中古厨房機器販売店「テンポス」を全国に展開するテンポスホールディングス(以下、テンポスHD)が発表した2022年4月期通期決算は、売上高が290億800万円(前年同期比7.4%増)、営業利益18億7100万円(同90.6%増)、経常利益29億1900万円(同101.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益15億6400万円(同686.1%増)だった。通期の経常利益は過去最高となった。長引くコロナ禍で、主たる顧客層である飲食店の先行きがなお不透明ななか、中古業務用厨房機器の販売から、飲食店の経営サポートまでその守備範囲を広げた同社の成長戦略をまとめた。

テンポス新宿店
テンポス新宿店

業務用厨房機器のリサイクルから急成長

 テンポスHDは、業務用厨房機器の新品商品販売、および中古品の再生販売を主軸とする。いわばBtoBのリサイクルが儲けのメインだ。

 創業は1997年。森下篤史社長が全国のリサイクルショップを視察し、儲かる商売と見極め、スタートした。2002年にはジャスダック上場を果たし、買収なども行いながら、規模と業容を拡大している。

 昨今は、厨房機器のリサイクル業から深化。経験と実践で積み重ねた知見を活用し、飲食店の経営サポートにも注力している。「飲食店の5年後の生存率を5割から9割にする」と掲げ、飲食業界の「医師」として、その経営面にまで踏み込み、業界での地位を揺るぎないものにしつつある。

ソフト面の強化で揺るぎない企業へ

 目指すのは「外食産業にハードとソフトを提供できる揺るぎない企業となる」こと。すでに、自らを「1強100弱」と表すように、業界での存在感は圧倒的だ。とくに、ハード面、つまり厨房機器の扱いでは他の追随を許さない。

 新規オープン時に納品する、閉店後の厨房機器を買い取り、中古品として販売する。全国60店舗での膨大な数の取引によって、飲食店の栄枯盛衰を生で見てきた実績は、そのまま飲食店運営の生きたデータとして蓄積される。

現場で蓄積した生データが強みの源泉

 ハードの納入だけにとどまらず、サポート視点と未来思考で、飲食店が生き残る分岐点を見極めてきたからこそ蓄積できた「ソフト面」の熟成も同社の強みの源泉だ。

 加えて、飲食事業として、ステーキのあさくまを運営することで、運営側ならでは苦労や課題も把握。実践の中でトライアルアンドエラーを繰り返しながら、飲食店経営の極意を磨き上げている点も同社の強みとなっている。

飲食店経営の医者として安楽死の診断も

 こうして現場から吸い上げた生きたデータから生まれた新たな事業が、同社が昨今注力する「Dr.テンポス」構想だ。その名の通り、同社が飲食店の診断医・主治医として、飲食店経営を総合的に支援する事業となる。

 北欧の手厚い社会福祉の表現として「ゆりかごから墓場まで」といわれたものだが、同事業は、飲食店を開店から閉店までサポートする手厚いサービスで利用者をフォローする。

 まず、売上や粗利、人件費等の推移を確認し、店舗状況を把握。その上で、状況に合わせた支援を行う。例えば集客支援として、クーポンサイトに無料掲載したり、ホームページを作成したり、SNSの運営代行をしたり…。

 いわば問診となるこうしたプロセスを経て、さらに状況に応じ、「治療」を行う。さらなる売り上げが見込めるなら、店づくり・多店舗展開等をサポート。売り上げが芳しくなければ、集客や販促、教育でテコ入れする。そして、手遅れと診断すれば、閉店後の従業員、店舗、お金の支援を行い、「安楽死」させる。

ぐるなびとの業務提携で体制強化

 水物とも言われる飲食店経営だけに、ここまで手厚いサービス体制があれば、利用側も安心して身を委ねることができる。同社としては、厨房機器のリサイクル販売だけに止まらない、こうした支援のリターンとして新たな取引につなげることが狙いだ。

 現状では、人材育成も含め、同事業は苦戦しているが、5月にぐるなびと業務提携し、体制を強化。ぐるなびが持つ、飲食店の販売促進を中心とした経営支援の強みとのシナジーを図り、飲食店の開店〜運営〜閉店まで全てのプロセスにおいて、より一層付加価値の高いサービスを総合的に提供することを目指していく。

 具体的には、人材交流を通じた販売力向上・人材育成、各種サービスの営業連携、商品連携及び両社での新規サービス企画の推進等を予定。企業価値の向上、そして外食産業の持続的な発展へとつなげる。

子会社のテンポスフードプレイスは、飲食店の開業から運営までをサポートする
子会社のテンポスフードプレイスは、飲食店の開業から運営までをサポートする

トータル支援強化で来期も増益見込み

 「総合病院」としてのさらなる体制強化で、経営基盤の一層の安定を図る同社は、2022年4月期の業績を、売上高338億8000万円(前期比16.2%増)、営業利益30億1500万円(同61.1%増)、経常利益32億2000万円(同10.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益19億1000万円(同21.8%増)を見込む。

 先行き不透明な経済情勢にあって、ただモノを売るだけではなかなか振り向いてもらえない昨今。売ったその先までもしっかり見据え、フォローするーー。そこまでしてようやく信頼してもらえる。成果が出れば、継続につながる。現場での肌感覚と業界トップの使命感ゆえの戦略であり、境地といえるだろう。

 飲食店の開店から閉店までをサポートする企業へと深化を遂げる同社。トータルサポート企業へ向けた業容の拡大は、リスクヘッジ的な要素が強い多角化とは一線を画しており、今後の成長企業の一つの王道となる可能性も十分にありそうだ。

著者:油浅 健一