季節の花をポストに届ける定期便サービス「bloomee」(以下、ブルーミー)が好調だ。ブルーミーは1回当たり1000円前後で季節の花を定期的に届けるサブスクリプションサービスで、20232月時点で会員数は10万世帯超、届けた花の本数は累計2000万本を突破した。同種のサービスが多くある中、群を抜いた実績を残している理由について、運営会社であるユーザーライク(東京都)の武井亮太社長に聞いた。

「選び方がわからない」お客の悩みを解決

お花の定期便「ブルーミー」
お花の定期便「ブルーミー」

 ブルーミーのキャッチコピーは「ときめきが続く、お花の定期便」。プロが選んだ季節のお花が週替わりでポストに届くというサービスだ。プランは3つあり、1550+送料275円の「体験」、1880+送料385円の「レギュラー」、11980円+送料550円の「リッチ」にわかれる(価格はすべて税込)。

 コロナ禍で在宅勤務が普及し、自宅に花の彩りを求める消費者が増えたことにより、ブルーミーは会員数を大きく伸ばしている。2022年の会員数の伸び率は、2021年比で200%以上にもなったという。

武井社長
運営会社ユーザーライクの武井亮太社長

「日常にお花を求める声はもとから多かった。それでも日本人のライフスタイルにお花が馴染まなかった理由は、選ぶのが難しかったり、忙しくて買いに行けない、近くにお花屋さんがないといったものだ。ブルーミーが提供するサービスは、そういった課題を解決できる」(武井氏)

 ブルーミーでは、プロのコーディネーターが季節ごとの多種多様な花を顧客に合わせて組み合わせるため、お客が頭を悩ませて花を選ぶ必要がない。定期的に届いた花を花瓶に飾るだけで、「いつでも花のある家」を手軽に実現できる。

 生産者との密な連携もブルーミーの武器だ。「体験」「レギュラー」の両プランでは花束の郵送が対面での受け渡しではなくポストに投函する方式で、専用箱に入ったミニブーケを届けている(「リッチ」は対面受け渡し)。ブルーミーでは、市場流通している花に加え、「規格外」となり出荷されないが、品質が良好で観賞用には問題ない花も扱っている。

ポスト投函イメージ
ポスト投函イメージ

 というのも、花の流通においては品目や地域ごとに茎の長さなどに一定の規格があり、茎が短かったり曲がったりすると、品質が良好な花でも規格外になるという。ブルーミーは、日本最大の花市場を運営する大田花き(東京都)など複数の花市場と提携し、従来よりも使用可能な規格の幅が広い独自規格「ブルーミー規格」をつくり、規格外でも観賞用としては問題ない良好な品質の花も適性価格で独自に仕入れている。

「ブルーミー規格」
「ブルーミー規格」

 花の品質に力を入れているのも特徴の1つで、ブルーミーで配送する商品はいずれも国内外の認証をクリアしている。国内では、一部の出荷拠点で「リレーフレッシュネス」(官民一体となって花の品質向上をめざす取り組み)の流通部門の認証を取得。国外では、花の先進国といわれるオランダの「MPS-FLORIMARK GTP (Good Trade Practice)」という認証も得た。この2つの認証を得た花のサブスクリプションサービスは、現時点で国内唯一となる。

 

新規ユーザーの開拓でさらなる成長へ

使用イメージ
使用イメージ

 運営会社のユーザーライクはブルーミーのほかに、「お花の定期便」を他人にプレゼントできるサービス「ブルーミーギフト」も展開している。いま力を入れようとしているのが、その「ブルーミーギフト」を利用した他業種との協業だ。百貨店やコンビニなどで販売するカタログギフトなどに「ブルーミーギフト」を加えるほか、コスメメーカーと協業してスカーフと花のセットを限定販売するなど事業の幅を広げている。

 2211月には、チョコ菓子「キットカット」と花を合わせて贈ることができるLINEギフトも限定的に販売した。そうした取り組みにより新規顧客の獲得に成功しており、ブルーミーを利用するユーザーの8割が、花を飾る習慣がなかった層なのだという。武井氏は「お花を飾るきっかけを多くの人に提供したい」との想いから、協業する業種を絞っていない。

 そもそもブルーミー開業のきっかけは、武井氏が前職を退職した際の送別会で渡された花束だったという。武井氏はその時に「お花をもらったらうれしいし、家にも飾る。だが、実際にお花が生活の場に登場する機会は冠婚葬祭や祝いの場が多く、日常でもお花と触れる機会を増やせるのでは」ということに気づいたそうだ。

 花の美しさは多くの人を魅了するが、日本人の生活に溶け込んでいるとはいえないだろう。だからこそブルーオーシャンだと目をつけた武井氏は、166月にブルーミーの事業を思いつき、国内初の「お花の定期便」サービスを開始することとなった。

 花き(切花や鉢花などの観賞用植物)の市場はバブル期にピークを迎え、直近30年間は微減が続く。そうした環境にありながらブルーミーはサブスクサービスとして成功を遂げた。幅広い年齢層から支持される同サービスは、新規ユーザーの開拓によりさらなる成長をめざす。

「bloomee」ロゴ
「bloomee」

著者:中原 海渡