コロナ禍3年目を迎え、米国では徐々に「アフターコロナ」の世界へ進もうとしている。そうしたなかで、小売市場は全体的に力強い成長を示している。コロナ禍では従前から取り組んできたEC事業や受け取り手段の拡充への投資が実を結び、EC売上高の急増によって全体の業績を伸ばした企業が多い。2021年の小売各社の販売額ランキングトップ10業態から、米小売市場の今と今後の展望を考察していきたい。

21年の小売販売総額は約477兆円! 顔ぶれには若干の変動も

 2021年の米国小売業の販売総額は対前年比10.5%増の3兆8178億ドル(約477兆2250億円:1ドル=125円で換算)。コロナ禍での内食需要の高まりなどに伴って同6.3%増となった20年よりも対前年比伸び率は大きくなっている。

 トップ5はウォルマート(Walmart)、アマゾン(Amazon.com)、CVSヘルス(CVS health)、クローガー(Kroger)、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance)の順。顔ぶれにも順位にも前年から変化はなかった。6位以降は、コストコ・ホールセール(Costco Wholesale)、ターゲット(Target)、ホーム・デポ(Home Depot)、アップル(Apple)、アルバートソンズ(Albertsons)と続く。このうちアップルは前年の14位から9位に上昇し、トップ10に食い込む結果となった。

 全体的には、食品スーパー(SM)が“コロナ特需”の状況からやや落ち着きを見せた。米SM最大手のクローガーの販売額は対前年比97.4%、SM大手のアルバートソンズも同96.5%と前年実績を下回っている。ただしコロナ前の対19年比で見ると、クローガーは110.6%、アルバートソンズは110.5%といずれも2ケタの伸長を見せており、依然として逞しい成長基調にあると言える。

ウォルマートVSアマゾンの最新状況は!?

アマゾン・ブックス
アマゾンは「アマゾン・ブックス」などの全店閉店を決めるなど、リアル店舗戦略に変化が表れている

 首位に立つ小売最大手のウォルマートは、とくに米国事業が堅調に推移している。21年度はEC売上高を対前期比11.0%増と伸長させながら、既存店売上高も同6.4%増と前期に引き続き好調。全米約4700店舗の店舗網を活用し、ECで注文した商品を駐車場で受け取る「カーブサイドックアップ」やBOPIS(Buy Online Pick-up In Store:店舗受け取りサービス)といったOMO(オンラインとオフラインの融合)を推進している。また、傘下の会員制ホールセラー(MWC)サムズクラブ(Samʼs Club)も既存店売上高が同9.8%増、年会費収入は同11.3%増と、全体業績に寄与した。

 米小売市場でウォルマートと双璧をなす存在になりつつあるのが、2位のアマゾンだ。コロナ禍出のEC需要の高まりも大きな追い風としながら、対前年比伸び率はここ数年2ケタ増を続けている。アマゾンは 近年、レジレス店 舗「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」やレジレ
ス型食料品店「Amazon Fresh Store(アマゾン・フレッシュ・ストア)」など食品を扱うリアル店舗フォーマットを積極的に出店する一方、非食品カテゴリーの実店舗「Amazon Books(アマゾン・ブックス)」、「Amazon 4-Star(アマゾン・フォースター)」、ポップアップストアをすべて閉鎖する方針を明らかにしている。また、傘下のホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)では、ダークストアの開設や一部店舗でのレジレスソリューション「ジャスト・ウォークアウト(Just Walk Out)」の導入など、「アマゾン化」への動きもみられる。

EC投資を加速させるクローガー&ターゲット

クローガーのトラックと従業員
米SM最大手のクローガーはEC・配送網の強化を進めている

 クローガーは、ネットスーパーの強化に向けて物流インフラの整備に取り組んでいる。21年6月、英ネットスーパー専 業オカドグループ( Ocado Group)との提携のもと、EC専用物流施設「カスタマー・フルフィルメントセンター」(以下、CFC)をフロリダ州グローブランドで稼働させ、未出店エリアであるフロリダ州でネットスーパー事業を開始した。リアル店舗の出店ではなくネットスーパーの展開による新規エリアの開拓はほかの州でも行われており、今後拡大していきそうだ。

 コストコは、プライベートブランド(PB)「カークランドシグネチャー(Kirkland Signature)」を中心とする商品開発や品揃えなどのMDに優れ、品質のよい商品を圧倒的な低価格で提供し、多くの消費者から支持を集めている。21年度の米国顧客満足度指数(ACSI)では「百貨店およびディスカウントストア(DS)」部門で最も高い顧客満足度を5年連続で獲得。22年8月期第2四半期時点での米国およびカナダでの会員更新率は92.0%と高く、北米の消費者から絶大の信頼を得ていることがうかがえる。

 ターゲットも商品力の向上によって新たな顧客層を獲得し、企業ブランドを蘇らせ、業績を順調に伸ばしている。21年度の既存店売上高は同12.7%増、客数は同12.3%増と絶好調で、PBの売上高は同18%増の300億ドル(3兆7500億円)に達し、売上高全体の28.3%を占めるまでになっている。また、同社はコロナ前から店舗をECの配送拠点とするフルフィルメントモデル構築に向けた投資を強化しており、これが奏功して21年度のEC売上高は対前年度比21%増となった。

アップル躍進の理由は? ドラッグストア・ホームセンターは”複占”続く

 このほか特筆すべきは、前述のとおり順位を5つ上げてトップ10入りしたアップルだ。「iPhone」「アップルウォッチ」など日本でも誰もが知る世界的テクノロジー企業だが、同社はメーカーであると同時に、直営のリアル店舗とECチャネルを有しており、コロナ禍でも好調に推移。販売額は前年から27.4%増と急伸している。

 また、CVSヘルスとウォルグリーンのドラッグストア2社も堅調な業績の伸びを見せており、2社による寡占状態に変化はない。ホームセンターも同様で、前年から販売額が2ケタ増となったホーム・デポと、アップルのごぼう抜きによって同じく堅調ながらも今回は11位に順位を下げたロウズ(Lowe’s)とともに”複占”の状態が続いている。

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著者:フリーランスライター:松岡由希子