薬王堂ホールディングス(岩手県/西郷辰弘社長:以下、薬王堂HD)が4月5日に発表した2022年2月期連結決算は、売上高が1203億円(対前期度比8.8 %増/前期から97億円増)、営業利益が40億円(同9.0 %減/同9億円減)、当期純利益29億円(同9.9%減/同3億円減)だった。
新規出店効果に加え、既存店売上高も伸長し増収となったもののカテゴリーミックスおよび商品廃棄損に伴う粗利益率の悪化、および新規出店に伴う販管費率上昇などにより、増収を営業利益増につなげることができなかった。

営業利益が1.5倍になった薬王堂HD

22年2月期業績は増収減益で着地

 新型コロナウイルスは2021年も相変わらず感染拡大を続け、わが国の経済を停滞させた。ドラッグストア業界も、マスクや消毒液などの反動減に見舞われた上に、稼ぎ頭である化粧品の戻りが鈍かった。

 苦しい状況下において薬王堂HDは、品揃えの強化や柔軟な価格コントロールにより、コロナまん延に伴う来客数減少を客単価増によりカバー。既存店売上高は対前期比1.6%増を確保するとともに、強化地域(青森・秋田・山形・福島各県)を中心に過去最高の出店攻勢をかけ、売上アップにつなげた。

 商品カテゴリー別売上高でも、ヘルス(同4.7%増)、ビューティ(同4.7%増)、ホーム(同9.3%増)、フード(同12.2%増)といずれも前年度を上回った。

 粗利益率は、カテゴリーミックス(原価の高いホーム・フード商品のウエート増)やマスクなどコロナ関連商品の過剰在庫廃棄損により、粗利益率は前年度より0.6ポイント(pt)低下の22.6%となった。

 出店増に伴う新店経費負担、政府による最低賃金切り上げに伴う人件費負担増、原油などエネルギー価格上昇に伴う光熱費負担増により、販管費率は19.3%と前年度より0.6pt上昇した。

 上記の結果、増収にもかかわらず営業利益は前年度を下回った。

23年2月期は増収増益予想!

 23年2月期は、売上高が対前期比同7.2 %増の1290億円、営業利益が同4.4%増の42億円、当期純利益が同8.1%増の32億円と増収増益をめざす薬王堂HD(同社は23年2月期より「収益認識に関する会計基準」を適用する。業績予想数値は参考値で、適用前の計画に対する増減率を記載)。

 売上のうち既存店売上高に関しては、ESLP(エブリデー・セイム・ロー・プライス)、カテゴリー戦略(消耗品や食品の強化)、販促と売場の連携強化により、コロナ化でスーパーマーケットに奪われた消費者を取り戻す構えだ。

 各KPI(重要業績評価指標)を見ていくと、既存店売上高は、経済状況の不透明感を考慮し、対前年度101.5%と保守的に見込む。新規出店は前年度よりペースを落とし25店舗とする。

 粗利益率については、引き続きカテゴリーミックスの悪化が見込まれるものの、廃棄損が減ることから、前期から0.4ptアップの23.0%を見込む。販管費比率に関しては、新店経費が内輪に収まるものの、引き続き人件費・水道光熱費負担の増加が懸念されることから、0.4ptアップの19.7%を想定する。

 以上の結果、売上高営業利益率は前年度より0.1ポイント悪化の3.3%となる見通しだ。

小商圏で戦う薬王堂の生き残り戦略

 22年2月期決算において、過去最高の売上高を更新した薬王堂HD。08年2月期と比較すると、店舗数は103店から359店へ、売上高は341億円から1203憶円へともに3倍以上に成長した。しかもこの間、ずっと増収を続けている。

 もちろん、成長は出店だけに頼っているわけではなく、既存店売上高も6期連続でずっとプラスだ。ここ2年間は長期KPIである103%を下回っている(2021:102.8% 2022:101.6%)ものの、東北地方は人口減少が続き、小売販売額がマイナストレンドであることを考慮すると、薬王堂HDの既存店プラス成長は評価してよいだろう。

 とはいえ、東北地方の事業環境の厳しさは、同社の今後の成長の不安要素となる。東北地方は全国の中でも突出して少子高齢化が進んでおり、経済も収縮に向かっている。そうした中でエリア内には大手ドラッグが入り込み、しのぎを削っているのである。

 生き残り戦略として薬王堂HDが進めてきたのが、小商圏ドミナント戦略だ。市街地に店を構える大手に対し、薬王堂HDは内陸の山間部といった「空白地帯」に入り込む。商圏人口も7000〜8000人程度と少ない。

 もう1つの特徴は、独自の業態「小商圏バラエティー型コンビニエンス・ドラッグストア」だ。医薬品・化粧品だけでなく食品・雑貨さらには衣類までを揃え、過疎地・遠隔地の消費者を囲い込み、客単価を上げる。だからこそ小商圏でも算盤が合うわけだ。

 独自の出店戦略と業態が奏功し、現在東北地方でシェア2位の座を確保する薬王堂HDだが、今後も厳しい戦いが続く。2020年、九州のドラッグイレブン(福岡県/畑井慎司社長、当時の社名はJR九州ドラッグイレブン)がツルハホールディングス(北海道/鶴羽順社長)の連結子会社となるなど、大手の傘下に入る地方の有力ドラッグストアは依然として多い。

 薬王堂HDは生き残りをかけ、差別化戦略に注力する。たとえば公式アプリ、現在の登録者は15万人だが、将来的には倍の30万人にまで延ばす。アプリを通じた肌診断や健康チェックを通じ、稼ぎ頭であるヘルスとビューティを伸ばそうという皮算用だ。フードテックベンチャー「ネクストミーツ」との共同開発による代替肉を店頭に並べるなど、SDGs的な商品施策にも注力する。

 まだ取り組みは始まったばかりだが、成果を出すことができるのか。今後に注目だ。

著者:棚橋 慶次