セリア(岐阜県/河合映治社長)が5月10日に発表した2022年3月期決算は、売上高が2080億円(対前期比3.7%増/前期から74億円増)、営業利益が209億円(同1.7%減/同3億円減)、当期純利益が143億円(同2.9%減/同4億円減)の増収・減益だった。

巣ごもり増収も、伸び率は鈍化

 コロナ禍における外出自粛などの影響で、濃淡を伴いつつも小売業界は全般的に苦境に陥った。そうした中で100円ショップは、巣ごもり需要という強い追い風が吹き、客足は堅調をキープしている。

 順調な経営環境下、セリアは2022年3月期、チャネルおよび商品戦略の強化をバネに、さらなる成長をめざした。

 チャネル戦略では、多店舗展開を推進すべく、複数テナントを所有するオーナーとの優先交渉や未開拓エリアの開発に取り組んできた。22年3月期の出店数は、137店舗(ロードサイド11・商業集積地37・インショップ89)にのぼる。ただし、ただしコロナ禍に伴う商業施設再開発計画の遅れなどもあり、出店数は2期連続で前期割れしている。

 商品戦略では、新規顧客層獲得を見据えた商品開発体制強化を図り、大阪に続いて東京のサテライトオフィスにも活動の場をひろげた。こうした努力が奏功し、22年3月期の売上高は前期を上回っている。

 ただ、売上高の伸びは鈍化傾向にあり、ここ数年1ケタ台後半以上を維持してきた伸長率は、1ケタ台前半にとどまった。

 加えて、既存店売上高は同2.1%減と前期実績を下回り、客数(同1.4%)・客単価(同0.6%)ともに低調だ。月別に見ても、前年度を上回ったのはわずか3カ月に過ぎなかった。

 なお事業部門別の内訳だが、セリアでは直営部門の売上高が全体の98.6%を占めており、フランチャイズや卸売はごくわずかにすぎない。アイテム別の売上高も、雑貨の比率が食品・菓子類などよりも圧倒的に多い(98.5%)のがセリアの特徴だ。

 利益面については、増収効果があった一方で積極的な店舗展開による販売スタッフ人件費および家賃負担の増加により、営業利益は前期からマイナスとなっている。

コスト増背景に今期は減益予想

 セリアは23年3月期の業績予想で、売上高が同4.2%増/同87億円増の2168億円、営業利益が同18.3%増/同34億円増の175億円、当期純利益が同18.9%減/同28億円減の119億円を見込む。

 売上高はキャラクターグッズ・アウトドア用品の伸長を織り込み、今期も過去最高更新を計画する一方で、既存店売上高はマイナスとなる見通しだ。

 利益面では2期連続で厳しい状況が続きそうだ。樹脂原料をはじめとした素材の値上がりや円安が圧迫要因となっている。同社は段ボール梱入り数を増やして輸送効率を上げたり、品質に直結しない梱包資材を見直したりと対策を打つが、コスト増を吸収するまでには至らないようだ。

意外と知られていない「均一ショップ」の歴史

 「さまざまな商品を同じ値段で販売する」という発想は古くからあり、江戸時代には「十九文見世」「三十八文見世」といった“均一店”が流行ったとの記録もある。

 戦前には髙島屋が十銭ストアを開業し、当時の一般大衆からは「安からう悪からうも事実 だが十銭の値打は充分」と一定の支持を得ていたとも言われる。

 戦後は、売れ残り商品を均一価格で叩き売る“バッタ屋”なども出現したが、現在と同じ固定型店舗の100円均一ショップが登場したのは1980年代とされる。

 いわゆる「100円ショップ」が急成長したのは1990年代半ば以降。バブル経済崩壊に続く経済の低迷・賃金水準の下落などを背景に、消費者は一気に100円ショップを求めるようになった。商品コストのダウンも、100円ショップには追い風となった。グローバル化に伴い、人件費の安い中国などから格安の仕入れ価格で流れ込んできたのだ。

 当初は競合していた総合スーパー(GMS)をはじめとした他業態も、上層階にテナントとして100円ショップを呼び込み集客につなげるなど、合従連衡が進んでいる。

揺らぐ100円ショップのビジネスモデル

 根強い節約志向と積極的な店舗展開(22年2月末現在で8400店)をバネに100円ショップの勢いは衰えない。100円ショップでの1人当たり消費金額推計は月額635円、ここ10年で6割も伸び、すっかりわたしたち消費者の日常に溶け込んだ。市場規模は1兆円に手が届きそうな水準となっている。

 ところが順風満帆な業界に、思わぬ伏兵が待っていた。資材価格高騰と海外での人件費上昇さらには物流コスト増など複合要因による資材コストアップだ。集客をねらってグレードアップしてきた店舗投資も、負担としてのしかかる

 もともと100円ショップは、多店舗展開で固定費負担を抑えて薄利多売するというビジネスモデルだ。仕入れが上がってしまっては、100円で売っていけない。すでに競合他社は「300円」「500円」、さらには「1000円」と価格帯を広げ、客単価アップによる収益向上をめざしている。

 そんな中、セリアだけはあくまで「100円均一」を死守してきた。もちろん100円にこだわっているだけでは、原材料費・物流費・人件費などあらゆるコストが上昇する中で確実にジリ貧に陥る。

 セリアの強みは、消費者ニーズを巧みにとらえた商品づくりと、データに基づく効率的な業務オペレーションによる高い収益性にある。セリアは強みを生かしつつ100円グッズを消費者に提供していけるのか、これからが正念場だ。

著者:棚橋 慶次