2022年の食品スーパーは売上の前年比に苦しみましたが、総菜と冷凍食品は好調でした。総菜は食品スーパーの取り扱い商材の中では珍しく、外食や内食から需要を奪える部門であることは以前にも触れました(食品スーパーで、「総菜の売上」だけがどんどん伸び続ける納得の理由とは)。一方の冷凍食品は、総菜にも増して他カテゴリーからのスイッチ需要を獲得しているようです。売場は拡大を続けており、外食産業からの参入も続く昨今の情勢をみると、食のあらゆる代替ニーズは冷凍食品を目指しているのかと思うほどです。

専門店のように売場を拡張して冷凍食品の可能性を探るイオンリテールの「@フローズン」
専門店のように売場を拡張して冷凍食品の可能性を探るイオンリテールの「@フローズン」

「リーズナブル」へとスイッチする道理

 最近の冷凍食品売場の規模は、以前の1.5〜2倍があたりまえになっています。ライフ豊洲店(東京都江東区)のように、別フロアにスピンオフしてでも冷凍食品売場を広く確保するという発想は以前にはなかったものですし、イオンリテールは新たなコンセプトの冷凍食品売場「@フローズン」をイオンスタイル新浦安MONA(千葉県浦安市)内に設け、冷凍食品の発展性を探っています。

 食の消費量が増えない以上、ある分野が成長するには、他の分野から需要を奪ってくるしかありません。それは総菜にも冷凍食品にも通じることです。ヤオコーの川野澄人社長は、外食から総菜へ需要が流れている現状について、23年3月期上期の決算会見で以下のように言及しました。

「デリカの構成比が高まっている一因には、外食の値上がりがあると思います。ハンバーガー、牛丼、回転寿司など、生活者は日常的な外食の値上がりを強く感じているはずです。当社で寿司などが好調なのも、外食ニーズを取り込めているからでしょう」(川野社長)

 外食よりもリーズナブルに代替できる食品スーパーの総菜に商機が生まれているというわけです。そして、総菜よりもさらにリーズナブルに代替できるのが冷凍食品です。

 チャーハン、餃子、麺類、ピザなど、総菜売場の主要メニューはたいてい冷凍食品にもあって、とりわけ量を食べたいときや2人前以上を必要とする場合などは総菜よりも割安です。冷凍食品には加熱の手間もありますが、その分アツアツに仕上がります。食べ終わった後に残る包装容器も、冷凍食品の方が少なく済みます。当日食べ切りの総菜に対し、当然ながらストックできる利点もあります。

 冷凍食品のメリットは数多くありますが、やはり総菜よりもリーズナブルという魅力は大きいように思います。物価高の環境で、需要の代替を促すのはなんといっても割安感です。個人的には、自宅でのランチを探して総菜売場を見たうえで、やっぱり冷凍食品にしようと思う機会がここ数年で増えました。冷凍食品で代替できないのは寿司くらいです(冷凍寿司も出てきていますが…)。なるほど川野社長の言うように、寿司は総菜売場で買います。

「割安感」を得たとき、冷凍食品は無敵?

外食や専門店の味も家庭で味わえる冷凍食品に(ライフビエラ蒔田店)
外食や専門店の味も家庭で味わえる冷凍食品に(ライフビエラ蒔田店)

 外食企業の家庭向け冷凍食品への参入も相次いでいます。コロナ禍以来の流れで、牛丼のような日常的なものからファミレス、デパ地下の総菜専門店、ご当地餃子、航空機内食まで、外食の味を幅広く購入できるようになりました。外食の移植は食品スーパーの冷凍食品売場に新しい価格帯のカテゴリーを創出しつつあります。一食としては総菜部門より高単価なものもありますが、外食よりはリーズナブルという割安感が働いています。この試みは外食にとっても食品スーパーにとっても魅力的なので、コロナが完全に収束した後もチャレンジは続くと思われます。

 冷凍食品躍進の要因は、総菜や外食からの流入にとどまりません。日配やグロサリーからのシフトも進んでいます。冷凍麺は市場全体が伸長しています。外食・総菜からのシフトに加え、乾麺やチルド麺からのスイッチもあります。麺を茹でずに電子レンジで済む便利さは強力です。ただ、経済性またはバラエティの豊富さからいって、まだまだ乾麺やチルド麺を選ぶシーンは少なからずあります。しかし個人的には、ピザや餃子のように、もはや冷凍食品に完全に移行してしまったものもあります。

 生鮮素材も「冷凍食品化」が進んでいます。魚の切り身や干物、挽肉などはその例です。野菜は、サラダを冷凍素材にスイッチするのは困難ですが、用途次第では可能なものもあります。果実はフローズンの方が割安になる場合があり、生ゴミも出ない便利さもあります。

 冷凍食品へのスイッチは、その利便性に割安感が伴ったとき、強力に進むはずです。割安感とは、目的に応じた品質と価格のバランスであり、満足感とも言い換えられます。冷凍食品はいろいろなカテゴリーで、この割安感を備えてきました。だからこそ今や家庭の冷凍庫はパンパンになり、食品スーパーの売場にも収まり切らなくなって、新店や改装店での拡張が続いているのでしょう。

著者:宮川耕平(日本食糧新聞社)