1位は232.91万円の上昇
新電力のイーレックス

 コロナ禍における緊急事態宣言の度重なる延長で、経済への甚大な影響が懸念されるこのご時世、景気のいい会社も探せばあるものである。

 ダイヤモンド編集部では2年ぶりに、「年収が上がった会社ランキング」を作成した。上場企業の直近の決算を反映した2021年最新版だ。

「有価証券報告書」(有報)で公開されている提出会社の平均年間給与(年収)を基に、直近と前期の平均年収を比較して上昇額が大きな会社をランキング。対象期間は20年4月期〜21年3月期とした。単体の従業員数が100人以上の会社が対象である。

 それでは、さっそく見ていこう。

競争激化する新電力業界で
自前のバイオマス発電が強み

 栄えある1位に輝いたのは、新電力会社のイーレックス。前期に比べて232.91万円も年収が上がり、平均年収は1147.9万円に達した。

 同社はバイオマス発電事業を強みに、再生可能エネルギーを求める顧客から注文を受け、急成長を遂げている。21年3月期決算は、売上高1418億円(前年同期比60.1%増)、経常利益148億円(同69.5%増)で過去最高を記録。年収が大きく上がった理由は「賞与が業績に連動しているため」(IR担当者)という。

「脱炭素」の追い風を受け、新電力業界全体が好調かというと、そうではない。3月には業界大手F-Powerが倒産した(負債総額は約464億円)。新電力のほとんどは発電所を持たず、卸から電力を調達しており、電力市況に業績を大きく左右される。また、他社との差別化が難しくコスト競争が激化してもいる。

 その点、イーレックスは自前のバイオマス発電所を全国で運営する。「年初に卸電力市場が高騰した時も、自社発電のほか、さまざまに調達を工夫した。日頃のリスクヘッジ施策が生きて、他社との違いが大きく出た」(同)。

 従業員は電力や石油、IT関連などの企業からの転職者が多い。20年春に初めて新卒採用の社員が入社。「やっと新卒を採れるような組織体制になり、会社の知名度も上がってきた」(同)。気になる今後の年収上昇についてはノーコメントだが、引き続き注目企業となりそうだ。

株高や半導体需要増を受けて
増収増益の会社が年収を上げた

 2位の松井証券(180.00万円上昇)は、インターネット証券の先駆けだ。21年3月期決算は株高を背景に、増収増益を達成。毎年4月末に支給する賞与が例年より多かった。加えて、「在宅勤務も取り入れながら、コロナ禍にもかかわらず業務に励んだ全社員に報いる」(IR担当者)のを狙いに、「特別賞与」も支給したという。

 同社は20年6月、25年ぶりにトップが交代し、経営方針をがらりと変えている。先代の松井道夫社長は「選択と集中」「低コスト」を掲げ、従業員は少数精鋭が基本だった。

 一方、初の創業家以外からの就任となった和里田聡社長は、FX(外国為替証拠金取引)や米国株など同社が取り扱っていなかった金融商品の拡充を図っている。「業務の広がりに合わせて、必要な人材を積極的に採用している」(同)とのことだ。

 3位は検査装置の開発・製造を手掛けるレーザーテックで、年収は173.24万円上昇した。もともと従業員の平均年収が1000万円超えという高水準だったのが、さらに上がって1310.8万円に達した(20年6月期)。

 20年6月期決算は、世界的な半導体需要の増加を受け、半導体関連装置が売れに売れた。売上高が前期比約50%増、営業利益・経常利益がともに同約90%増の好業績をたたき出した。「増益は研究開発費に回すか、従業員と分かち合う」(IR担当者)。業績連動型の賞与は1960年の創業以来、過去最高額だったという。

 業務拡大につき従業員を急ピッチで増強していて、今期は数十人から100人規模で人員を増やす計画だ。増員対象はエンジニアが大半で、即戦力となる光学や電子機器、精密機構やソフトウエアなどの実務経験者を採用するという。

 ランキング対象期間から外れた最新の21年6月期決算は、売上高が前期比65%増、営業利益・経常利益・当期純利益が同70%以上増加し、「全ての面で過去最高の業績を更新した」(同)。この21年6月期決算を対象とした有報が公表されるのは9月末なので詳細はまだ分からないが、年収はさらに上がっている可能性が高い。

製薬会社のMRに代わって
医療情報サイトが営業活動

 4位は医療情報サービスのケアネットで、平均年収は172.40万円上昇した。同社は医師・医療従事者向けの医療情報サイト「Care Net」の運営と、それに合わせた製薬メーカーの営業支援サービスを行っている。

 20年12月期決算は売上高が6割増、営業利益・経常利益が2.5倍に伸びるなど絶好調だった。ライバルはこうしたビジネスモデルを開拓した最大手、エムスリーであり、「彼らに比べると当社はまだ小さな会社で、伸び代が大きい」(同社幹部)。年収上昇の大部分は業績に連動した賞与によるものだが、従業員の昇給も進めているという。

 病院側のコンプライアンス強化の影響で製薬メーカーの営業活動が制限されるようになり、MR(医薬情報担当者)のリストラも増えている。そこをコロナ禍が襲い、ますます訪問営業は下火になった。「製薬メーカーがサードパーティーであるわれわれを使う傾向は今後さらに高まるはずだ」(同)。

 21年12月期の業績も絶好調で、6月末の上期終了時点ですでに、従業員に賞与を支給したという。通期計画の上方修正とともに、年収も上振れることだろう。

 従業員は、以前は医療・医薬業界出身者が多かったが、今は異業種からデータサイエンティストなども採用している。また今後は、組織規模の拡大に当たって人事や経理、総務といったコーポレート職のエキスパートを増やす意向だという。

 5位はAI認識技術を活用したクラウド型OCRサービスを手掛けるAI insideで、平均年収は139.00万円上昇した。21年3月期の業績が良かったので、賞与がそれに連動して上昇したとのことだった。

 なお、今回のランキングでは、単体の従業員数が100人未満の会社を除外したとお伝えしたが、前期比で従業員数が20%以上減少した会社や、従業員の平均年齢が2歳以上上昇した会社も除外した。前期から直近にかけて、持ち株会社になったり、会社本体の従業員の多数をグループ会社に異動させたりした影響を、極力排除するためだ。

 こういった場合、平均年収の開示対象となる有報の提出会社(単体)は少数のエリート社員ばかりになってしまう。これでは前期比で年収が大きく上がったとしても、グループ会社間での従業員の異動による見せかけの増加にすぎないというわけだ。

 次回は「年収が下がった会社ランキング」を予定している。今回の記事と併せて参考にしてほしい。

(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)