木村拓哉氏がアンバサダーを務めるゴルフウエアブランド「MARK & LONA(以下、マークアンドロナ)」(キューブ:東京都/松村智明社長)がコロナ禍においても売上好調を維持している。LAでデビュー以来、ラグジュアリーをコンセプトとしたデザインで注目を集める本ブランドが、熱狂的なファンを世界中に獲得し続ける理由は何なのか。

デザインでゴルフ界に風穴を開ける

2022年秋冬コレクション
2022年秋冬コレクション

 「退屈を着るか、自由を着るか。ゴルフに自由を」。

 そんな強い思いから、ゴルフウエアブランド マークアンドロナの快進撃は始まった。2006年に前進となるブランドを米国ロサンゼルスで発表、コレクションの拡大とともに2008年にマークアンドロナに改名した。数百年の歴史があるゴルフには他のスポーツにはない厳格なドレスコードがあり、クラブハウスではブレザーを着用、襟付きシャツを長ズボンにタックイン。長靴下に帽子と保守的で、どこか垢抜けなかった。「おじさんスポーツ」「接待ゴルフ」などのキーワードも、若者のゴルフ離れを助長していたように思うが、マークアンドロナは「ラグジュアリーゴルフ」をコンセプトに掲げ、古い体質に風穴を開けるべく革新的なデザインを提案し、ゴルフ業界で快進撃を続けている。

 マークアンドロナを立ち上げたのは、キューブ代表の松村智明氏で、同ブランドのクリエイティブディレクターでもある。ビジュアルの指針となるロゴは、ゴルフとはかけ離れたイメージのあるスカルのアイコンを採用し、「真夏にベロア生地のセットアップ」、「フリルだらけのポロシャツ」などファッション性の高いウェアをリリース、程なくして関心を示したのがLAのバイヤーやセレブだった。ファッション誌、ゴルフ雑誌などに取り上げられただけでなく、フレッド シーガルなどの著名セレクトショップで販売されるようになった。

 LAで幸先の良いスタートを切ったことで、エストネーションやユナイテッドアローズなど国内の著名セレクトショップで大きく取り扱われるようになり、2009年に初の旗艦店を表参道ヒルズにオープン。2014年からはアジアを中心に海外進出へ。現在、世界70箇所の店舗で取り扱われ、売上の半数近くは海外のファンが支えている。

カリスマの条件は独自性、エンタメ性、希少性

アシックス
アシックスとのコラボスニーカー

 今やファッションゴルフの代名詞として愛されるマークコロナの強みは、「独自性」「エンタメ性」「希少性」の3点だと松村氏は説明する。

 コアターゲットは「ラグジュアリーニッチ」と称するいわゆる世界の富裕層だ。価格帯は、トップス28000円〜12万5千円、ボトムス3万5千〜6万5千円、キャディバック10万〜21万円ほどで、遊び心あふれるデザインと、自社開発素材や立体裁断を用いたスポーツウエアとしての高い機能性を両立させたことで、ゴルフウエアブランドとして一目置かれるようになった。そうした独自性は、松村氏を筆頭に10名以上のデザイナーが細部までこだわりぬいて実現できるものだ。

 また、ファンをワクワクさせるエンタメ性も、マークアンドロナならでは。ゴルフ業界においていち早くコラボレーションを展開してきた。コラボ先はポケモンやディズニーなど世界的に知られるキャラクターから、フィギアの「ベアブリック」、コスメブランドの「ジョンマスターオーガニック」など多岐にわたる。スイスの高級時計「ウブロ」とはファッションショーも開催、業種の壁を超えたユニークな顔ぶれとあって「コラボを通してマークアンドロナを認知してくださる方も多く、ブランドの幅が広がっている」(松村氏)

 中でも好評なのは、アシックスとタッグを組んだスニーカー。発売とほぼ同時に完売したモデルもあるという。

 また、10年ほど前からゴルフウエアブランドとしては珍しい国内外へ向けた復興支援のチャリティイベントをECと店舗の両方で開催している。東日本大震災、ピンクリボン(日本対がん協会)、ジャパンハートなどだ。こうした取り組みが数々のメディアに取り上げられており、ファッション以外のコンテンツの豊富さも、マークアンドロナの強みだ。地道な活動を経て、ファッションゴルフという新たなライフスタイルを世に訴求している。

コロナ禍に絶好調の理由は

「CODE (コード)」コレクション

 そんな中、マークアンドロナは、最高売上高を更新し続けている。コロナ禍に飛躍できた理由は何なのか。

 「商品企画力と幅広いジャンルで提案する圧倒的な『アイテム数』だと思っている。パンデミックに陥り各社のビジネスが滞る中で、弊社はコロナ禍であっても粛々と通常ラインの『GENERAL(ジェネラル)』に加えてハイエンドラインの『CODE (コード)』やストリートテイストの『ALARM(アラーム)』など時代が求める商品を先駆けて発信した結果、アンバサダーの木村さんの影響力も加わり、圧倒的にブランドの知名度が高まった」(松村氏)

 プレーヤーとの距離が確保できるゴルフが再注目されたという世の世相も売上につながった。さらに若手の女性プロゴルファーの活躍が追い風となり若年層のゴルフ人口が増えたことも、マークアンドロナ好調の一因だと松村氏は分析する。ちなみにマークアンドロナの男女比率は、国内が男性の方がやや多く、海外は女性ファンが多い傾向にある。

安売りはしない。希少性がファンの枯渇感をうむ

ジャケット
ビジネスシーンにも活用できる「CODE COLLECTION」のジャケット

 3つ目の魅力は希少性だ。定価で売り切ることを原則とし、セールやアウトレットにも頼ることがない。どんなヒット商品が生まれようとも商品の価値を保つために安易な追加販売は行わない。その結果として、ファンに枯渇感がうまれ手に入れたときの満足度が上がるのだろう。

 「商品の流通を徹底的にコントロールすることで、高いプロパー消化率を維持している。この考え方は、私がセレクトショップを経営していた時から変わらない」(松村氏)

 松村氏は大学卒業後に大手家電メーカーの営業マンとして勤務したという異色の経歴の持ち主だ。「パソコンがない時代からシステムに携わっていた」と言い、マークアンドロナのECサイトも自ら手がけ、軌道に乗せた。

 27歳で脱サラし、アパレル経験ゼロから地元湘南に「自分が欲しいものを届ける」セレクトショップを立ち上げ、約10年間、店に立ち続けた。その間、アメリカやヨーロッパに洋服や雑貨や食品の買い付けに行き、時には壁にぶつかることもあった。「大手セレクトショップはどんな商品でも買い付けできるが、地方の小さなショップは相手にされないこともままある。店を続けるためには創意工夫するしかない。例えば、このTシャツは下げ札をこうデザインしなおしたらもっと魅力的に見えるとか。考えて努力して店を守ってきた」(松村氏

 そうした現場経験は、松村氏独自のスキルとして開花していく。アパレルの輸入代理店事業をはじめると、現地のデザイナーにアドバイスする立場になったのだ。客の心がわかるからこそ的確なアドバイスができる。松村氏が口を出せば、商品は売れた。2004年のキューブ代表取締役に就任と同時に、渋谷区神宮前に拠点を移し、本格的にアパレルの卸事業をスタート。英国発のゴルフウエアブランドのコンサルタントや、欧米のインポートブランドの代理店事業をメインに展開し、会社の業績も順調に伸びていったが、「世の中にないブランドを創りたい」との想いを無視できなくなり、マークアンドロナを立ち上げることになった。

時代の顔を創りたい

キューブ社長
松村智明社長

 202010月にローンチした越境ECMARK & LONA GLOBAL ONLINE STORE」も好調だ。欧米を中心に、フランチャイズのオファーが絶えないというが、「急ぐことなく、弊社が考える成長戦略の中で、このブランドの希少性を理解してもらえるパートナーを見つけていきたい」と話す。

 一方、サプライチェーンの物価高騰はマークアンドロナにとっても課題であり、原料の値上げは他人事ではない。

 それでも思いは揺るがない。時代の記憶に残るような商品や感動を提供し、優雅なライフスタイルを共に過ごすパートナーとして、”時代の顔を創る”ことを企業理念に掲げている。

 「平成のギャル文化を懐かしむように、いつか、『令和にドクロマークのゴルフウエアがあったよね』と思い出してもらいたい。そのためにも、時代の顔になるような日本初のプレミアムラグジュアリーブランドに育てていきたい」と松村氏は締めくくった。

著者:両角晴香