関西を地盤に百貨店、食品スーパーなど展開するエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長:以下、H2O)が5月12日に発表した2022年3月期連結決算は、売上高が5184億円、営業利益が7億円、当期純利益が98億円と営業赤字・最終赤字に沈んだ前期から一転、黒字転換を果たした。
なお、H2Oでは22年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」を適用したため、売上高は前期と単純比較できない。新収益基準の影響を除いた場合の売上高の前期比較は対前期比6.6%増と前期実績を上回った。当期純利益が前期から300億円以上のプラスとなったのは、減損損失がなかったこと、賃貸不動産の売却益・関西スーパー統合に伴うのれん評価益による。

阪神百貨店

関西スーパー統合により食品事業が急拡大

 コロナ禍に伴うインバウンド消滅、緊急事態宣言下での百貨店に対する休業要請、消費者の外出自粛の影響が直撃した前期から一転して、黒字を確保したH2O。

 コロナ禍の影響を受けず、インバウンド絶頂だった19年3月期業績との比較では、売上高は85%前後まで回復した。ただ、営業利益はようやく黒転したばかりで1割以下の水準にとどまっている。

 07年10月に、阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合により誕生したH2O。社名は地球環境に欠かせない水(H2O)になぞらえると同時に、2つのH(阪急・阪神)統合の意味もかけている。

 H2Oは百貨店事業を核としつつ、食品事業(食品スーパーおよび食品製造)を第2の主力事業と位置付けている。年度によって異なるが、売上高の構成比は2022年3月期では百貨店5割、食品4割となっている。

 セグメント別に見ていくと、主力の百貨店事業は前期に引き続き、緊急事態宣言発令に伴う営業自粛要請(全館休業、または食料品など生活必需品に限った営業)があったものの、消費者のマインドは徐々に上向きつつあり、総額売上高は同10.7%増となっている。(収益認識に関する会計基準変更前数値)。ただし、19年3月期との比較では8割以下にとどまっている。営業利益は、売上高回復に伴い、前年の大幅赤字から28億円増となり、なんとか黒字転換を果たした。

 食品事業では、総額売上高が同11.8%増の3272億円、営業利益は前期から12億円増の53億円だった。21年12月の関西スーパーマーケット(現在は関西フードマーケットの商号変更)経営統合の影響により増収増益となっているが、実質的にはほぼ横ばいだ。売上高営業利益率は1.62%となっている。

 食品スーパーはコロナ禍やインバウンドの消滅ダメージの影響をあまり受けないとされているが、H2Oの食品事業は低迷している。17年3月期に4094億円あった食品事業の売上高は減少を続け、21年3月期には2811億円にまで落ち込んでしまった。「関西スーパー」が加わったことにより、食品事業を成長軌道に乗せることができるかが注視される。

阪神梅田本店がグランドオープン!

 H2Oは23年3月期の業績予想で、売上高が対前期比 27.3%増/前期から1415億円の6600億円、営業利益が同72億円増の 80億円、当期純利益が同 19.0%減/同18億円減の80億円を見込む。百貨店事業の本格回復に加えて、旧関西スーパーマーケットの業績がフル加算されること、大幅増収を計画。当期純利益は前期の一過性要因の反動により減益となるが、2期連続の回復となる見通しだ。

 22年4月の「阪神梅田本店」のグランドオープンも増収に貢献しそうだ。重要な“ドル箱”である大阪・梅田エリアを「阪神梅田本店」「阪急うめだ本店」の2店体制で死守したいとの思惑が透ける。阪神梅田本店の改装工事は2期に分けて実施され、工期は足かけ2年にわたった。2期目にあたる今回の目玉は“稼ぎ頭”の食品コーナーで、「洋菓子ストリート」のほか、総菜やリカー、そして生鮮食品も取り揃える。

 今回の阪神梅田本店のグランドオープンにより、「梅田」と「うめだ」の位置づけはより明確となり、ラグジュアリー志向顧客と日常買い回り客の双方を取り込みに期待がかかる。

売上は回復も利益面は当面苦戦か

 H2Oの目下の課題は、コロナ禍前の業績に「いつ」回復するかだ。

 売上高は23年3月期に19年3月期の水準を超え、1兆円の大台に乗せる(収益認識基準の適用前ベース)。一方、利益面については、コロナ禍前の水準(営業利益200億円台)に回復するのはもう少し先になりそうだ。同社の中期構想では、5年後以降にコロナ禍の水準に戻るとしている。

 とくに、中核の百貨店事業は回復が遅れており、19年3月期に180億円あった営業利益は、23年3月期はその約3分の1の60億円にとどまる見通しだ。コスト構造改革で収益体質への転換を図ると同時に、 21年4月に開業した「寧波阪急」(中国・浙江省)の地域一番店へ育成し、収益性向上をめざす構えだ。

 食品事業の「第2の柱」化も喫緊の課題だ。「イズミヤ」「阪急オアシス」「関西スーパー」の一体運営(物流インフラ等の統合)による収益改善が急がれる。

著者:棚橋 慶次