しまむら(埼玉県/鈴木誠社長)が4月に公表した2023年2月期連結決算は、売上高が対前期比5.6%増/前期から325億円の6161億円、営業利益が同7.9%増/前期から38億円増の533億円、当期純利益が同7.3%増/同25億円の380億円と、増収増益での着地となった。
12月26日の第3四半期決算の発表時にしまむらが公表した業績見通しでは、対前期比はいずれも1ケタ台前半の伸び(売上高3.2%増、営業利益2.4%増、当期純利益3.9%増)だったが、すべて1ケタ台後半の伸び率をマークした。

しまむらの看板

主力のしまむらが好調!  

 しまむらの2023年2月期の既存店売上高は、主力事業の「しまむら」が105.3%(21年度は107.1%)・10〜20代をターゲット層とするアベイルが111.2%(21年度は110.9%)、ベビー・幼児、向けの「バースデイ」が102.2%(21年度は108.2%)といずれも前期を上回った。エリア特性に応じた販促活動が店舗の活性化を下支えしている。

 しまむらを例にとると、客数(101.3%)・客単価(103.6%、いずれも全店ベース)ともに伸びている。ディスカウントの抑制や「クロッシープレミアム」など機能性重視をうたった高価格帯PBの品揃え強化、価格構成の組み換えが客単価アップに寄与。好調な新規カテゴリー、キャラクター商品、インフルエンサー企画などが客数を押し上げ、同時に値上げによる客離れを回避した。

 しまむら事業の年度累計の値上率は6.1%と前期に比べて1.2ポイント抑え込んだ(金額ベースで12.1%減)。売れ筋商品を中心とした追加短期生産対応(全体の約2割)に加え、SNS活用による商品企画の精度改善より衣料在庫の絞り込みが図られ、結果としてディスカウントを減らすことができたと同社は説明する。

 なお、期末時点の店舗数は、1418店舗(しまむら事業)と前期からほぼ横ばいだった(前期は1421店)。

 次にしまむら連結ベースの利益面にフォーカスする。売上高原価率は65.9%と、前年度と変わっていない。資材価格の高騰を、前述の客単価アップや貿易部における資材調達で抑え込んだ。

 販管費は金額ベースで同4.9%増だったもの、売上高販管費比率は0.2ポイント(25.8%→25.6%)抑制。水道光熱費(同29.1%増)、IT促進によるEDP(電子データ処理)費(同40.4%増)や賃金改定・決算賞与支給に伴う人件費(同5.8%増)などがかさんだものの、SNSなどデジタル販促活用による広告費の抑制や不採算店舗の閉鎖による家賃減が奏功した。

 なお人件費に関しては、金額では前期比増となるものの売上高比率では前期並みの12.8%にとどめている。タブレット活用による店舗オペレーション効率化が寄与したようだ。

今期は増収増益の見通し

 同日発表の2024年2月期連結決算は、売上高が対前期比3.1%増/前期から189億円増の6350億円、営業利益が同2.4%増/前期から12億円増の545億円、当期純利益が同3.9%増/同15億円増の395億円と、増収増益を見込む。

 23年2月期に引き続き高機能・高価格帯商品に注力するとともに、サプライチェーンの強化を通じた仕入原価の抑制をすすめ、売上高アップと収益性向上を両立させる。

 販管費比率も前期と同水準にとどめる考え(対前期比104.2%の計画)で、給与見直しなど人材投資を加速する一方でSNSを軸としたデジタル販促を活用にすることでマーケティングコスト抑制を図る。

 2024年2月期は、2022年2月期を初年度とする現中期経営計画の最終年度に当たる。中計のテーマは「リボーン:再生と進化」。中計に先立つ3年間、それまで右肩上がりを続けてきたしまむらは成長スピードに急ブレーキがかかっていた。2024年2月期の業績目標を達成できれば、同社は成長性・収益性を回復、ビジョンに掲げる「リボーン」を実現したことになる

2030年に向けた長期ビジョンを発表!

 しまむらは決算発表と同時に「長期経営計画2030方針」もリリースした。2030年のゴールでは、売上高8000億円(2023年2月期対比29.8%増)以上、粗利益率35.0%(同0.9ポイント改善)、販管費率25.0%(同0.6ポイント改善)、営業利益率10.0%(同1.4ポイント改善)、ROE8.0%以上を設定する。

 この実現を支えるのが3つの方針(成長戦略・インフラ強化・ESG活動)と資本政策だ。

 成長戦略では、既存店売上の増加を図ると同時に、ライバルからシェアを奪えるようなキラーコンテンツの強化、デジタル販促促進、「売れる」品出しや陳列の実現、ドミナント戦術を軸に据えた店舗展開、リアルとECの融合といった具合に全方位ですすめる。同時に、しまむら事業中心の収益構造を見直し、全事業で稼ぐポートフォリオの構築をめざす。

 インフラ強化では、報酬体系見直し・教育制度整備といった人材育成、さらには物流インフラ再構築・デジタル化を推進する。ESG活動では、環境・社会・ガバナンスそれぞれの領域で“しまむら流”を浸透・普及させるとしている。

 これら3つの方針は総花感が否めないが、メリハリある資源配分ができればビジョン実現も現実味を帯びてくる。成功のカギを握るのは「資本政策」にあるのかもしれない。

 しまむらは「リボーン」を成し遂げ、持続的成長を実現できるか。まずは現在の中期経営計画の総仕上げに注目だ。

著者:棚橋 慶次