西武グループ企業が雇用調整助成金を不適切に受給した疑いが浮上した。従業員に支払った休業手当を上回る金額を雇調金として受給した手口の全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

支払った休業手当を上回る額を
雇調金で受給したと内部告発

 西武ホールディングス(HD)傘下の西武ハイヤーが雇用調整助成金(雇調金)を不適切に受給した疑いがあることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 西武HDは西武鉄道やプリンスホテル、西武ライオンズなど80社超を傘下に持つ西武グループの持ち株会社。西武ハイヤーは西武グループにおいてハイヤー事業とタクシー事業を担っている。この西武ハイヤーで、従業員に支払った休業手当を上回る金額を雇調金として受給していた。

 雇調金は企業が従業員に支払う休業手当を国が補助するもので、コロナ禍に伴い特例措置を実施してこれまでに3兆円超もの巨額が支給されている。西武HDでは、2021年3月期第3四半期(連結・累計)に雇調金等受入額93億2500万円を計上しており、上場企業では4番目に雇調金受給額が多い(東京商工リサーチ集計データに基づく)。

 西武グループは雇調金に大いに助けられている。そんな中で不適切な受給が行われているとの内部告発があった。

1人1日約1万2500円助成
実際の支払いは約7500円

 西武ハイヤーは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で利用客が減少している。これを受けてハイヤーやタクシーを運転する乗務員は月に数日、休業するようになった。

 雇調金は企業の規模やコロナ禍の影響度合いによって助成率が異なる。西武ハイヤーは助成率100%。つまり従業員に支払う休業手当の全額分の雇調金を受給できるということだ。

 西武ハイヤーは雇調金受給を申請するに当たり、西武ハイヤー労働組合と休業協定書を締結した。この協定では「平均賃金の6割か基本給のいずれか高い方を従業員に支払う」と定められた。

 同社乗務員は歩合給の割合が高く、基本給は月収の6〜7割であることが多い。従って、1日当たり収入の6〜7割分の休業手当を従業員に支払うことが決まったことになる。

 ところが、会社側は雇調金受給の申請書類にある「休業手当支払い率」の欄に「100%」と記入。従業員の平均賃金単価を1日当たり約1万2500円とし、その全額を助成金として受け取った。

 同社乗務員の給与明細書を編集部で確認したところ、実際に支給された休業手当は基本給相当分だった。1日当たり約7500円となり、雇調金受給額と約5000円の差額が生じていた。

 同社の乗務員数は約650人。平均的な月間休業日数を仮に5日と想定して乗務員人数分で試算すると、1カ月の差額は1625万円。ということは、20年4月から同年末までで合算すると差額は約1億5000万円もの規模になっている可能性がある。

 この差額は、国に返金されていないままである。

 雇調金制度ではこうした差額を防ぐ事項が整備されていない。この不備を突いたかたちで今回の西武ハイヤーの問題が発生した。

 厚生労働省は4月上旬、雇調金の不正受給が44件、約2億7000万円に上っていることを明らかにした。不正の手口は実際には働いた従業員を休業したと偽るといったものだ。同省は不正をした会社は企業名を公表し、悪質な場合は刑事告訴を行うこともあるとしている。

 西武ハイヤーの問題は厚生労働省にも情報が入っている模様。同社のケースが不正に当たるのか否かを見極めると共に、少なくとも是正措置なりが行われる可能性が高い。

 一連の問題は、西武ハイヤーに勤務する乗務員が雇調金を「不正受給」しているのではないかと疑い社内外に聞き取りをした上で、その内容をダイヤモンド編集部に告発したものだ。ダイヤモンド・オンラインでは、同乗務員とのやりとりにおける会社幹部の衝撃の発言などを『西武グループで雇調金「不適切受給」疑惑!手口の全貌【スクープ完全版】』で詳報している。