冷凍食品大

冷凍食品市場“超”拡大!

 これまで冷凍食品になじみがなかった層が手を伸ばすようになり、「ヘビーユーザー」が増加した──。日本冷凍食品協会広報部長の三浦佳子氏は、コロナ禍における市販用冷凍食品の顧客動向をこのように分析する。実際に、それを裏付けるデータがある。同協会が2022年2月に実施した「“冷凍食品の利用状況”実態調査」(全国の男女1250人が対象)では、「冷凍食品を月1回以上利用する」と答えた人は対18年比で22年は約6.6%増えている。また、「冷凍食品の利用頻度が1年前より増えた」と答えた人も約22%いる。

 より多くの消費者が冷凍食品を購入するにつれて、冷凍食品の市場規模も拡大している。富士経済グループによると、21年の市販用冷凍食品の販売額(見込み)は1兆684億円と、20年から約2%伸長している。コロナ前の19年と比較すれば、約8.5%成長しているのだ。

 なぜ、冷凍食品はこれほどまでに成長しているのか。約40年間市場を調査してきた冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏は「お客の『冷凍食品=おいしくない』というバイアスがなくなってきた」とその理由を説明する。コロナ禍で在宅時間が伸長し、保存性の高い冷凍食品を買う消費者が増えたのと同時に、その利便性やコストパフォーマンスの高さについての認知が広まった。さらに、冷凍弁当や冷凍ミールキット、冷凍スイーツなどこれまでメジャーではなかったカテゴリーについても、メーカーの技術改良もあり、消費者は「おいしく、簡単に調理できる」ことにあらためて気づいたのである。

 その結果、冷凍食品の食シーンも広がっている。これまでは「弁当用おかず」が冷凍食品の主軸だったが、現在は主食、おかず、デザート、おつまみと、食シーンが多様化しているのだ。

SMでは冷凍食品が絶好調

図表❶食品スーパーのカテゴリー別売上推移

 20年から始まったコロナ禍による内・中食需要の高まりは食品スーパー(SM)に「特需」をもたらした。そのなかでもとくに好調だったのが冷凍食品である。日本食研ホールディングスの社内シンクタンクである食未来研究室によると、SMのカテゴリー別売上推移では、冷凍食品が総菜、レトルト食品など他の即食系商品を抜き、ダントツで売上を伸ばしている(図表❶)。19年12月を基準にしたときに、冷凍食品の売上は22年10月に16%伸長、総菜は7%、レトルト食品は8%と、中食カテゴリーの中でも、冷凍食品が最も伸び率が大きいと言える。またSM1店舗当たりの冷凍食品の平均売上規模は21年に約3180万円と、19年の約2871万円から300万円以上増えているのだ(KSP-SP「KSP-POS」より食未来研究室分析)。

図表❷食品スーパー1店舗あたりの冷凍食品の分類別売上推移 そんな絶好調の冷凍食品の中で、カテゴリー別に売上を分析すると、とくに「即食」ニーズを満たす「冷凍総菜」の伸びが著しいことが分かる(図表❷)。チルドの総菜と比べて、一般的に保存が利く点が支持を獲得している。また、エスニック系メニューなどの香りが強い商品では、冷凍技術の進化により、チルドよりも冷凍のほうが解凍後に「本格的な味や香り」を楽しめる特性を持つ商品も多く、消費者の支持を受けているのだ。

高まる時短ニーズ、献立難民の救世主?

 近年の冷凍食品需要の高まりは、お客のライフスタイルの変化によるところも大きい。総務省の家計調査によると、17年8月の配偶者の平均月収は約5万8000円だったのに対して、21年8月は約8万3000円、22年8月は約9万円と年々増加している。女性の社会進出が進んだ結果、夫婦共働きが一般的となり、調理に割く時間が相対的に減った。また、「献立難民」というフレーズが20年に広まったように、在宅時間の増加によって、家で食事をとる時間が増えた事実も見逃せない。

 つまり、日々の食卓に出すメニューのレパートリーに悩む消費者が増加しているのだ。そんな状況のなか、総菜や簡便商品と同様に「下ごしらえ不要」「フライパンで炒めるだけ・レンジで温めるだけ」で日々の調理の手間を省くことができ、かつ「専門店のような本格的な味」も手軽に楽しめる冷凍食品に対する需要が伸びたのは想像に難くない。

 「時短」で調理を終わらせたいというニーズは年々顕著になっている。食未来研究室によると、1食当たりに出される品目数は21年8月に2%減の約4.4品目、22年9月に3%減の約4.3品目と年々減っている(いずれも対19年12月比)。それと比較すると、「1メニュー」当たりに使用される材料数は対19年8月比で、22年8月は2%増と、逆に増えている(いずれもインテージ「キッチンダイアリー」より食未来研究室分析)。これらデータから読み取れるのは「栄養たっぷりな」食事を家族に提供したい、というお客の潜在意識は変わっていないのだが、「調理にかける工数を減らしたい」という欲求が年々顕在化しているという事実だ。

 これを同時に解決するのが冷凍食品、とくに冷凍水産ミックス素材や冷凍ミックス野菜である。事実、下ごしらえなしで調理可能で、素材が複数入っている冷凍の野菜ミックスの売上規模は、対18年比で21年は約13%伸長している(KSP-SP「KSP-POS」)。さらに、22年以降はコストプッシュ型のインフレの影響で、節約志向が強まると予想される。家計にとっては、比較的「安価」に調理でき、保存性にも優れる冷凍食品の存在感が増していくだろう。

 このように、生活者を取り巻くマクロ環境の変化に応じて、冷凍食品の使われ方が変化している。一昔前の「冷凍食品=お弁当用」という買われ方はもはや一般的ではないのだ。つまり、冷凍食品市場の拡大は、単なる「流行」ではなく、お客の「食生活の変化」として、定着していく可能性が非常に高い。食品小売業にとって冷凍食品は、現在もさることながら将来的にも逃すことができない「商機」となっているのだ。

既存店の売場拡大、新商品開発に取り組む各社

 小売業各社はこの成長市場をつかむべく、さまざまな施策を打っている。イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は、22年8月に約1500アイテムを取り扱う冷凍食品専門店「@FROZEN(アットフローズン)」をオープン。同業態は客単価が既存店よりも約20%高く、高単価の商品の訴求に成功している。同社は、既存店においても向こう3、4年ですべての既存店の冷凍食品売場を拡大させていくという。

 総合スーパー(GMS)を運営するイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)も「店舗改装における冷凍食品売場の拡大は優先順位が高い」(同社広報担当者)という言葉のとおり、冷凍食品売場を拡大させた店舗改装を行っている。商品面においても個食ニーズに対応したプライベートブランド(PB)の「EASE UP(イーザップ)」を開発し、「自宅で、専門店の味」という価値を訴求する。

 宅配事業を主とするコープデリ生活協同組合連合会(埼玉県/土屋敏夫代表理事理事長)は、オリジナル商品の冷凍ミールキットをニチレイフーズ(東京都/竹永雅彦社長)らと共同開発。同カテゴリーは、40代以下の若い組合員の支持を獲得している。

 コンビニエンスストア(CVS)では、ローソン(東京都/竹増貞伸社長)が、冷凍デザートや冷凍刺身、冷凍ベーカリーなどの「新機軸」のPB開発に邁進する。既存店に冷凍平台ケースを導入するなど、冷凍食品売場拡大にも取り組んでいる。

 シズル感に乏しく、無機質になりがちな冷凍食品売場で、独自の取り組みを行っているのが、福島県を拠点にSMを運営するリオン・ドールコーポレーション(福島県/小池信介社長)だ。同社は、21年5月に、冷凍食品を前面に打ち出した新業態「みんなの業務用スーパー Lynx(リンクス)」をオープン。生鮮冷凍食品売場にレシピ提案のPOPを設置するなど「食卓で食べるイメージが湧きやすい」売場を構築している。

 食品卸売業においては、伊藤忠食品(大阪府/岡本均社長)は、テクニカン(神奈川県/山田義夫社長)と共同で冷凍食品ブランド「凍眠市場(とうみんいちば)」を立ち上げた。テクニカンの独自技術で、素材の味を解凍後そのまま再現できる冷凍刺身や冷凍生肉などを展開している。

 また、ロピア(神奈川県/髙木勇輔社長)は傘下企業によるオリジナル商品開発で、30〜40代の子育てファミリー層に「大容量」「専門店の味」といった価値を訴求し、他社との差別化を図っている。

 本特集ではSM、GMS、CVS、食品卸売業と、多岐にわたる業態で冷凍食品需要をつかもうとしている各小売業を取り上げるとともに、専門家らによる寄稿、有力店舗の冷凍食品売場の調査結果を掲載する。

 今後も成長を続ける冷凍食品市場と変化する消費者のニーズを理解するべく、役立ててほしい。

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著者:湯浅 大輝