三越伊勢丹が運営するVR(仮想現実)を活用したスマートフォン向けアプリ「REV WORLDS」(レヴ ワールズ)が膨張を続けている。その概要については『ダイヤモンド・チェーンストア』2022年4月1日号で紹介しているが、発行後にも、レヴ ワールズ内で初のショーイベント「バーチャルファッションショー」の開催、「バーチャル東京ドーム」エリアの新設、バーチャル伊勢丹新宿店内では「EXIEEE」ショップ(株式会社ウィゴーが展開するお笑いコンビEXITプロデュースブランド)や「Disney Ultimate Princess Celebration」など既存のショップの商品や空間のアップデートが繰り返されている。

レヴ ワールズで開催された「バーチャルファッションショー」の様子

「バーチャルファッションショー」を開催!

 レヴ ワールズで開催された「バーチャルファッションショー」は、2021年11月に東京都三鷹市立第三小学校の「総合的な学習」の一環として、三越伊勢丹がVRに関する講演を実施したことがきっかけとなって生まれたもので、同小学校の5年生(106人、実施時の学年)が18チームに分かれてデザインした未来のファッションの中から9作品を選定、VR上のアバターファッションとしてランウェイを歩くというイベントだ。2022年3月22日〜4月19日の期間限定で、1日3回・各回約5分の開催だったが、会期中には約800名の顧客(ユーザー)が来場したという。

 同イベントについて、三越伊勢丹の担当者は「期間中、何度もログインして観覧される方や、ユーザー同士がファッションショーで待ち合わせをし、ショー終了後にほかのエリアへ遷移して散策やお買い物を楽しむ姿が見受けられたほか、ファッションショーの衣装をデザインした小学生が『このファッションをデザインしました!』と、ほかのユーザーとチャット機能を使った会話で盛り上がる様子もあった」と話す。

 なおファッションショーに登場した9つのアバターファッションは、レヴ ワールズ内でアバターの着せ替えアイテムとして入手可能になっている。

 また、3月26日から期間限定(終了時期未定)で登場した「バーチャル東京ドーム」エリアでは、ユーザーはアバターを使ってバーチャル東京ドーム内のマウンドまで歩くことができるほか、地下エリアでは、シリーズ累計発行部数8500万部の人気格闘漫画『刃牙』シリーズ(秋田書店「週刊チャンピオン」に最新作が連載中)に登場する“地下闘技場”をモデルとした「バーチャル地下闘技場」が設けられ、アバターとなった一部の人気キャラクターに会えたり、関連するデジタルアイテムを入手したりすることもできる。また「バーチャル地下闘技場」では「刃牙」のファンが集うイベントも数回実施している。

三越伊勢丹が描く「オムニバース」

 21年3月にレヴ ワールズのβ版アプリがリリースされて1年余り。ユーザーの行動にも特徴が現れてきている。

 たとえば、百貨店の強みである「デパ地下」や「ギフト」への関心の高さはレヴ ワールズ内でも明確に出ているという。「三越伊勢丹限定パッケージの『東京国立博物館・国立近代美術館』のギフトアイテムや、ギフトショップの『ムードマーク バイ イセタン』などで、商品閲覧数やWEBサイトクリック数が高くなっている」(三越伊勢丹の担当者)。

 「ムードマーク バイ イセタン」は、相手の住所を知らなくても贈り物を届けることが可能なソーシャルギフトに対応しており、バーチャルショップを回遊しながらギフトアイテムに出会う“リアル店舗のような体験”と合わせた体験価値がユーザーに好まれているのではないか、と同社では見ている。

 また、アプリ内で出会った人たちと「かくれんぼ」など、独自の遊び方をしているユーザーがいたり、夫婦でレヴ ワールズ内でのデートを楽しんだり、親子で遊んでいるといった声もあるという。

 同社では当初から、レヴ ワールズを、仮想空間内でのメタバース事業というよりも、リアルとオンライン、それぞれの世界を行ったり来たりする“オムニ”バース事業として位置付けている。現状、リアルとバーチャルの組み合わせによるユーザー行動についてはどうか。

 「常設ではないが、リアル店舗に実在する販売員が、顔なじみのお客さまと事前に日時を決めたうえで、アバターとなってバーチャル上でお迎えし、チャット機能やボイス機能を活用して接客するといったケースも出てきている。なかには、リアル店舗と同様、紹介商品の購入につながったこともある」(同)

「伊勢丹新宿店」本館6階で開催されたデザイン画の展示の様子(3月22日で終了)

バーチャルショップで20万円の服が売れる事例も!

 他社の事例になるが、レヴ ワールズ並みの精度を再現した3DCGバーチャルショップをインターネット内にオープンした、あるビンテージ古着を扱う店舗では、開設から1カ月もしないうちに、買物客自身による店内回遊と、店主によるオンライン接客により、1着20万円近いコートが売れたという(オンライン接客時に顧客の顔を見ているが、最後まで、直接会う機会はなかった)。ちなみに同店は実店舗をもっておらず、店の存在を知ることができるのはインターネット内だけだ。

 その店主によれば「これまでのECは商品画像を見せるだけだったが、バーチャルショップでは、より詳細に商品を見せることができる。そのうえで、商品についてのストーリーを交えながらオンライン接客ができれば、リモートでもモノは売れる」と。

 レヴ ワールズ内でも、今後、こうした動きが出てくるのだろうか。そうなれば従来のECとは異なる、新しいオンラインストアとして注目を集めるにちがいない。

著者:兵藤 雄之