中高年期にパソコン作業に従事していると、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の予防に働く、かも。

 米国の著名な総合病院「メイヨー・クリニック」の精神科医らは、同院の加齢研究データ(MCSA)に登録された非MCIの男女2000人(男女比は1対1、平均年齢78歳)を対象に、中央値で5年間の追跡調査を実施。脳機能に刺激を与える行動とMCIとの関連を調査している。

 参加者は登録時に自身の中高年期(50〜65歳)と66歳以降の高齢期に(1)読書、(2)パソコン作業、(3)社会参加(友人との交流、映画を見るなど)、(4)アナログゲーム(トランプやクロスワード)、(5)裁縫や陶芸などのクラフト作業を行っていた頻度について回答。この場合、月に2、3回以下では「従事した」とはいえず、少なくとも週に1、2回以上で「従事した」と定義された。

 追跡期間中は15カ月に1回、認知機能検査を実施。532人が新たにMCIと診断されている。

 最終データを解析した結果、中高年期にパソコンを使用していた人は非使用者に比べ、MCIの発症リスクが48%と大きく低下。高齢期に使用していた人では30%、中高年〜高齢期では、37%のリスク低下が認められている。

 また、中高年〜高齢期を通して友人との交流やゲームを楽しむ機会が頻繁にある人は、MCIリスクが20%低下した一方、クラフト作業のリスク低下効果は、高齢期に従事していた場合にのみ認められた(42%低下)。高齢期に限れば、こうした活動が増えるほど、MCIリスクも、それに準じて減少する傾向が示されている。

 ただし、本研究は観察研究なので、これで精神的活動=MCIの予防手段と証明されたわけではない。むしろ脳を使う作業や行動に「興味を持てない、面倒だ」と感じたときが、MCIを疑えという警告ともとれる。

 いっそ、手作業や社会参加が「おっくう」に思えるなら、科学的に認知症予防効果が証明されている運動と生活習慣のケアを優先してみよう。そのうえで、新しく頭を使う趣味を始めてみるといい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)