『週刊ダイヤモンド』8月21日号の第1特集は「五輪後の不動産・マンション 売りどき・買いどき」、第2特集は「不動産投資の今と裏」です。新築マンション価格の高騰が続いています。五輪後の不動産・マンションは「売りどき」なのか、「買いどき」なのか。コロナ禍や米国の量的緩和縮小の行方も絡んで、不動産市場の明暗が分かれています。巨弾特集で、売り時、買い時、投資時に迫りました。

こぞって”日本の家”を
買い求めている

 不動産市場で住宅人気がすさまじい。マイホームが欲しい一般層から、個人不動産投資家や海外の投資マネーを握り締めた外資系大手ファンドまでがこぞって”日本の家”を買い求めている。

 住宅の不動産価格は上昇しており、とりわけマンション価格の上昇が著しい(下図参照)。

 一般層は住宅ローンが低金利であることに背中を押された。金銭面においては、金融機関へ支払う利息よりも住宅ローン減税による節税額の方が多いという「逆ざや」現象が起きるほどの好環境なのだ。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが普及して通勤頻度が減るなど、自宅で過ごす時間が長くなり、住宅への関心が高まった。

 購入希望者が増える中にあって、首都圏で見ると新築の供給量が多くない。中古の在庫も需要に対してタイトだ。

 不動産投資のプレーヤーにとっても住宅は魅力を増した。

 空前の低空室率が続いたオフィス市場は、コロナ禍の影響を受けて空室率が上昇する局面に転換。オフィス賃料も上昇から下落の局面に移った。

 インバウンド(訪日外国人旅行客)が消え、人の移動が減り、商業施設やホテルの運営はさらに苦しいものとなっている。運営が苦しいときは安く買いたたくチャンスだが、売主がまだ強気だったり金融機関に支えられたりして耐え忍ぶ状態が続いており、投げ売りされるケースはそう多くない。

 投資セクターで見ると、インターネット通販の利用急増を受けての物流施設投資、ITサービスなどが増える中でのデータセンター投資がホットだ。しかし、溢れたマネーはこの分野だけで満足できるような規模ではない。

 オフィスや商業施設に比べて、住宅は物件単位の投資規模が小さく運営に手間もかかることから、海外の大手ファンドなどは従来あまり目を向けてこなかった。

 しかし、コロナ禍の前あたりから日本の住宅に手を出すようになり、数千億円単位でのバルク買いも行われるようになった。金融緩和で生み出された世界の余剰マネーはとにかく投資先が欲しかった。「日本はまだまだ安い」というのが彼らの常套句だ。

 日本人のマイホーム需要と世界からの投資マネーをのみ込んで、住宅不動産価格はつり上がった。

 いや、日本だけではない。コロナ禍の経済を支える各国の金融緩和や財政政策により、住宅価格は世界的に高騰している。

ジャブジャブに溢れている
投資マネーが逆流

 各国は住宅価格の高騰に警戒感を持ち、過熱する市場を冷却させる策を打ち出すようになってきている。

 不動産ブームに最も冷や水を浴びせ得るもの、それは米国のテーパリング(量的緩和の縮小)と利上げである。テーパリングで中央銀行が国債などの資産の買い入れを減らしていき、その後に利上げが行われる。

 米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリングは、早ければ年内か2022年初には始まるという見方が強い。

 余った投資マネーが行き着いた先が不動産である。テーパリングと利上げにより、ジャブジャブに溢れていた投資マネーが逆流し得る。米国に続いて日本でも超低金利が終了すれば、投資物件から得られる利回りと借入金利の差でもうけるうまみがなくなり、さらに投資マネーは引き揚げられ得る。

 振り返れば、ホテル不況はコロナ禍だけが原因ではなかった。それ以前からインバウンド需要を当て込んだ過剰な建設によって需給がだぶついていた。熱狂の中にいると、人の目は惑わされる。

 熱狂は、いつか冷める日が来る。それが売り時の終わりを告げる瞬間だ。