人の手に代わり卵を割る「割卵機」が注目を集めている。近年は、スーパーマーケット店舗の加工場に置くことができる小型の「ミニ割卵機」が登場しており、総菜を強化部門とする大手各社が続々と導入を決めているという。スーパーマーケットにおけるミニ割卵機の動向について、鶏卵メーカー向けの機械開発を手がける共和機械(岡山県/友末琢磨社長)に聞いた。

スーパーの調理台に省スペースで設置できるミニ割卵機

 共和機械が製造するミニ割卵機が、全国のスーパーマーケットで次々に導入されている。その名の通り、人の手に代わり卵を割る機械で、卵を使った総菜を販売するスーパーマーケットなどに向けた製品だ。

共和機械、取締役営業部長の松本二郎氏。
共和機械、取締役営業部長の松本二郎氏。

 「割卵機は、もともとは液卵を大量生産する大手メーカー向けに作った大型機械だった。しかし、コンサルティング会社から『あるスーパーが、調理台スペースにも収まるようなミニサイズの割卵機を欲しがっている』という話を聞き、ミニ割卵機の開発を始めた」。そう話すのは共和機械で取締役営業部長を務める松本二郎氏だ。

 共和機械がスーパーマーケットに向けて展開するのは、「QK-30」という名称で、同シリーズには卓上タイプでモーター搭載・自動式の「QK-30M」、キャスター付きのワゴンと一体型でモーター搭載・自動式の「QK-30W」、手動式ハンドルを備えた電源不要の卓上タイプ「QK-30T」の3種類ある。卵を投入すると、筒状部分を転がり落ち、下に設置された専用カッターで半分に割る、という仕組みだ。いずれも1時間に最大2000個ほどの卵を割ることができる。

共和機械、割卵機の割卵シーン

 「人の手で2秒に1個卵を割ると考えると、1時間当たり1800個の卵を割ることができるため、実は割卵機で卵を割るスピードと大きな差はない。しかし、総菜の調理場では、作業者が割卵から調理までを担当することが多く、卵を割る作業は、作業者の大きな負担となっていることが多い。割卵機はその負担を軽減し、作業効率を上げるために活用されている」と松本氏は説明する。

大手スーパーの採用を契機に導入拡大

 このミニ割卵機が注目されるきっかけとなったのが、ある大手スーパーマーケットへの導入だという。一般的に、スーパーマーケットの総菜製造の現場では、卵がすでに撹拌された状態の加工品である「液卵」を使用しているケースが多い。ただ近年は、店内で割った新鮮な卵を使うことで、液卵では出せないおいしさを追求するチェーンも一部で現れ始めている。前出の大手チェーンの総菜部門では、年間200万パック以上の卵を使用しているそうで、割卵作業が店舗従業員の大きな負担となっていたという。この負担を軽減すべく、ミニ割卵機を導入したというわけだ。

 ミニ割卵機が主に使用されているのは、対面式の調理場で焼き上げる「厚焼き玉子」などの調理工程だ。卵を焼くすぐそばで割卵機を使用する効率のよさが、見学に訪れた業界関係者やコンサルタントの目に留まり、思わぬ反響があった。

 「ありがたいことに、その大手チェーンで割卵機が使用されるようになってから、小売業界を中心にぜひ取り入れたいという声が多く寄せられた」(松本氏)。今では、多くのスーパーマーケットが共和機械のミニ割卵機を導入しているという。

よりこまやかに顧客のニーズに応えるオプション機能を追加

 松本氏はミニ割卵機について「卵を消費者の目の前で割る、というパフォーマンスは『総菜に使われている卵が新鮮である』という印象を与えることに繋がる。消費者に最も近いところで新鮮さのアピールに活用していただけるのがミニ割卵機であると考えている」と語り、スーパーマーケットにおける取り扱い拡大に期待を寄せる。

 今後の課題としては、割卵機に追加する「オプション機能」の精度を上げていくことが挙げられるという。まず、取り組むのは殻の混入率の低減だ。割卵機を使用した際の殻の混入率は、現状では人の手で割った時と変わらないとのことだが、より混入率を下げていくための機能を開発中だという。

 また、ケーキなどの生地をつくるときに必要となる、卵黄と卵白を分けるオプション機能も、より精度を高めていきたいと松本氏は語る。顧客のニーズにこまやかに応えることで、割卵機の活躍の場をさらに広げていきたい考えだ。

著者:植芝 千景