メートルリレー決勝が行われ、リオデジャネイロ五輪銀メダルの日本(多田修平、飯塚翔太、桐生祥秀、藤光謙司)は38秒04で3位となり、世界選手権では同種目初のメダルとなる銅メダルを獲得した。予選で精彩を欠いたアンカーのケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=に代え、決勝ではベテランの藤光謙司(31)=ゼンリン=を起用。リオ銀メンバーを外す思い切った決断が、劇的な今大会日本勢メダル第1号につながった。これで日本は11大会連続のメダル獲得。リレー侍がメダル0の危機も救った。

 ボルトの壮絶なラストランと、地元英国の初優勝で悲鳴と歓声が交錯し、混とんに包まれたスタジアム。アンカーとしてゴールを駆け抜けた藤光は順位を確認するために周囲を見渡したが、答えは見つからない。3走の桐生が合流し一緒に電光掲示板を見上げると、「3.JAPAN」の文字−。世界選手権初、そしてリオ五輪に続く世界大会2大会連続のメダル。歴史をつないだ男たちは、歓喜の抱擁を交わし合った。

 「リオメンバーから2人代わってもこの結果。日本の層の厚さを証明できた」(藤光)

 レースの6時間前、苅部俊二短距離コーチは、ある決断を下した。午前の予選では米国、英国に大差を付けられた3着。38秒21のタイムは決勝8カ国中6番目。特に3走桐生と4走ケンブリッジの間でバトンが詰まり、100メートルの時から本調子ではないケンブリッジの走りで突き放されていた。夕方から行われたミーティングで選手たちに告げた。「オーダーを変える」。アンカーを藤光に代えることを発表。苅部コーチは「色々な状況があっての判断。悩みましたね」と振り返った。

 告げられたケンブリッジは、なかなか気持ちの整理がつかなかった。土江寛裕コーチは「『はい、分かりました』とはいかない。メダリストでもある。納得はできないでしょう」と思いやった。ただ、リオ五輪の結果があった中で、大きな期待を担う種目。「リオ五輪の状態なら確実にケンブリッジ。それは間違いない。でもバトンを含めて、今回勝負を懸けるなら藤光だった」(土江コーチ)。結果的には桐生と藤光。個人種目代表入りを逃し、リレー要員として帯同してきた2人の意地が日本を救った。

 レース後、スタンドから、ケガで欠場したサニブラウンとともに、仲間たちに拍手を送るケンブリッジの姿があった。「『俺が走ればもっと…』という気持ちもあると思う。選ばれなかったことを後悔させるぐらいの気持ちを持っていてほしい」と苅部コーチ。充実の時を迎えつつある日本のスプリント界。侍たちは意地とプライドをぶつけ合いながら、リレー大国の礎を築きつつある。