大戸屋ホールディングス(神奈川県/蔵人賢樹社長:以下、大戸屋)が5月11日に公表した2022年3月期連結決算は、売上高が対前期比16.7%増/前期から26億円増加の188億円、営業損失が5億円(前期は33億円の営業損失)、当期純利益が19億円(前期は466億円の当期純損失)だった。なお同社が重要指標と位置づけるEBITDA※は2億円の赤字だった。
前期のような最悪期からは何とか抜け出したかたちだが、新型コロナウイルスの変異株の登場による緊急事態宣言・まん延防止の発令もあって、客足はコロナ禍前の水準までは戻っていない。※利払い前・税引き前・減価償却前利益

大戸屋の外観写真

客足復活で利益も回復傾向に

 同グループの創業は1958年。池袋に48坪ほどの大衆食堂を開業したのが始まりだ。現在では、定食チェーン「大戸屋ごはん処」を国内外に400店余りを展開する。経営形態としては直営およびフランチャイズ方式を採用している。ファミリーレストラン系の多くがセントラルキッチン方式を導入しているなかで、大戸屋は店内調理を守り、競合との差別化を図ってきた。

 新型コロナウイルス感染に伴う飲食店に対する自粛要請も一時よりは緩和され、以前よりは客足も回復傾向にある。月別の既存店売上高をみても、おおむね前期実績を上回っている。セグメント別に見ても、海外フランチャイズを除いた3つの事業(国内直営・国内フランチャイズ・海外直営)はいずれも前年プラスで着地した。

 これら増収効果に加え、粗利益率の改善および販管費の抑制がEDIDA改善に寄与した。

 緊急事態宣言下における営業自粛要請への協力金が大きく寄与し、当期純利益については過去最高を記録した。ただし、これはあくまで一過性の利益にすぎず、業績回復を意味するものではない。

新経営体制のお手並みは?

 2020年に繰り広げられた、大戸屋を巡る買収争奪戦はまだ記憶に新しい。プロキシー・ファイトに勝ち、大戸屋を掌中に収めたのは、「フレッシュネスバーガー」「牛角」など複数の外食店を経営するコロワイド(神奈川県)だ。

 経営権を握ったコロワイドは大戸屋の取締役11人中10名を解任。コロワイド創業者・蔵人金男氏の長男である賢樹氏が新社長に就任した。この22年3月期は、新体制のお手並みを拝見する1年だったとも言える。

 この1年間の大戸屋は、マーチャンダイジングや店舗オペレーションなどさまざまな改革を進めてきた。21年5月に公表した新中期経営計画(22年3月期〜24年3月期)の進捗を検証してみよう。

 かつて、大戸屋には「安くておいしくてボリュームのある」を求めて、20代〜40代を中心とした多くの男性客が通っていた。そこから大戸屋は大きく路線変更していく。オープンでおしゃれな店舗、野菜をふんだんに使ったヘルシーメニュー、中心価格帯のアップ……そんな大戸屋からかつてのファンは離れていった。

 同社の調査によると、大戸屋を利用したことのある消費者は全体の4割強、ところがそのうち3割近くは1年以上利用がない、いわゆる「離脱層」だ。

 中計では「ガッツリ系定食」を700円前半(現行の価格帯は900円が中心)で多数提供することで、離脱したファンを呼び戻すとしていた。

 買収当時、コロワイド側は「経営統合すれば100円程度(の値下げ)は十分可能」とアピールしてきた。ところが実際は、諸物価の高騰もあり構想は実現できなかったようだ。

メニュー削減、コスト改革は計画通りに進捗

 一方で、メニューの2割削減や店舗オペレーション見直しを通じた、注文から料理ができあがるまでの時間の短縮は計画通り実現している。

 また、出店モデルの転換についても、フードコートや温泉ランドへの出店など新業態の展開、内装などの見直しによる出店費用の引き下げ(6〜7000万円から5000万円前後に)、「大戸屋おかず処(総菜専門店)」の期間限定出店(京王新宿・小田急ハルク等)などを計画に沿って推進した。

 コストの見直しにも取り組んだ。パート・アルバイトのシフトや作業の割り振りなど、労務管理ルールの標準化、コンサルタント費用などムダな経費の削減とコロワイドとの共同購買推進により、収益性改善につなげた。

 なお、買収当時にささやかれたセントラルキッチン導入はうわさに過ぎなかったようだ。なんといってもコロワイドグループは全国5カ所のキッチンセンターを核に外食店を展開しており、セントラルキッチン化は根も葉もない話ではなかった。

 ただし、今のところその動きはない。蔵人社長も「店内調理こそ大戸屋の強みであり、手をつけるつもりはない」と明言している。

中期経営計画は達成できるか

 23年3月期の業績予想は、売上高が対前期比33.6 %増/前期から63億円増加の251億円、当期純利益が同50.1%減/同9億円減の9億円、EBITDAは前期比から21億円増の17億円を見込む。

 ちなみに中計最終年度の24年3月期には、売上高は258億円、EBITDAは20億円を目標とする。仮に今期の業績予想どおりにいけば、売上高は過去最高の262億円まであと一息、収益性も過去最高の水準に達することになる。

 問題は、中計を本当に達成できるかどうかだ。22年3月期はコロナ禍が長引いたこともあって、売上高・EBITDAは計画未達に終わっている。コロワイドお得意のコストダウン・効率化は進んだものの、目玉としていた男性客の呼び戻しはそれほどうまくいってない。23年3月期も未達で終わるようなら、中計自体の実現性に疑問符が付くかもしれない。

著者:棚橋 慶次