梅毒の流行が止まらない。感染症法に基づく届け出が始まって以来の年間最多届け出数を更新。年間1万人を超えた。

 梅毒の発生届出には、2019年から性風俗の従事歴と利用歴に関する記録が義務づけられている。

 あくまで患者の自己申告制なので正確とはいえないが、22年第2四半期の報告では、男性患者の39%に診断6カ月以内の性風俗利用歴が、女性患者の40%に性風俗従事歴があった。

 患者の年齢層をみると、男性は20〜50代まで満遍なく増加しているのに対し、女性は20〜24歳が突出して多い。事実から推測すると性風俗が感染経路になっているのは否定できないだろう。

 若い女性の梅毒感染は先天性梅毒のリスク増につながる。しかし、妊娠以前、あるいは妊娠後でも、特効薬のペニシリンで適切に治療をすれば悲劇を防ぐことが可能だ。性風俗従事者、そして利用者もリスクをとる以上は、感染予防と定期検査を徹底したい。

 今年は梅毒の治療にも変化があった。

 これまでペニシリンの飲み薬は1日3〜4回、数週間飲み続ける必要があり、治療をドロップアウトする人も少なくなかった。

 しかし、今年1月から使えるようになった長時間作用型ペニシリン製剤は、効果が1週間以上続くため、早期なら1回の筋肉注射で、感染が心血管や神経まで拡がった後期でも、週1回、合計3回の注射で治療が終了する。そして何より、妊娠中の梅毒患者への適切な投与で、先天性梅毒を予防できるエビデンスがある。

 梅毒の経過は、病原体への暴露後、10〜90日間の潜伏期間の後に、性器などに硬いしこりや潰瘍が生じる第1期、全身の皮膚や粘膜に発疹や炎症が生じる第2期、見た目は健康そうな数年間の潜伏期間を経て、心血管や脳神経に炎症が生じる第3期にわかれる。

 1〜2期の症状では「バラ疹」が有名だが、盲点は眼症状だ。結膜のしこりや眼の充血、飛蚊症もどきの症状で梅毒が見つかった例もある。リスク行動に心当たりがあるなら眼症状を「加齢」や「眼精疲労」で片付けてはいけない。

(取材・構成/医学ライター 井手ゆきえ)