ツルハホールディングス(北海道/鶴羽順社長:以下、ツルハHD)が6月21日に公表した2022年5月期連結決算は、売上高が対前期比0.4%減の9157億円、営業利益が同16.1%減の405億円、当期純利益が同18.6%減の213億円だった。02年2月に同社が東証二部に上場して以来、初の減収であり、北海道に拠点を置く企業としては第1号となる(売上高)1兆円企業の誕生はもう少し先になりそうだ。

札幌市内のツルハドラッグ
札幌市内のツルハドラッグ

上場以来初の減収に

 ツルハグループの創業は1929年、北海道旭川市に「鶴羽薬師堂」を開業し、戦後「ツルハ薬局」と改称。現在では、東日本(北海道・東北・関東甲信越)を中心として、全国に2522店(2022年5月末現在)を展開するドラッグストアチェーンに成長している。売上高はトップのウエルシアホールディングス(東京都)に若干及ばないものの、業界2位の位置につける。

 成長戦略では自力による出店だけでなく、同業他社の買収にも積極的で、傘下には「杏林堂薬局」「くすりの福太郎」「ドラッグイレブン」「レデイ薬局」などを擁する。ちなみに株主トップはイオン(千葉県)グループだが、独立志向が強く、経営権は創業家一族が握っている。

 22年5月期決算の概況を見ていこう。ツルハHDは22年5月期より「収益認識に関する会計基準」を適用しており、基準適用前の売上高は同2.5%増の9420億円となっている。ただ、かつては7%増以上の勢いで売上高が伸長してきたことを考えると、成長は鈍化傾向にあり、当初計画も下回っている。

 要因としては既存店売上高前期比が2.3%増の計画に対し同1.0%減と落ち込んだのが大きく響き、新規出店による増収効果を相殺した。なお店舗数は、東北・関東甲信越を中心に159店舗を開業、57店舗を閉鎖した。

調剤事業が成長中!

 主力商品の実績(ドラッグイレブンを除く)では、売上高構成比で21.6%を占める医薬品が、調剤を中心に伸長した結果、売上高は対前期比5.3%増の伸長を見せた。調剤には、前年の新型コロナウイルス流行に伴う受診控えの反動に加え、導入店舗の増加もあって大きく成長している。なお調剤は、全国762店舗のうち半数以上をツルハグループ以外の店舗が占めており、調剤売上高の拡大は買収効果によるところが大きいと言って良い。

 売上高構成比25.0%を占める食品も、売上高は同7.1%増と前期実績を大きく上回った。回復傾向にあるとされる化粧品は前期からほぼ横ばいだった。プライベートブランド(PB)については、「エムズワン・メディズワン」シリーズが化粧品・日用品を中心に150SKUを新規投入したことが奏功し、売上高は同9.1%増に伸長している。

 利益面については、利益率の高い調剤やPB商品の増加により、粗利益率は0.6ポイント改善したものの、コロナウイルス対策商品の在庫評価損、原油価格高騰に伴うユーティリティコスト、QRコード決済普及に伴う手数料負担増などにより、営業利益以下の段階利益は減益となった。

今期は過去最高売上高へ

 2023年5月期の業績予想は、売上高が対前期比5.8%増の9688億円、営業利益が同5.3%増の427億円、当期純利益が同5.9%増の226億円を見込む。売上高は過去最高となるものの、営業利益は20年5月期を下回る計画だ。

 主な取り組みは、「デジタル戦略の推進」(CRMの構築と「1to1マーケティング」の進化)、「調剤事業戦略」(新規開局119店舗)、PBラインナップ拡充をはじめとした「プライベートブランド戦略」、ITインフラ・業務管理の構築・整備といった「グループ管理体制の強化」、「サステナビリティ推進」の5本柱で、基本的に21年5月期に掲げたテーマを踏襲したものとなっている。

 店舗戦略についてはスクラップ&ビルドを継続し、151店を開業する一方で70店舗を閉鎖する。

新中計がスタート

 さてツルハHDは、今回の決算発表と同時に新中期経営計画を発表した。前中計では24年5月期の売上高1兆円達成をめざしていたが、新中計ではこれを1年後ろ倒しする。

 成長性よりも急務とするのが収益性の改善だ。一時は6%を超えていた売上高営業利益率は22年5月期に5%を切り、長らく10%を超えていたROE(株主資本営業利益率)も12年ぶりの1ケタ台となった。

 エネルギー費や資材費、物流費といったコストの高騰に見舞われ、収益環境が急速に悪化する中、新中計では24年3月期までに売上高営業利益率を5%台に戻すとしている。

 収益性回復のキーファクターとなるのは、店舗への調剤薬局併設による処方箋取り扱い伸長と、PBの拡充だ。これらは利益率が高く、収益性回復への寄与が期待できる。ただし、競合も似たような戦略を採っていることもあり、あまり目新しいものとはいえない。

 今まで成長を支えてきた店舗展開も、競争激化と人口減少によって転換期を迎えている。ドラッグストア1店舗当たりの商圏人口は、14年の9736人から採算ラインに近い7124人まで落ち込んだ。中計でも、24年3月期までの店舗数を3000店から2750店に落とした。

 同業との上位争いも安閑としていられない。マツキヨココカラ&カンパニーはいよいよ経営統合効果を発揮し、23年5月期の予想売上高はツルハHDに肉薄する。

 ツルハHDでは29年5月期に達成すべき目標として「売上高1兆5000億円」「売上高営業利益率6.0%」を掲げる。この意欲的な目標を達成できるかどうかは、商品・店舗戦略において具体的なロードマップを描けるかにかかっている。

著者:棚橋 慶次