『週刊ダイヤモンド』7月30日号の第1特集は『銀行・保険・証券 DX大戦』です。デジタルトランスフォーメーション(DX)の大波は、金融機関のビジネスモデルを抜本的に変えようとしています。それに伴い、エリート金融マンの出世と年収にも異変が起きつつあります。銀行・保険・証券のDX攻防最前線に迫りました。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

ビジネス&人事、10年後はどう変わる?
銀行員もデジタル知識が必須に

「非金融業のECプラットフォームや決済事業者などが、金融業に来ている構図がある」――。

 メガバンクの置かれた現状をそう分析するのは、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)のCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)として、グループ全体のデジタル推進を統括する谷崎勝教・執行役専務だ。

 実際、累計登録者数4700万人を超える電子決済アプリ「PayPay」や、銀行や証券を持つ楽天経済圏の拡大だけでなく、異業種やフィンテック系ベンチャーの金融参入が相次ぐ。

 銀行は他業禁止の規制があり、これまで攻め込まれる一方だったが、谷崎氏は「金融の周辺領域に出ていくチャレンジ」が必要として、電子契約サービスや広告業へ打って出ていく戦略を明かす。

 異業種と組む戦略を強く打ち出すのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)だ。グループCDIOとCFO(最高財務責任者)を兼務する梅宮真・執行役副社長は、ソフトバンクやグーグルとの提携を踏まえ、「みずほのネットワークでは、これまでなかなかリーチできなかったお客さんに向けて、いろいろなビジネスに取り組んでいく」と話す。

 みずほFGはまた、自治体や企業のデジタル通貨発行に商機をみいだそうとしている。「各経済圏で銀行発行型のデジタルマネーが広がっていく非常に大きな可能性がある」(梅宮氏)との読みだ。

 一方、あらゆるデータが集まる「金融デジタルプラットフォーマー」を志向するのが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)だ。

 デジタルサービス事業本部長兼グループCDTO(チーフ・デジタル・トランスフォーメーション・オフィサー)を務める大澤正和・執行役常務は「金融機関が取れるデータには限界がある」とした上で、国内外の事業者とのデータ連携を強化していく方針を明かす。

 こうしたビジネスの変革に伴い、エリート銀行員らの出世と年収に変化をもたらすのは必至だ。

 MUFGは21年度から、管理職らについてDXに力点を置いた人事考課に変更し、全行員対象のデジタルスキル認定では、習熟度と賞与が連動する制度を取り入れている。

 また700人規模の「デジタルコア人材」を育成する方針で、大澤氏は「一定年齢より下の若年層の人に関しては(デジタルの知識が)必須になる」と断言する。

 SMFGもグループ会社の社長に30代の若手抜てきを進める。昨年のシステム障害で金融庁から企業風土の問題を指摘されたみずほFGは、社員の意識変革を促す有効な手段としてDXを積極活用する考えだ。